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壊れた母娘関係を正視し、家族の傷を癒すドキュメンタリー
『我和我的T媽媽(同性愛母と私の記録・仮)』を翻訳出版したい!

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おかげさまでプロジェクト達成し、期限がきましたので募集を終了しました。みなさまからのご支援心より感謝申し上げます。
『我和我的T媽媽(同性愛母と私の記録・仮)』は、2020年春以降に全国書店で発売予定。

くわしい発売情報をお求めの方は、サウザンブックスのサイトでお知らせメールに登録ください。
詳細が決まり次第、お知らせします。

活動報告のページでも本の制作の様子をお知らせしますので、合わせてごらんください。

 


映画『日常對話』の監督が、母親を中心とする家族の物語を文字で編んだ
もうひとつのセルフ・ドキュメンタリー

  これは私の母の物語です。

  古いしきたりの残る農村に生まれた母は、
  いわゆる伝統的なものから外れた女性でした。

  牽亡歌陣を率いる紅頭法師でレズビアン、
  たばこをふかしながら麻雀に没頭し、
  セクシーな女性の写真が印刷されたビンロウの箱をせっせと集める、
  それが私の母です。(本文より)


これは本書の著者でドキュメンタリー映画監督の黄惠偵(ホアン・フイチェン)が、それまで10年間カメラで追い続けた自分の母親を題材に、1本のドキュメンタリー映画を作ろうと決心した際に書いた、最初の企画書の冒頭部だ。2012年のことだった。

文章はこう続く。

  母が女の人を好きだということに気づいたのは7歳の頃です。
  そして今、7歳になった姪が私に訊ねてきました。
  「おばあちゃんは男なの?女なの?」
   言葉で簡単に説明できないと思った私は、
  映像で彼女にその答えを示すことにしました。 (本文より)


だが映画『日常対話』は、姪の素朴な疑問に答えるためだけに作られたわけではなかった。
小学校すら卒業できなかった不遇の子供時代。さらに著者が誰にも明かせないでいた、かつて父親から受けたある虐待の記憶は、いつしかかたちを変え、著者と母親の間の埋められない深い溝となる。そんな母親と向き合い、関係を修復するために作られた作品でもあった。

自らの体験を題材にした映画はベルリン国際映画祭をはじめ国内外で高い評価を得て、最終的には第90回米アカデミー賞に台湾の代表作品として出品されるという、台湾ドキュメンタリー映画としては初の快挙を成し遂げた。

本書は『日常対話』の監督が家族の物語を文字で編んだ、もうひとつのセルフ・ドキュメンタリーだ。

同性愛者である母の半生、存在しない父の記憶、母の恋人たち、そして幼いころ過ごした「家」の思い出。「母は女性が好きなのに、どうして結婚して私達を産んだのだろう?」――誰にも明かせなかった著者の体験と胸の内が、活き活きとした文章で赤裸々に綴られる。

「文章と映画製作は切っても切り離せない関係にはありますが、二つはまったく異なるメディアです。本を書きませんか?と出版社からオファーをいただいたとき、1本の映画に盛り込める情報は限られているので、映画で伝えきれなかった内容を文章にして補足するというのもいいアイデアだと思いました。

映画は母に宛てて書いたラブレターのようなものなので、父親についての描写はごくわずかです。自分と父親の関係を言葉で整理する機会があれば、それは私自身だけでなく映画をご覧くださった皆さんにとっても参考になると思いますし、よりフェアな内容になると考えました。

映画を既にご覧になった皆さんにとっては、この本をお読みいただくことで、より深く私の家族の物語を理解していただけると思いますし、まだ映画をご覧になられていない皆さんは、私の体験したことを、文章によって体験していただけると思います。」(黄惠偵)

 

Small Talk 予告編 from Hui-Chen Huang on Vimeo.

日常對話 Small talk-trailer from Hui-Chen Huang on Vimeo.


書名:我和我的T媽媽(同性愛母と私の記録・仮)
著:黄惠偵
発行国・地域:台湾
発行年:2017年
ジャンル:ノンフィクション
ISBN:978-957-32-8072-9

著:黃惠偵(ホアン・フイチェン)

社会活動家、映画監督。6歳で母親の営む家業を手伝い始め、10歳で小学校を中退。20歳からは社会運動に従事しながら、ドキュメンタリー映画製作を学ぶ。台北市ドキュメンタリー映画協会秘書長を経て、現在は独立映像制作者として活動。2016年、同性愛者である母親を撮った初の長編ドキュメンタリー映画『日常対話(原題:日常對話)』を発表し、国内外の映画祭で高い評価を得る。日本では映画祭等で上映されたほか、NHK国際との共同制作でテレビ向けに編集された『母と私(原題:我和我的T媽媽)』(2016)が放映されている。


■目次・内容紹介

序文:傷跡を恥じることはない

第1章 母:阿女
——1956年生まれの著者の母アヌは雲林の小さな農村で生まれ育ち、14歳で台北へ出稼ぎに出た。男尊女卑の考えが根強い、伝統的な男性中心の家制度が当たり前だった農村で過ごしたアヌの幼少期に始まり、台北での初恋と失恋、夫・阿源との見合い結婚、そして牽亡歌陣団を立ち上げてから、32歳で娘二人を連れて家を逃げ出すまでを描く。

