『アフターアワーズ』や『水野と茶山』でガールミーツガールの物語を描く漫画家・イラストレーターの西尾雄太さんが、サウザンコミックス第4弾『綺譚花物語』に応援コメントを寄せてくれました!
いつものように漫画家仲間とtwitterのルームでだベっていたときのこと。
「面白い漫画ってなんだろう?」という話題になり僕はとくに考えず「教養のある漫画」と答えました。
もちろんそれだけを求めて漫画を読むわけではなく、また、多かれ少なかれひろく読み物に内在するものであります。
ふりかえって、自分が海外漫画を読む動機がそこにあるのではないかという話を、数行させていただきます。
教養とは外からもたらされる、自分という畑を耕す見知らぬ農具です。
とはいえ、どんなに優れた道具であっても扱いきれぬものであっては困ったものです。
せめて一目見てわかるところにグリップなぞはついていてほしい。
ここに、いま、日本で翻訳出版されようとしている一冊の漫画単行本があります。
綺譚花物語というタイトルで星期一回収日さんと楊双子さんが描かれている
台湾発の時代物でありガールミーツガールです。
さて、
僕にとってはガールミーツガールというテーマはしっとりと手になじむグリップです。
申し遅れましたが僕は普段そのようなテーマで作品を描いている漫画家でして、
縁あってこちらに応援のテキストを描かせていただいてます。
段落2つぶん、話を戻しましょう。
ひとによってそのグリップは異なり我々に馴染みのある絵柄であったり、コマ割りであったり、地図アプリを手に歩いた雑踏のにおいその記憶だったりすることでしょう。
幸運なことにこの漫画にはそのようなとっかかりがいくつも存在する。
しかし、両手でしっかり握ったその全貌は、まだうかがい知ることができない。
さまざまな未知がひろがっているはずです。
とてもわくわくしませんか。
農具かと思ったそれは実はとても速い乗り物で、見知らぬ地平に連れて行ってくれるかもしれない。
あるいはとんだじゃじゃ馬で、疲労困憊。長靴の中まで掘り返した土でいっぱいになってしまうかもしれない。
なにが農具だ漫画本じゃないか。そのとおり。
でも、ページを閉じたあなたはきっと充実した気持ちにあふれているはずです。
その気持ちを、感想を、共有できたらうれしい。
ところで、ここまで読んで僕が作品の内容にまったく触れていないことにお気づきかと思います。
それは、僕がみなさんとまったく同じ知識量のいち支援者にすぎないからです。
新鮮な気持ちで読みたいので本テキストを書くにあたって新たに自分で調べるというようなこともしてません。
わからない、でも面白そう。
クラウドファンディングにベットするなんてそのくらいの動機で十分じゃないでしょうか。
気になっちゃったし読んでみたいから。
プロジェクトの成功をお祈りしています。
西尾 雄太
漫画家、イラストレーター。
ダンスミュージックへの造詣を武器にクラブイベントのフライヤーイラストやトラックメイカーへのアートワーク提供を多数手がけるほか、
アーティストとして村上隆キュレーションのグループ展『A Nightmare Is A Dream Come True : Anime Expressionist Painting』に参加するなど活動は多岐に渡る。
漫画家としての代表作は『アフターアワーズ』(小学館刊)『水野と茶山』(KADOKAWA刊)など。
書名:水野と茶山(上下)
著:西尾雄太
発売年月:2020年1月
発行:KADOKAWA
※既に英語に翻訳されている『アフターアワーズ』に続き、『水野と茶山』も2022年2月に英語版翻訳出版決定!