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台湾発、中高年レズビアン17名の多彩な青春
『おばあちゃんのガールフレンド』を翻訳出版したい!

日本から台湾同志ホットライン協会に届いた、一通のメール

こんにちは、発起人の橋本恭子です。本日は『おばあちゃんのガールフレンド』クラファン・プロジェクトのきっかけを作ってくださったしゃおはーさんの応援メッセージをご紹介します。

『阿媽的女朋友』が台湾で2020年10月に上梓されてからまもなくの2021年3月26日、台湾同志ホットライン協会の元にしゃおはーさんという日本の読者から一通のメールが届きました。そこには、本書の登場人物と重なるご自身の思いが中国語で綴られており、ホットライン協会のメンバーは読みながら涙したといいます。そこから、日本で本書を翻訳・出版できないかと打診があり、プロジェクトが少しずつ動き出すのです。
 


 私はクローゼットの中から、老いに向かおうとする自分自身の中に、いつも何かしらの心残りがあることを感じていました。心残りというより、それを外に表さないままでいることが私のこの人生の後悔にならないだろうか…という恐れかもしれません。
 それは固くて、固くてシコリのように胸の奥に存在し続ける想いです。女性として生まれながら、同性との恋愛経験を持つことや、その恋愛において自身が抱いてきた相手への感情、共に作った思い出の数々は、いつまでも拭い去ることはできないものとして残っています。しかし、それは今まで家族や周囲に言えないでいる私個人の歴史の一部分にすぎません。また、自身の一部分であると同時に私の根っこにある部分、誰にも侵されないであろう部分がいつの間にか固くシコリになっているようにも感じます。 

 私は既に還暦も過ぎた「おばあちゃん」です。私が育った環境や、受けてきた教育には今の社会のようにLGBTという言葉もなく、異性間の恋愛を当然であり、唯一とする世の中です。おそらく私達よりもずっと以前を生きた人達の中には、私と同じような胸の奥のシコリを持ったまま、何も周囲に自身の経験や想いを語ることなく、それを墓場まで持って逝ってしまった先輩方が数えきれないほどいらっしゃったに違いありません。そうするしかなかった時代を生きてこられたのだなと思うと胸が苦しくなります。

 近年、多様性を尊重しようという風が日本社会にも吹き、自身のセクシャリティや思い、意見を堂々と発言できる場所も確かに増えてきたんだろうと感じます。
 しかし、歳を重ねて固いシコリを頑なに持ち続けている中高年世代では、今の私を含め、なかなか言葉にして外に出すことができない人の方がまだまだ多いはずです。今の日本でも世間体という名の壁は、若い頃より中高年になればなるほど、より分厚くて高くなっていくように感じてしまいます。これは暮らしている地域性が原因でしょうか。いや私の個人的な問題なのかもしれませんが、この世間体という目には見えない怪物が一番厄介だと感じる難敵なのです。
 怪物をやっつけるアイテムが欲しいと願いますが、どうやらそのアイテムは、何処かに売られているはずもなく、それは私が田舎に住んでいるから手に入らないというものでもないようです。自身の内側から生まれ育てる心の強さが怪物に立ち向かう唯一のアイテムかもしれない…遅ればせながら、そんなことにやっと気付きながらも、かつて受けて育った教育や常識が刷り込まれてしまっている固い頭との葛藤にもがき続けている今日この頃です。

 私の手には既に台湾から取り寄せた原書である『阿媽的女朋友』があります。しかし、台湾の繁体字で書かれた文の単語の読み方や意味を辞書で調べるだけで、私の独学中国語では翻訳作業を行うにはあまりにも荷が重く、当然行き詰まりました。一人旅で何度か台湾に行けた程度の語学力では内容の全てを理解できるほど甘いものではなかったのです。自分の力不足を思い知らされたことでの落胆と、悔しさに浮かぶのは、ただ一つの思い「日本語版が欲しい!!」でした。

 私は、海の向こうで同世代の女性同性愛者達が、同じように異性間の恋愛のみが正しいとされた時代に、いかに逞しくも自分達の世界を守り抜いたか、どのように迷い、人生の選択をして、それぞれの現在(いま)に至ったのか…一冊に詰まった話の全てを知りたいと強く思いました。加えて、主人公である彼女らの後ろで、この本の完成に奔走し、携わった人々の思いを知り、この本に込められたそれらの全てを理解したいと思いました。そうした先に、この自身の胸の奥の固いシコリを溶かすために、これから私自身がどうするべきかのヒントを与えてもらえる気がするのです。

 地位も名誉もなく、何も成し遂げたことがない一般人の私です。LGBTQの理解を求める活動も盛んな街とはいえない地方に住んでおり、中高年のおばあちゃん一人、時折世間の波から取り残されているのではないかと苛立ちを感じることもあります。自分から求めにいかなければ情報にさえ出会えません。日常的に会話をしたり、食事を共にするセクマイの仲間もいません。こんな生活をしていても悲しいかな月日は流れていくのです。

 私はもう何もできないのかな……と思いながらも、台湾同志ホットライン協会へ送った1通のメールが1年半過ぎた今、こんな素敵なプロジェクトに形を変えてくれました。

 台湾の中高年レズビアン記録本の翻訳版を出版するためのクラウドファンディング……同時に、これは中高年LGBTQ当事者としての私や同じような例のシコリを抱えているかもしれない日本の隠れた同志の皆さんに対しても「一人じゃないよ」「応援しているよ」と言ってもらえている、背中を押してくれるプロジェクトのように勝手に受け止めてしまう私がいます。

 私達中高年の人生は、まだまだ終わっていません。「胸を張って生きたい!」と願う気持ちは、国や住む地域が違っても皆同じだし、きっと若い頃から常に、誰もが変わらずそう思っていたはずです。その気持ちは、今の若い方達と何ら変わらない思いだと感じます。あのLGBTQ先進国である台湾からのメッセージ本とも言えるこの一冊は、私達日本の中高年レズビアンのみならず、様々な世代の方々も刺激を受けないはずがないと信じています。

 この本が繋げてくれた人々とのご縁に改めて感謝し、翻訳本の完成を心から祈っています。


しゃおはー(60代 地方在住 会社員)
 

2022/08/23 11:50