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アルコール依存症の親を持つ子どもたちに届けたい!絵本の翻訳出版

依存症の親を持つ子どものケアの現状

 

アルコール依存症当事者への支援は、相談施設や専門クリニックや断酒会などの自助グループなど、さまざまなところが行っていますが、その子どもに対してのケアはどういう状況なのでしょうか。子どものケアの現状について、発起人の谷口万稚さんにレポートいただきました。

 

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アルコールに問題がある人は、身から出た錆だから自己責任でどうにかしていくしかないという風潮がある社会では、その影響を受けている子どもたちへの関心が低いのが現状です。現在6人に1人の子どもが貧困状態にあるといいますが、その背景にはアルコール問題も多く隠れているはずです。

このような社会背景ではありますが、勇気を出して相談に行かれた依存症の当事者には、専門治療・相談施設、リハビリ施設、断酒会やAAなどの自助グループがあり、また、その家族に対しても、精神保健福祉センターや治療・相談施設などで、依存症を理解するための教育プログラムやその他の支援があり、断酒会・Al-Anonなどの自助グループもあります。

しかし、残念なことに私が知る限り、アルコール依存症の陰にいる子どもたちに特化した支援を行っている所は最近までありませんでした。そんな中、2007年に成増厚生病院が、患者さんのお子さんたちに向けた「子どもプログラム」を、2014年には「思春期プログラム」を始められました。このことは、すごく画期的で大変に喜ばしく、これをきっかけに子どもへの支援が増えてくれることを願うばかりです。

現在、2019万人(2013年厚労省研究班)という、多量飲酒者・リスクの高い飲酒者の数字の裏にいる多くの子どもたちのことを考えると、当然、この成増厚生病院のプログラムだけでは支援しきれるものではありません。病院につながっていない当事者の子どもたちに届く支援の1つが、この絵本を出版することだと考えています。

私の普段の活動における相談の場では、家族の悲痛な声の中に子どもたちへの影響を心配する声が多く聞かれます。

問題飲酒のある親がいる家庭で育つと、

・自分の気持ちを把握しそれを健康的に表現すること

・親密な関係に出会った際に、それを健康的に保つこと

・ヘルプサインを出すこと

・人との距離の取り方・接し方

・自分は幸せになってもよいという感覚を持つこと

・自分を尊重すること

など、人として成長していく上で大切なものを、丁寧に構築していくことが困難になります。また、依存症に特化した相談ではないものの、子どものころに親の飲酒で苦しみ、何のケアも受けずに自分だけで耐えて大人になった方々にも多く接します。

親の飲酒に苦しむ子どもが、自らこの絵本を手に取るのは大変難しいはずです。故意に避ける方が普通かもしれません。そのため、周囲にいる大人が、このような環境にいる子どもたちの苦しみを理解することが、ケアの第一歩になります。子どもたちが安心できる場を提供し、一緒にこの絵本を読んで、子どもの気持ちを聴きながら、感じたことを話しあうことは専門家でなくてもできます。自分の話を真剣に聞いてくれる大人がいたという経験は、その子の将来に大きな影響を与えるはずです。この絵本が、そのように子どもへの支援に役立ってくれることを信じています。

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精神障がいやこころの不調、発達障がいをかかえた親とその子どもを応援する活動をされている「NPO法人ぷるすあるは」さんからプロジェクトの応援を頂き、動画の撮影にご協力いただきました。

※youtubeのウェブサイトに移動します

 

2016/09/26 15:05