image

【特別企画】世界各国共同印刷プロジェクト!
ボローニャ・ラガッツィ賞(伊)、ストーン・ウォール賞大賞(米)受賞作
人魚になりたかった少年・ジュリアンの物語『Julian Is a Mermaid』を翻訳出版したい!

出版記念イベントゲスト:ドラァグクイーン・ストーリー・アワー東京をご紹介!

こんにちは、サウザンブックスPRIDE叢書です。『Julian Is a Mermaid』プロジェクトの出版記念イベントコースには、ニューヨークに本部を置くDrag Queen Story Hourが公認する東京チャプター「ドラァグクイーン・ストーリー・アワー東京(DQSH東京)」をゲストに招き、『Julian Is a Mermaid』日本語版の読み聞かせ会を行う予定です。
ドラァグクイーンによる絵本読み聞かせ。その響きだけでなんだか胸が弾みますよね!
そのお取り組みについて、DQSH東京のメンバーの宮田ヒロシさん(以下、ヒロシ)、吉田智子さん(以下、吉田)、マダム・ボンジュール・ジャンジさん(以下、ジャンジ)にメールインタビューしました!
 


まずは、ドラァグクイーン・ストーリー・アワー東京とはどういった組織なのか概要を教えていただけますか?

【ヒロシ】
ドラァグクイーン・ストーリー・アワー(DQSH)は、2015年にサンフランシスコでMichelle TeaとRADAR Productionsがはじめました。その名の通り、ドラァグクイーンによる子どものための絵本読み聞かせプログラムです。現在はニューヨークに本部があり、全米30都市以上、世界では9ヶ国・地域で開催されています。DQSH東京は、NY本部から公認されたチャプターとして2018年から活動を開始しました。半年ほどの準備期間を経て、第1回目を2018年11月に渋谷区で開催したので、東京デビューからようやく1年を迎えたところです。
 
DQSH東京は非営利の任意団体で、メンバーはそれぞれ仕事をしながら、個人的な活動としてDQSHの企画、運営に関わっています。今のところ、コアメンバーは6人で、職業、性別、セクシュアリティ、ジェンダーもバラバラです。各人は、ドラァグクイーン本人、ドラァグクイーンイベントのスタッフ経験者、幼児教育の専門家、HIV/AIDSアクティビスト、LGBTQに関する啓発活動の経験者、子育て真っ最中の母親や父親、会社員、経営者、広報や広告業務の経験者など、それぞれが多彩なプロフィールや経験を持ち、それぞれの得意なことと不得意なことを補完し合いながら活動しています。
メンバーに共通しているのは、ドラァグクイーンが大好きで、子育てに興味があり、ジェンダーやセクシュアリティに関する社会課題に関心が高いという感じでしょうか。
 


ドラァグクイーンによる読み聞かせ。英語の絵本を独自に翻訳して読むことも。


活動のコンセプトについて、教えていただけますでしょうか。

【ヒロシ】
DQSH東京の活動目的は「セクシュアリティやジェンダーの多様性を、幼い頃から楽しく体験する機会を提供することで、他人との違いにもとづくいじめや差別をなくし、自分らしさを肯定できる社会環境づくりに貢献する」ことにあります。
 
DQSHはドラァグクイーンによる絵本の読み聞かせと工作などを組み合わせた構成で、約1時間のプログラムです。主に3歳から8歳の子どもたちとその保護者を対象としていますが、3歳から8歳という対象年齢は、絵本を通じたプログラムの効果が最も大きい年齢であることから設定しています。子どもたちは、ジェンダーやセクシュアリティに関する情報に幼い時から色々な形で触れています。そんな中、LGBTQの子どもたちの悩みや、時には心ない差別やいじめが深刻化する前の年代に、ジェンダーやセクシュアリティの多様性を『楽しい実体験』として持っておくことは、セクシュアリティやジェンダーの多様性を自然なものとして受け入れるための素地として、ポジティブな経験になると考えています。保護者と一緒に体験してもらうことも重要です。実は3歳の子どもでも「女の子とはピンクで男の子は青色」とか「男の声なのに女みたいな話し方」みたいな言葉がすでに出てきますし、保護者の方の中にも、「子どもが小さいうちから多様性に触れさせてあげたいが、どのように説明したらいいのか、どこで体験できるのかわからない」などという声が聞かれます。そういう思いを抱えていらっしゃる保護者の方が、DQSHに参加されているように思います。なかには、かつてクラブキッズだった方が親になり、自分が大好きだったドラァグクイーンを、子どもたちにも見せてあげたい、という保護者の方もいらっしゃいます。
 
