私たちバディチームは、さまざまな事情により子育てに困難を抱える家庭に訪問し、保育・家事・送迎・学習支援・お話相手など、具体的なお手伝いをすることで家庭の孤立を防ぐ、家庭訪問型の支援を行っています。
国の児童虐待予防対策の一環である養育支援訪問事業や、食事づくりを軸とした食支援等の事業、また里親家庭に対する援助事業など、都内15の自治体から事業を受託し、年間300ほどの家庭を訪問しています。
試し読みに描かれた2つの場面を読んですぐ、「これは私たちのための本だ!」と確信しました。
「具体的にどう助けてくれるのよ?悪いけど、私に何か役立ってると思えないんだけど。」
というターラの問いは、現場で活動する「子育てパートナー」や事務局のコーディネーターが日々、明に暗に突きつけられているものでもあります。
それでも私たちは、週1日のたった2時間でも、「ともにある」ことの意味を信じて、活動を続けています。
それはターラのような子どもたちのためだけでなく、一見すると無責任に見えるような「ママ」のためでもあります。
親があたたかな態度で愛情を表現し、子どもが健やかにそれを受けとめ、子どもも親も自分らしく生きるためには、きっと他者の支えが必要だと考えるからです。
おそらく職業としてのエデュケーターのもつ専門性は、従来の「課題解決型」のそれとは異なる尺度で測られる、日本社会にとっては新しいものだろうと思います。
しかし一方で、少なくとも子どもや親と向き合うその場面に限っていえば、それは必ずしも高度な専門知識を要求するものでもないのではないかとも思うのです。
その新たな価値が制度やしくみにインストールされるのを待たずとも、この本を読み、粗削りでもいい(ただし徹底して自分の粗削りさには謙虚な)、ちいさなパボさんが各地にたくさん生まれることを願いますし、また僕自身も、そうなりたいと思います。
どうか力を合わせてこの本を日本に迎え入れ、来るべき社会について、ともに語り合いましょう。
濱田壮摩
NPO法人バディチーム 理事
鹿児島県・奄美大島出身。2008年、東京大学在学中にバディチームへ参画。2013年に一度離職するも、紆余曲折を経て2019年より理事。虐待防止・里親家庭支援を目的に都内15の自治体から事業を受託して家庭訪問型の支援を行うバディチームにて、自治体や外部機関との協働に関わる折衝などを担当。
https://buddy-team.com/