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舞台は昭和11年の台中市。
ひっそりと咲く少女たちの恋
台湾発の百合漫画『綺譚花物語』を翻訳出版したい!

『綺譚花物語』プロジェクト発起人の黒木夏兒より皆様にご挨拶

 こんにちは。発起人の黒木夏兒です。
 2013年に台湾BL小説「ロスト・コントロール〜虚無仮説〜」の翻訳でデビューして以来、台湾BL、ライトノベル、漫画、そして台湾アイデンティティの諸分野をあちこち駆け回っている翻訳者です。

 8月17日からスタートした『綺譚花物語』翻訳出版プロジェクトへのご支援、ありがとうございます。

 サウザンブックス社のプロジェクトに私が関わるのは実はこれが二度目。とは言え、前回の「書店本事」は小島あつ子さんによるプロジェクトが成立した後の段階からの翻訳参加だったため、発起人になるのはこれが初めてです。
 スリルに満ち満ちた三ヶ月の様子は「書店本事」を初め、他の本でもたびたび目にしていました。それでも、出したい本があって、しかもその本がサウザンブックスさんと相性良さそうで、となると、やはりトライしてみずにいられません。

 本格的な企画書を作成するのからしてほぼ初めてで(10年前に出版社に送ったデビュー作の企画書、よくあれで通ったものだなと今しみじみ思っています)悪戦苦闘しましたが、どうにか企画がパスし、クラウドファンディング開始の予定日が決まり、そして予定通りにスタートしてから、今日で6日になります。
 僅か6日で150名近くの方から「この本を読みたい」と意思表示していただけて、嬉しい限りです。

 2019年の7月に、第2話の「昨日閑潭夢落花」の後編を台湾の漫画雑誌「CCC創作集」で目にして以来、まだ単行本にすらなっていないこの漫画をいつか日本語に、と思っていました。そして去年8月に台湾で単行本が出たのですが、その時はもうコロナで台湾に行けず、友達に送ってもらってようやく漫画の書き下ろし部分と、原作である小説版を読むことができました。

 長年、戒厳令下で表現の自由に大きな制約があり、加えて若年世代向けのポップカルチャーが受験戦争と日本以上の管理教育によってないがしろにされてきた台湾ですが、それでも1989年に民主化を迎えると台湾オリジナルの漫画やラノベが少しずつ世に出始めます。
 ただ、台湾のラノベ市場はその後BLも誕生して盛り上がったのに対し、漫画市場は一気に流入してきた日本漫画に席巻されていきます。民主化以前から需要が高かった日本漫画、海賊版などでこっそり読まれていたりもしたため認知度も高かった上、メディアミックスも進んでいた日本漫画は、台湾の出版社にとっては出せば必ず売れる安定のドル箱コンテンツでした。
 このため、これからしばらくは台湾オリジナルの漫画作品とその描き手には北風が吹き寄せ続けていたのですが、2010年代に入り転機が訪れます。

 戒厳令下ではアンタッチャブルな存在だった「台湾アイデンティティ」。台湾の独自の歴史、独自の文化、独自の言語、そして政治や社会問題……それらと結合することで台湾漫画は独自色を手にし、日本を初めとする他国の漫画では代替し得ない、台湾ならではのコンテンツとしての存在感を示し始めたのです。
 残念ながらこれらの作品は日本ではまだほとんど紹介されておらず、また台湾好きの間でも、未翻訳の出版物にまで手を出す人はまだまだそうはいません。
 しかし台湾アイデンティティ作品を契機として復活を遂げた台湾漫画は今や年々出版点数を増し、更に自国の漫画需要にまだまだ自給自足では応えられていないアジア諸国に進出するのみならず、欧米諸国に於いてもじわりじわりと知名度を上げつつあります。

 また、台湾アイデンティティを題材とすることで生まれる独自性からも更に一歩踏み出し、台湾アイデンティティと同様に台湾の大事な一部である普段着の台湾の味わいそのものを、作品の細部に付与することで独自性を築く、そんな作品も生まれ始めています。
 舞台やキャラクター、小道具が台湾味を帯びているため、題材自体は台湾アイデンティティの範囲に留まらない、より広範な読者に訴えかけることが可能となる普遍的なものであっても、読み手はその作品から台湾を感じ取ることができる。
 台湾人自身の目からは従来見過ごされがちだった、時にはダサいとして片付けられがちだった、台湾の日常の気配。それは均一化が進み過ぎて独自性を失いつつある先進国の景色の中では、今やむしろ大切に保存しておきたい宝のような存在になっています。そして台湾の日常の外から来た人々による再評価を経て、台湾人自身もそこに資源としての価値を見い出し始めている。
 漫画もまたそれらを作品に積極的に盛り込むことにより、台湾の魅力を発信する重要なツールの一つになりつつあるのです。

 台湾ならではのコンテンツに進化した台湾漫画は今後、台湾映画と同じく、日本で市民権を得ていくに違いありません。今はただ「まだ知られていない」だけで。

 「綺譚花物語」が日本で単行本になり、書店に並び、ふと誰かが手に取ってパラパラとページをめくる。それは台湾漫画が日本で知られるための、そしてそこに描かれた台湾の姿を——二泊三日くらいの駆け足な台湾旅行からもう一歩踏み出した先にある台湾の姿と魅力を日本人が知るための、大事な一歩になるはずです。

 そのためにも、まずはなんとしても「綺譚花物語」のプロジェクトを成立させたい。

 どうか今後もクラウドファンディング最終日の11月15日まで、応援や情報拡散、是非よろしくお願い申し上げます。

黒木夏兒

 

 プロジェクトチラシは現在、虎ノ門の台湾文化センター、神保町の東方書店、内山書店、東京堂書店、書泉ブックタワー及び書泉グランデの百合部、新宿南口の紀伊国屋洋書店、同じく新宿の百合カフェ:アンカー、他に映画館のケイズシネマ、横浜シネマリン、ジャック&ベティ、横浜中華街の華僑總會、ゲーマーズ横浜店百合部(敬称略)に置いていただいておりますが、他にも置いていただける場所やイベントなどございましたら是非ご連絡ください。置き場はないけれど壁への掲示なら可能、とおっしゃってくださる方も大歓迎です。

 10月10日開催のBL専門即売会:第50回JGARDENにはいつも通り「プロジェクト・たいわにっく」としてサークル参加し、「綺譚花物語」についてもブース内で原作や見本訳など展示の予定です。
 

 

 

2021/08/23 12:51