なぜドラァグクイーンなのかということについては、2つの要素があります。ひとつ目は、セクシュアリティやジェンダーを軽々と飛び越えていて、見た目もお話も楽しくて、ダイバーシティを体現する存在であること。ふたつ目は、ドラァグクイーンがコミュニケーション能力に長けた、プロフェッショナルのパフォーマーであることです。
 
ドラァグクイーンが普段活躍しているクラブのステージでは、少々酔っ払ったお客さんが絡んできても上手にあしらいながら、楽しいパーティーを作り上げることがとても大事です。きらびやかでウィットに富んだパフォーマンスは、観客を魅了してやみません。どんな反応を返してくるか予想もつかない子どもたちへの対応は、さらに繊細で丁寧な、ある種高度なアドリブが求められます。パーティーを楽しく盛り上げることにおいて百戦錬磨のドラァグクイーンは、子どもと一緒に楽しい時間を作り上げるのにもぴったりです。
 
DQSHのコンセプトについては、アメリカの本部のHP(https://www.dragqueenstoryhour.org/)や、DQSH東京のHP(http://dragqueenstoryhour.tokyo/)にも掲載しているので、そちらもご覧ください。



初めて見るドラァグクイーンに驚くこともなく、絵本に夢中になる子どもたち。


どういった経緯で東京チャプターが発足したのですか?

【ヒロシ】
メンバーの1人である吉田がニューヨークの公立図書館で開催されていたDQSHに出会ったのがそもそもの始まりです。吉田は今でもニューヨーク在住なんですが、子どもと一緒に何度か参加するうちに、ぜひ東京でもやりたい!と、友人でドラァグクイーンでもあるジャンジなど、東京 にいるメンバーに声をかけたところから活動がスタートしました。そのあたりの経緯について詳しくは吉田やジャンジからお話しできればと思います。僕がDQSHについて知ったのは吉田がアップしたインスタグラムのポストで、東京にもあったらステキすぎる!と初めて見たときから思っていて、メンバーから一緒にやらない?と誘われたときには、悩むことなく参加を決めました。

【吉田】
当時は子どもが2歳だったかな?子どもと一緒に地元の図書館で開催されていたDQSHに参加したら、とても楽しくて、そこから機会があると子どもと一緒に行くようになりました。回を重ねるうちに、自分自身も親として、女性として、ひとりの大人として、エンパワメントされる場でもあるなーと気づき、日本にいるママパパ友たちにもこの体験を共有したいと思うようになりました。それで、ドラァグクイーンでもある東京の仲間に相談を始めたのが2018年夏。まず、ドラァグクイーンの方でやってみたい方がいないと始まらないと思ったので、ジャンジさんたちにスカイプで相談を始めたところ、前向きな反応をいただき、そこからNYにある本部とのやりとりを始めました。

【ジャンジ】
吉田から声をかけてもらったときに、まさに自分がやってみたいことだと感じました。以前ワタリウム美術館で開催された「アート一日小学校展」に参加した時に、私は「HUGたいそう」というパフォーマンスをつくって、子どもたちと一緒に毎日夕方5時から体操していました。その時、子どもの持つ力にとても感銘をうけました。

