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エイズが死に至る病だった1990年代前半、
医療従事者や患者を描いた海外コミックス
『テイキング・ターンズ HIV/エイズケア371病棟の物語』を翻訳出版したい!

『テイキング・ターンズ』の著者に翻訳書を直接、手渡しできました!

 皆様のご支援により『テイキング・ターンズ HIV/エイズケア371病棟の物語』を刊行して以来、おかげさまで好意的な反応を数多くいただくことができました。あらためて御礼を申し上げます。

 2022年7月14日~16日に、グラフィック・メディスン学会が、『テイキング・ターンズ』の著者、MKさんの主催によりシカゴ大学医学部にて開催されました。2019年度に英国ブライトンで開催されて以降、久しぶりの対面での開催となるもので、大会テーマは “(Re)Connecting”(絆を再び接続する)というものでした。
 私自身は、月本千景さんの『学校に行けなかった中学生が漫画家になるまで 起立性調節障害とわたし』(中央公論新社、2021)を題材に、日本の闘病エッセイマンガの多様な発展と、社会包摂に向けたマンガの可能性について報告してきました。
 他には、日本語で翻訳のある『母のがん』(高木萌訳、ちとせプレス、2018)の著者、ブライアン・フィースさんによる講演や、あるいは、永田カビさんの『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(英語版)を博士論文の題材の一つとして準備している英国の大学院生の報告もありました。「恥」の感覚と体験をマンガがどのように表現しているかをめぐる野心的なテーマであるそうです。『テイキング・ターンズ』も分析対象作品リストに入っていました。
 新たにスタートしたグラフィック・メディスン賞では、フランスの女性アーティスト、エロディ・デュラン(1976- )『パレンセシス』(Élodie Durand, _Parenthesis_. 2021)が受賞しました。20代半ばに脳腫瘍の症状が現れて以降の半生を描く回想録です。医療と健康にまつわる世界の新しいマンガ作品を毎年、検討する試みとして、グラフィック・メディスン賞の今後も楽しみです。



 

 『テイキング・ターンズ』の著者であるMKさんはグラフィック・メディスン学会の発起人の一人であり、今回の大会の主催者ということもあって、常に会場にはりついて進行に携わっていました。機器のトラブルもあり本当に大変そうでしたが、合間に直接、翻訳書をお渡しし、ご挨拶させていただくことができました。
 MKさんは、この本を日本で刊行するにあたってご支援をいただいた皆様に対する感謝の念と、この作品を通じて新たな交流が生まれることへの期待を示されました。日本版は英語版より若干小さい装丁なのですが、手触りや手に取りやすさも喜んでくださっていました。
 MKさんはシカゴ大学医学部大学院をはじめ、主として将来の医療従事者を対象に、マンガ、グラフィック表現を用いた医療コミュニケーションを指導されています。
 これからもぜひ『テイキング・ターンズ』を多くの方にお勧めいただけましたら嬉しく思います。



  
 また、私(中垣)が関与しています、日本グラフィック・メディスン協会では、2022年3月から毎月、オンラインでの勉強会を行っています。
 毎回、英語圏のグラフィック・メディスンの代表作から1、2点採り上げ、関連するテーマに合わせたゲストスピーカーをお迎えし、日本の医療とマンガを取り巻く環境の中で、どのようにグラフィック・メディスンの概念を応用できるかを探っています。毎回のレポートも発信していますので、ぜひ協会HPにお立ち寄りください。

 そして、『テイキング・ターンズ』を刊行させていただいたサウザンコミックスのレーベルはその後もプロジェクトを次々に達成し、現在は第5弾として、パヴェル・チェフ『ぺピーク・ストジェハの大冒険』というチェコ・コミックのクラウドファンディングを展開中です(9月12日まで)。吃音症を抱えた少年の物語ということでグラフィック・メディスンとの関連を探ることもできますし、世界のマンガ文化の多様性、マンガ表現の多彩な魅力を実感することができるのはまさにサウザンコミックスならではでしょう。
早くも第6弾として、アメリカのグラフィックノベルの傑作、デイヴィッド・マッズケリ『アステリオス・ポリプ』のプロジェクトも発表されています
 世界のマンガの奥深さをこれからも皆様と共有することができますように!


2022年8月10日
『テイキング・ターンズ』発起人
       中垣 恒太郎 
 

2022/08/10 13:21