こんにちはサウザンブックスです。
本書の著者 Morten Durr (モーテン・デュアー)さんに、ZENOBIA誕生の経緯についてなどメインタビューをしました。『私には、それが難民当事者たちを置いてきぼりにした、彼らの気持ちを考えていないもののように見えました。』というメッセージがぐっと心に響く内容です。ぜひともお読みくださいませ。
そして、
プロジェクト終了まで残り24日、
達成率の折り返し地点も見えてきました。
世界15ヶ国語に翻訳されているこの1冊、
16ヶ国語目である日本語版の誕生めざして頑張って参ります。
SNSなどでの情報拡散に、最後までお力添えのほど、
どうぞ宜しくお願い申し上げます!
■Morten Durr (モーテン・デュアー)インタビュー
Q:
元々ジャーナリストとしてお仕事をされていましたね。何がきっかけで子供のために本を書くようになったのでしょうか。
A:
子供のころからお話を書いたり読んだりするのが大好でしたし、10代になっても小説や詩を書いていました。書いたものは箱に保管しておいたのですが、いつしかそのことを忘れてしまいました。社会人になってジャーナリストとして働き始めましたが、キャリアとしてはあまり満足していませんでした。そうして何年かたったある日のこと、地下の収納部屋で掃除をしていたところ、作品をしまっておいた箱を偶然見つけたのです。私は中に入っていた作品を読み返してみました。そして自分がまだ物語を書くパッションを持っていることに気づいたのです。執筆活動を再開したのはその時です。そのころ長女が生まれ、子供のための本を書くことは至極自然な流れでした。
Q:
物語はどのようなきっかけで生まれますか?
A:
過去の経験や、メディアが報じたニュースからストーリーのアイディアが閃きます。中でもかなりドラマティックな状況に遭遇した時、書きたいという衝動に駆られます。映画で、あるワンシーンが 全てのストーリーの引き金になるようなものでしょうか。 一つ例をあげましょう。私が子供のころ、よく友達と古本屋に通っていました。その友達の父親は墓を掘る仕事をしていました。ある日、古本屋の店員がそれを聞きつけ、頭蓋骨を取ってくることはできないかと聞いたのです。 店員は頭蓋骨を持ってきたらお金をたんまりやるぞと言いました。もちろん私たちはそんなことはしなかったのですが、30年以上たったのち、ふとそのことを思い出したのです。そこで 二人の男の子が 頭蓋骨を盗み出し、幽霊に追い回されるというホラーストーリーを書き始めました。強い印象は随分あとになってよみがえるものです。
Q:
デンマークを含め、北欧は児童書の国として知られますが ご自分の作家活動にも影響を与えたと思いますか?
A:
はい、アンデルセンやリンドグレーンをよく読みました。今でも大好きな作家たちです。
Q:
なぜ ゼノビアを書こうと思ったのでしょうか。
A:
2015年、多くの人々がシリアからヨーロッパへと戦火を逃れるためにやってきました。その後SNSや既存メディアなどで難民問題について大きく取り上げられるようになりました。突然みんながまるでその専門家のように自分の意見を主張し、この問題をどう解決すべきかと議論がヒートアップしていったのです。私には、それが難民当事者たちを置いてきぼりにした、彼らの気持ちを考えていないもののように見えました。そこでほんの数分でもいいから心を穏やかにし、戦争の犠牲になった人々の命の尊さを考えてもらいたいという気持ちで物語を書きました。そういうわけで この本には文章もとても少ないのです。
Q:
イラストレーターのホーネマンさんとはどのようなコラボレーションで本を創り上げましたか?
A:
ラース ホーネマンはデンマークのイラストレーターで、『タンタン』のようなフランスやベルギーの漫画スタイルが大好きです。クリアな輪郭と力強い色を使うのが特徴です。
最初にゼノビアを書いたのは2015年で、当時は自分のための作品のようなショートストーリーでしたが、まずはラースに読んでもらうことにしました。
すると彼は文章をどんどんビジュアルにしていったのです。おかげで多くのテキストがはぶかれ最終的には言葉がぐんと凝縮されたグラフィックノベルとなりました。最初のショートストーリーと姿形は変わりましたが構成とシーンは同じです。
Q:
イラストにはスカンジナビアのタッチがあるとおもいますか?
A:
ヨーロッパ的なものはあると思いますが 歴史をずっと振り替えてみれば そのヨーロッパ的なるものも 日本の浮世絵にインスピレーションを受けているかもしれません。
Q:
シリアについての物語ですが 普遍的なテーマがありますね。それがたくさんの国に受け入れられているのだと思います。それについてどう思いますか?
A:
この本は 戦争が子供にどんな運命をもたらしうるかを描いたものです。テーマそのものが世界中の人々の心に共鳴するのだと思います。
Q:
ゼノビアの出版後、あなたのキャリアに変化はありましたか?世界の読者からどんな反響がありましたか?
A:
こうした評価が私のキャリアにどうかかわるかはまだわかりません。ゼノビアは決して商業的な本ではありません。その一方で様々な国々でたくさんの学校の子供達や先生に受け入れられているのも事実です。
Q:
日本で出版されたら この本をどう受け止めてもらいたいですか?
A:
他の国々と同様、この本を子供にも大人にも読んでもらいたいです。
デンマークでは 学校で 子供達が難民問題について議論する際 この本が広く用いられています。日本の教育現場でも同じような目線で「ゼノビア」を読んでもらえると嬉しいです。
こどもたちに『ZENOBIA』について話すモーテンさん
著者の近影