今は、HIV ・セクシュアルヘルスの観点から、性の多様性について講演依頼をうけることがあるのですが、若い人のほうが柔軟に捉えることができるように感じます。もちろん一概には言えないけれど。社会におけるジェンダーやセクシュアリティの固定概念に染まっていない、なるべく幼少期に、“派手やかで楽しげな生き物”との体験や、絵本のもつ「物語」を通して、世界の多様性に触れることは、自分を肯定して生きていくことや、違いをうけとめて楽しめる力につながっていくと思います。人生でたいへんなことがあったときにふっと思い出して、そういえば色んな人がいるよね~と、肩の力がぬけたりするかもしれない。言語や教育だけでは伝えきれないことを、あそびやファンタジーの持つリアリティを通して感じてもらえたらと思いました。


ドラァグクイーンの楽しい話術に、子どもたちはどんどん近づいてきます。


読み聞かせ会は、どういった方々のご参加が多いですか?また、どういった反応があるか教えていただけますか?

【ヒロシ】

DQSH東京では、子どもが保護者と一緒に集まれる場所に出かけていく出張スタイルでDQSHを開催しています。基本的には会場側に呼んでいただく形を取っています。会場のスペースや管理の都合上、いまのところは人数を限った申込制で開催することが多いので、主に会場側の告知媒体を使って参加を募っています。なので、ふだんからその会場を利用している子どもや保護者の色みたいなのが、開催ごとにユニークな反応となって現れてくるのが面白いところです。「小さいうちからダイバーシティに触れさせたい」という保護者の方が集まってくださっているのは、会場が違っても共通しているように思います。もちろん、休日に子どもが参加できる娯楽として、ドラァグクイーンのイベントに来たという方もいらっしゃって、そういう気軽なご参加も大歓迎です。

毎回アンケートを取っているのですが、「絵本の読み聞かせ」や「工作」といった楽しいプログラムに対する評価と並んで、「多様性に触れられたこと」を良い点として評価してくださる方が多くいらっしゃいます。アンケートのフリーアンサーには、以下のようなコメントをいただいています。

・子どもにとっては多様性に触れるはじめての機会でした。親としてこのような機会を増やしていきたい。

・「そのままの自分でいい」というメッセージは、まさに我が子に伝えたいことでした。

・普段自分が選ばない絵本のセレクトだったので、親としても楽しめました。

・LGBTについての絵本を読むのかと思っていたのですが、普通の絵本だったので、それもいいなと思いました。

・「ドラァグクイーン」についてどう説明すべきかちょっと悩みましたが、子どもはドラァグクイーンさんの自己紹介を素直に受け入れて納得していました。


ドラァグクイーンによる読み聞かせを楽しみにしつつ、「LGBTQ」や「多様性」というキーワードにちょっと身構えていた方も中にはいらっしゃったのかもしれません。でも実際にDQSHに参加してみると、ドラァグクイーンからのメッセージを自然体で受け取ってくださっているようです。
いままで6回の開催で、ドラァグクイーンやプログラムに対するネガティブな反応はありませんでした。


自分自身を表現できる工作もプログラムのひとつ。


おはなしクィーンとなる資格(スキル)など、こども向けのコンテンツということで、特に気にされていることはあるのでしょうか?

【ジャンジ】
子どもが好きなこと、子どもに関心があること、プログラムの主旨に興味があること、一緒にやりたいという熱意がありコミュニケーションがとれることかな。ドラァグクイーンとしての豊かな経験と、子どもの突発的な質問や行動を受け止めることができるような「よっしゃ、なんでもいらっしゃ~い」的懐の深さ、おもいやりを持っているドラァグクイーンがDQSHに向いていると思います。自分はドラァグクイーンでもあるのでお話クィーンとしても参加しているんですが、それはちょっと脇においておき(笑)、運営スタッフとしてお話しすると、おはなしクィーン候補のドラァグクイーンには、これまではこちらからお声かけしてきました。そのうえで、現場見学および研修プログラムへの参加等を条件として、出演を依頼しています。本のチョイスからプログラムの内容まで、DQSH東京とともに経験を積み上げていく感じです。真っ昼間に、子どもと保護者にかこまれて、けっこードキドキだったりするけど、ドラァグクイーンにとっても、なかなか他にない経験だと思います!