第2章 不存在の父:阿源
——父・阿源は塗装工の日雇い労働者として働いていたが、稼いだ金は家に一銭も入れず、酒と賭博に使い果たした。アヌから金を巻き上げ、激しい暴力を振るっていた父から、著者も虐待を受けていた。家を逃げ出した後も、阿源の影におびえながら生活するアヌと娘たち。著者は成人ののち、叔父からの連絡で、父が自殺したことを知る。

第3章 妹:阿娟
——著者の2歳年下の妹・阿娟は、母アヌに代わり著者が面倒を見てきた。共に過ごした幼い日の思い出。やがて「家庭」への強いあこがれから若くして結婚を決意する阿娟に対し、複雑な思いを抱く著者。さらに母の作った借金を目の前に、著者は住んでいたアパート屋上の給水塔の上へと登り…。

第4章 母の女性たち
——母アヌは「女性が好き」であることを周りに隠すことはなかった。仕事や生活を共にし、著者と妹の面倒を見てくれた8人のアヌの女性たち。それぞれの事情を抱えた彼女たちから、女性の様々な生き様が見えてくる。

第5章 記憶の中の家
——娘たちを守るため、着の身着のままで家を飛び出した母娘。家族が暮らしていた家と、そこに置き去りにした物について、記憶をたどる。

第6章 私:阿偵
——家計を助けるために6歳で家業の手伝いを始めた著者は、10歳の時に母アヌと妹と共に家を逃げ出す。DVシェルターなど無かった時代。父・阿源に行き先を知られないために、著者は身分を証明することができず、小学校にも通うことができなかった。やがて大人になった著者は、あることがきっかけとなり、自分の家族について、映像記録を残すことを決意する。著者自身が自分の半生を振り返る。

あとがきにかえて:映画『日常対話』撮影日記
——台湾で同性婚の合法化に向かって議論の進んでいた2013~2014年を背景に、撮影を通し、著者は母について、生まれ育った環境について思いを巡らせる。
 


勇気あふれるホアン監督の思いを
日本中のいろんな立場の人に届けたい!
発起人:小島あつ子より

 

昨秋、台北の「女書店」を訪れた時、店主がすすめてくれた本の1冊が『我和我的T媽媽(同性愛母と私の記録・仮)』でした。表紙を見た瞬間、私の心臓はバクバクしてしまいました。2年前に台北の劇場で鑑賞し、ギュッと心を鷲掴みにされた映画『日常対話』の主人公・アヌその人だったからです。

映画『日常対話』は、いつしか上手くコミュニケーションが取れなくなってしまった母親・アヌとの関係を、自らも一児の母となった娘が映画製作を通して修復しようとするドキュメンタリーです。身近な人へのインタビューによって明らかになる、同性愛者アヌの半生。そして映画の語り手である娘は、食卓で母親に胸に秘めたある思いを打ち明けます。

「あの映画、本になっていたんだ!」。レイトショーにもかかわらずほぼ満席だった光點華山で、沢山の人たちと一緒に笑って泣いた思い出が蘇りました。テーマは重かったのに、映画を見終わった時の私の心は、温かな気持ちでいっぱいでした。 本の原題『我和我的T媽媽』の“T”は、トムボーイ(英語)やタチ(日本語)に由来する台湾のレズビアン用語で、「男っぽい見た目の、女性を好きな女性」を示すようです。恰好も生き様も男勝りな著者のお母さん・アヌは、文字通り“T媽媽”。台湾は昨年アジアで初めて同性婚を合法化しましたが、アヌが過ごした時間の大半は、台湾社会がまだ性的マイノリティに対してまだまだ寛容でなかった時代でした。

夫のDVから逃れ、糊口をしのぐために弔いの儀式を執り行う台湾特有の陣頭を率い、したたかに生き抜いた“T媽媽”アヌ。Tはタフ(tough)のTなんじゃないか、というのが、本を読んだ後の最初の感想でした。それは映画と同様に本書でも語り手となり、仔細な観察と多大な勇気をもって、ハードな体験をシェアしてくれた著者で監督のホアン・フイチェンに対する印象でもありました。

「傷跡、恥じることは何もない」と名付けられた本書の序章に「苦難に満ちたお涙頂戴物語を語るつもりはないし、困難を乗り越え、底辺から這い上がる感動のサクセスストーリーだと思われるのは不本意だ」と記した著者は、「言葉に出し辛い過去の個人的な体験は、その人の生きた時代やある種の社会的価値観の問題や病理といったものを反映している」と考え、自分の作品が、読者自身にとって自分を見つめるきっかけになって欲しいと願っています。

2018年に実施した『書店本事 台湾書店主43のストーリー』翻訳出版プロジェクトに続き「本+映像」のかたちで台湾の良質なドキュメンタリー作品をお届けします。この本が日本語になり、ホアン監督の思いと映像作品が沢山の人に届きますように! ご支援・ご協力よろしくお願いします。


小島あつ子(こじまあつこ)
隣国台湾への興味と台湾映画好きが高じて、日本未配給の台湾映画の自主上映グループ「台湾映画同好会」を立ち上げる。台湾映画同好会代表。共訳に『書店本事 台湾独立書店43のストーリー』(サウザンブックス社)。
台湾映画同好会
 


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