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ギリシャのブルースとも呼ばれる「レベティコ」の世界を、
女たちが語り直す。
傑作バンド・デシネ『レベティッサ』を翻訳出版したい!

マンガ作家で筑波大学芸術系准教授の山本美希さんから応援メッセージが届きました!

『レベティコ』クラファンのときにも応援メッセージを寄せてくれたマンガ作家・筑波大学芸術系准教授の山本美希さんが応援メッセージを寄せてくれました! 山本さんはなんと今年イタリアで、『レベティッサ』の作者ダヴィッド・プリュドムと一緒に原画展を行ったとのこと。そのときの様子をレポートしつつ、ダヴィッド・プリュドムの原画の魅力について論じてくださっています!



2026年の5月末から6月はじめにかけて、私はイタリアの都市ラヴェンナにいました。もともとダヴィッド・プリュドムさんの作品のファンで、前回の『レベティコ』クラウドファンディングでも応援メッセージを書かせていただきましたが、今回のメッセージでは、ラヴェンナ市立美術館にて観覧したプリュドムさんの原画展示についてレポートします。

日本マンガを数多く翻訳出版しているイタリアの出版社ココニノ・プレスは、例年世界中から数名マンガ家を招いてトークやサイン会等のイベントを行なっています。今年の「ココニノ・フェス」の一環として、ラヴェンナ市立美術館にて「Rebels(反逆者たち)」と題したマンガ家5名の作品展示が行われ、5名のうちのひとりは私、そしてその中にダヴィッド・プリュドムさんも含まれていました。ココニノ・プレスは私の作品(『Sunny Sunny Ann!』『ハウアーユー?』)のイタリア語版の版元で、実は『レベティコ』と『レベティッサ』のイタリア語版の版元でもあり、なんとイタリアの地にて同じ出版社で活動する作家として展示するという、ちょっと信じられないことが起きたのでした。

展示では1名の作家につき1-2部屋が割り当てられていて、それぞれ50枚以上の原画を見ることができる充実した構成でした。プリュドムさんのコーナーには『レベティコ』と『レベティッサ』の原画が並べられていました。額装された美しい原画を広い展示空間で見られるというだけで壮観でしたが、この両作品の原画を見ると、仕上がりの本とは異なる特徴がいくつかあることにすぐ気づきます。ひとつ目はモノトーンであることです。どちらの作品も完成した本は美しく着彩されていますが、展示されていた原画は線描と影だけが描かれた状態でした。この時点でキャラクターや背景など重要な要素は全てインクで描き終えており、表情や背景には繊細な陰影が鉛筆で加えられています。原画と完成した本を見比べると、まずこのようにインクの描画に鉛筆のグレートーンを重ねて明暗をつけた上に、さらに着彩をしていくという複層的な工程が、それぞれの画面に奥行きや空気感を生み出しているように見えました。

ふたつ目の特徴は、コマがひとつずつ切り離されていることです。例えば1ページに12コマが描かれる場合、それぞれのコマはバラバラの紙片に描かれ、土台となる1枚の大きな紙の上に12の小紙片として貼り付けられているのです。このような原画はこれまでほとんど見たことがなく、どういう状況なのか理解が追いつくまで時間がかかりました。原画を右からも左からも眺めて、展示室を何往復もしましたが、どのページも同じように切り貼りされていました。ご本人にもちらっと質問をすることができたのですが、つまりこれは1コマずつ何度もやり直して描き、上手くいったバージョンを採用して土台の用紙に貼り付けた状態にしてあるということのようなのです。そのことが理解できたとき、展示されている原画の背後にある無数の不採用になったコマの断片たちが目に浮かんでくるようでした。誰よりも自由自在に絵を操れるように見えるマンガ家であっても、こうした作業の上に作品を作っているのだと、作品を背後から支える隠された努力が垣間見えました。

 

 
『レベティコ』原画。バラバラのコマが1枚の紙に貼り付けられているのが確認できる

 

海外のマンガ家たちの作品を見ると、このように描写法やマンガに対する考え方の違いを知ることができます。それは私にとって、いや多くの日本のマンガ読者にとっても、常識や固定観念が揺さぶられるような得難い体験ではないでしょうか。『レベティッサ』も翻訳が出され、選りすぐりのコマたちが並ぶ美しい画面をたくさんの人が目にできることを、ファンのひとりとして願っています。

 

展示作家たちの書籍で、左手前がLUZ、中央・右手前がダヴィッド・プリュドム、左奥がMiguel Vila、中央奥2冊が山本の作品。展示会場の書店にて。

 


山本美希
マンガ作家、筑波大学芸術系准教授。主な作品に『Sunny Sunny Ann!』(2013、手塚治虫文化賞新生賞)、『かしこくて勇気ある子ども』 (2021、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞)など。マンガだけでなく絵本にも強い関心があり、研究室では特に文字のない絵本を対象に表現・歴史の研究に取り組む。
Instagram: https://www.instagram.com/mikiyamamoto.manga/
HP: https://mikiyamamoto.myportfolio.com/

 

山本美希さんの最新の著作である絵本の研究書『その絵本にはなぜ文字がないのか 文字のない絵本における物語表現』(フィルムアート社、2026年3月刊)はこちら。
https://www.filmart.co.jp/books/978-4-8459-2506-3/

 



山本さんが今年5月から6月にかけて、イタリアでダヴィッド・プリュドムと原画展をしたと伺い、「よかったらぜひ応援メッセージを…!」とすぐさまお願いしました。『レベティコ』の原画のことは初めて聞きましたが、めっちゃ興味深すぎる! 『レベティコ』クラファンのときに、5名限定で下絵をご提供するコースをご用意しましたが、きっと山本さんが書いてくださった経緯で用意された、作品完成に至る貴重な痕跡のひとつなのだなと思うと、感慨もひとしおです。

山本さんが提供してくださった写真には、山本さんの『Sunny Sunny Ann!』『ハウアーユー?』と並んで、ダヴィッド・プリュドムの『レベティコ』『レベティッサ』、そして一昨年出版され、各所で高く評価された未邦訳のバンド・デシネ、ルス『ふたりの裸の少女』(Luz, Deux filles nues)、そしてやはり日本未紹介のイタリア出身のマンガ家ミゲル・ヴィラの『爆燃』(Miguel Vila, Deflagrazione)のイタリア語版が置かれています。こんなふうに世界中のマンガ家の新しい重要な作品にイタリア語でアクセスできるのがうらやましい!

大変な道のりですが、ぜひ日本でも同じように世界のマンガを日本語で気軽に手に取ることができるよう、世界のマンガを翻訳出版するサウザンコミックスの活動を続けていきたいと思います! まずは今回のクラファンをぜひ成立させたいと思いますので、引き続きご支援・応援よろしくお願いします!

 

 


 

2026/09/01 16:10