【ヒロシ】
読み聞かせをするドラァグクイーンには、必ず事前に、子どもに対する読み聞かせについての研修を受けてもらっています。
研修内容は、NY本部のマニュアルを元に、日本の幼児教育の専門家のアドバイスを受けながら、日本の子どもたちや保護者、幼児教育の現場など、日本の環境に合わせてローカライズしています。
ドラァグクイーンは普段はクラブなどの、お酒を飲む場で大人相手にパフォーマンスすることがほとんどなので、子どもや保護者に対して配慮すべき点は、きちんとお伝えするようにしています。通常の絵本読み聞かせの留意点やテクニックの共有、対象年齢の子どもたちに合わせた言葉遣いや表現のあり方はもちろんですが、子どもはいきなり飛びついてきたりすることがあるので、やたら鋭利なトゲトゲがついた衣装は避けましょうとか、わざと子どもの恐怖を煽るような表現はやめましょう(笑)みたいなことも含め、夜の大人向けのパフォーマンスとの違いは意識してもらうようにしています。絵本選びや読み聞かせの演出などについては、DQSH東京のスタッフと打ち合わせしつつ、ドラァグクイーン自身にも楽しみながら考えてもらえるようにしています。


本書『Julian Is Mermaid』は、もともとご存知だったと伺いました。本書の魅力をお話しいただけますでしょうか。

【ヒロシ】
吉田のお子さんのお気に入りの絵本(NYで子育て中なので、お子さんは英語と日本語のバイリンガル)ということで、東京での読み聞かせ候補には入っていました。でも今はまだ英語版しかなく、日本の子どもたちに読み聞かせるには日本語への翻訳が必要です。『Julian Is Mermaid』への熱い思いについては、親子で大ファンの吉田から。

【吉田】
『Julian Is Mermaid』はニューヨークのDQSHでも読んでいる絵本で、うちの子も私も大好きな作品です。日本語版もあったら良いのになーと思っていたので、このクラウドファンディングが始まり、ワクワクしています。この絵本はとにかく絵が美しくて、すっとその世界に入っていけるのが心地良い。色が優しくて、かつ鮮やかで、お話の芯の強さも表しているかのようです。
あと、お話も見事。多様な文化が混在するニューヨークらしさが、英語だけどスペイン語が混じる表現や、描かれた街や家の様子にも現れています。と同時に、おばあちゃんと孫という関係性から、お父さんや母さんは働きに出ているのかなと想像でき、おばあちゃんのどっしり構えた年長者の格好良さなどは、文化の違いを超えて、自分たちにも通じる家族の物語でもあります。しかも、何か大きな事件が起こるのではなく、ある日の、家族二人の間のちょっとしたやり取りの物語。心のどこかで一生あたたかく抱き締めて覚えているような、すごく大事な瞬間を鮮やかに描き出していて、親も子も勇気をもらえる作品だと思います。


今後のご予定や展望について教えてください。

【ヒロシ】
東京都内を中心に、保育園、図書館、美術館などでの開催を予定しています。不定期での開催なので、具体的な予定についてはDQSH東京のホームページやTwitter、Facebookをご確認ください。基本的には対象年齢の子ども向けの開催となりますが、このクラウドファディングが成功した際には、出版記念イベントで『Julian Is a Mermaid』(日本語版)の読み聞かせをします。こちらは大人の方だけでも参加できますので、「子どもはいないんだけどDQSHには参加してみたい!」という方には絶好の機会です。ぜひ、このクラウドファンディングから、出版記念イベントへのご招待があるコースを選んで、出版費用のサポートをお願いします。サポーターの皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。


記念写真も大人気!家族みんなで楽しめるイベントです。

 

DQSH東京のホームページ
http://dragqueenstoryhour.tokyo/

 

2019/11/20 14:53