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台湾発、中高年レズビアン17名の多彩な青春
『おばあちゃんのガールフレンド』を翻訳出版したい!

『レインボー熟年バス』から『おばあちゃんのガールフレンドへ』クラファン成立を願って(永易至文)

 私の手元に台湾で刊行された『レインボー熟年バス』という本がある。日本から台湾へ旅行した知友が、「中国語、読めるんでしょ?」と、私に台湾土産としてくれたものだ。私が、性的マイノリティの暮らしや老後に関心をもち、性的マイノリティの高齢期を考えるNPO「パープル・ハンズ」を運営しているからでもあろう。大学で中国文学科だったとはいえ、慣れぬ繁体字で縦書きの台湾華語は難しそうだった。
 日本より遅れて始まったのに、20万人といういまやアジア最大の規模となったプライドパレードや、アジア諸国に先駆けて達成された同性婚の法制化(婚姻平権)など、台湾はLGBTムーブメントにおいて世界からの注目を集める国だ。台北の紅楼をはじめ、LGBTフレンドリースポットも多く、日本からの旅行者の人気となっている。
 だが、そこには若者の姿ばかりが横溢し、高齢期にある当事者の姿は見えない。台湾はながく軍事政権による戒厳令が敷かれ、保守的な社会だった。儒教文化に属する社会で、結婚し子どもを作り家の存続と先祖の祭祀を絶やさないことが人の使命と信じられてきた。こういう社会で性的マイノリティが自分を受け入れ、それを自分の生き方とすることは難しい。結婚と家に姿をまぎらせ、高齢の性的マイノリティ自体がどこにいるのかさえ見つからない状態だった。
 台湾LGBTムーヴメントを牽引する台湾同志ホットライン協会で、ようやく高齢当事者への取り組みが萌芽したのは2005年4月。だが、活動は頓挫につぐ頓挫を重ねた。彼らの「台湾シニアゲイたちのオーラルヒストリーを綴りたい」という企画に応じてくれる中高年のゲイたち12名と、奇縁や偶然を重ねてやっと知り合い、2010年にまとめたインタビュー集が『レインボー熟年バス----12名のシニア同志の青春の記憶』だった。熟年バスとは、ホットライン協会が主催するシニアの性的マイノリティと若者との日帰りバスツアーの名称である。こうしたイベントで世代間の理解と対話を進めている。
 貰ったまま積ん読になっていたこの本を、私はコロナごもりのつれづれに、語学の勉強も兼ねて訳し始めた。誤訳も多かろうし、台湾へ行ったこともない旅無精なので、現地事情にも通じない。台湾人の友人、劉靈均に教示を仰ぎながら拙訳をnoteに掲載したが、訳しつつ私は感動した----戒厳令下を生き抜いたシニアのインタビュイーたちに、そして先輩たちに真摯に学ぼうとする若いインタビュアーたちに。すでに台湾にこうした活動があったことにも、強いジェラシーを感じた。

 「ホットライン協会で、熟年バスに続く女性のインタビューを始めた」と劉靈均から聞いたのも、そのころだったか。それがこの『阿媽的女朋友』だ。前作にはボランティアによる手作り感があったが、10年たった今回は文学的にも洗練されている、と劉は言った。
 昨年3月17日、台湾同志ホットライン協会はこの『阿媽的女朋友』刊行を記念し、「高齢レズビアンの生活と介護」と題したオンラインシンポジウムを企画した。台湾、香港、そして日本からパープル・ハンズが参加し、各国の高齢性的マイノリティ女性の状況を交換しあった。パープル・ハンズからは、マキコさんと中国系カナダ人のカインさんのカップルが参加してくれ、日本の状況や、急きょ彼女たちが撮影したオープンレズビアンのパフォーマーであるイトー・ターリさんの介護の日常を追った動画を上映した。ターリさんはその半年後に亡くなった。
 シンポジウム後、台湾から御礼に刊行されたばかりの『阿媽的女朋友』が送られてきた。そして、日本人のレズビアンが中国語で私たちにメールをくれ、ホットライン協会のフェイスブックで紹介した、という話題も教えてくれた。それがこのプロジェクトにメッセージを寄せている「しゃおはー」さんだった。
 このときのオンラインシンポジウムについて、その後パープル・ハンズでは動画で報告会をおこない、マキコさん・カインさんと振り返りをしたが、そのなかでシャオハーさんの手紙を日本語に訳し戻して紹介した。それから1年、今年5月にシャオハーさん自身からメールをいただく奇縁に驚いた。

 このプロジェクトにメッセージを寄せている若林苗子さんや鈴木賢さんもそうだが、私も1980年代の後半から日本のLGBTコミュニティ----当時はまだLGに偏していたが----の片隅に身を置いてきた。私は50代半ばとなり、賢さんは還暦を迎え、当時から年上感のあった若林さんもますます元気だ。有名・無名にかかわらず、シニアのLGBTの先輩たちが、この国に根を張って生きているが、その姿はまだまだ活動の表面には浮かび上がらない。かつての私たちもそうだったが、若い当事者たちは老いを恐れ、そこから目をそらそうとしているからだろう。
 また、とかくLGBTというと、アメリカでは、北欧では、と、欧米出羽守で語られるきらいもある。
 いま『阿媽的女朋友』が『おばあちゃんのガールフレンド』として日本語で読まれることで、多くの人がLGBTシニア当事者の思いに触れ、老いを前向きに受け止め、またアジアの当事者とつながる回路を得ることは、かならずや大きな喜びと前進を生み出すに違いない。
 このクラウドファンディングの成功をお祈りするとともに、重ねてみなさまのご支援を呼びかけるものである。



永易至文(ながやす・しぶん)
1966年、愛媛県生まれ。1980年代末からゲイのコミュニティ活動にかかわる。出版社勤務をへてフリーライター/編集者として性的マイノリティの暮らしや老後、HIV問題を取材・執筆。2013年に行政書士登録、特定非営利活動法人パープル・ハンズ設立、同事務局長。近刊の『「LGBT」ヒストリー〜そうだったのか、現代日本の性的マイノリティー』(緑風出版)は、読む現代LGBT事典として日本のこの30年を網羅している。
 


「LGBT」ヒストリー─そうだったのか、現代日本の性的マイノリティー
永易至文[著]
四六判並製/240頁/2000円
ISBN978-4-8461-2203-4 C0036

 


今年の東京レインボープライド@代々木公園「サウザンブックスPRIDE叢書ブース」にて。あれ、ブース出店費とは別に見ヶ〆料がいるのかしらん??と、頭によぎった瞬間でした…。『「LGBT」ヒストリー─そうだったのか、現代日本の性的マイノリティー』は読んでソンはない、いや、学びしかない1冊ですよ。
 

プロジェクト成立まで残り30%ほどになりました!最後まで応援宜しくお願い致します。

2022/09/16 14:06