おかげさまでプロジェクト達成し、期限がきましたので募集を終了しました。みなさまからのご支援心より感謝申し上げます。
『ペピーク・ストジェハの大冒険』 は、サウザンブックスのECショップ、全国の書店、ネット書店で販売中。
書名:ペピーク・ストジェハの大冒険
作:パヴェル・チェフ
訳:ジャン=ガスパール・パーレニーチェク、髙松美織
発行年:2023年6月
仕様:B5判/並製本/208ページ/4色
ジャンル:外国文学・コミック
ISBN:978-4-909125-41-5
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ペピーク・ストジェハは恥ずかしがりやで一人で本を読んでは空想ばかりしている中学生の男の子。吃音症があるので、人と話すのを避けてしまいます。
ある日、ペピークは古い冒険物語の本を道端で拾いました。主人公はフラゴラミス船長。その南方風の名前と遠い国での勇ましい話に、ペピークはすぐに夢中になります。その日、エルゼヴィーラという謎めいた名前の少女がペピークの学級に転校してきました。ペピークの隣の席に座ったエルゼヴィーラはペピークに積極的に話しかけ、二人の間には次第に友情が生まれます。「強く願えば思いは叶う」と言うエルゼヴィーラ。二人は、フラゴラミス船長の真似をして街を探検にするようになります。ペピークは次第に彼女以外の人にも心を開けるようになっていくのでした。冬のある日、エルゼヴィーラと凍った河でスケートを楽しんでいたペピークは、氷が割れて河に落ちてしまいます。近くに建っていた古い水車小屋に入り込んで何とか火を起こして身体を乾かしますが、ペピークは熱を出して何日も学校を休んでしまうことに。数日後、ペピークが学校に戻ると、そこにはエルゼヴィーラの姿はありません。それどころか、エルゼヴィーラを覚えているものすらいないのです。ペピークはエルゼヴィーラを探し出す旅に出かけます。
作者のパヴェル・チェフはこの『ペピーク・ストジェハの大冒険』という作品について、インタビューで次のように語っています。「私は人の心が形作られていく時期が好きです。それはとても大切な瞬間です。その時、私たちは誰かと出会い、その誰かから決定的な影響を与えられるのです。主人公は路で不思議な青い小石を見つけます。それはごく些細な、なんでもないことですが、その瞬間から、彼の生活だけでなく、彼自身が変わり始めるのです……」。
本書は幼少期に吃音があった作者パヴェル・チェフの半自伝的作品です。
書名:ペピーク・ストジェハの大冒険(Velké dobrodružství Pepíka Střechy)
著:パヴェル・チェフ(Pavel Čech)
発行国:チェコ共和国
ジャンル:外国文学・コミック
ISBN:978-80-87595-12-1
著:パヴェル・チェフ(Pavel Čech)
1968年、チェコスロヴァキア(現在のチェコ)ブルノに生まれる。少年時代にはアレクサンドル・デュマやジュール・ヴェルヌなどの古典的な冒険小説に夢中になり、特にデュマの『三銃士』から影響を受ける。また、『シートン動物記』で有名なアーネスト・トンプソン・シートンとシートンが提唱したウッドクラフト運動に感銘を受けた。鍵屋として工場で働く傍ら、グラフィックデザインを学び、独学で油絵を始める。1989年からは15年間、消防士として働く。2000年に『ルディー(Ruddy)』でチェコ・コミック界にデビュー。代表作に本書『ペピーク・ストジェハの大冒険』(2012年)のほか、死と向き合う時間を描いた『おじいちゃん(Dědečkové)』(2011年)、独裁国家を批判した『A』(2016年)、夢から夢へと走る電車の話で精神医学者のユング的世界に挑戦した『電車(Vlak)』(2017年)などがある。作品は、チェコで最も権威のある文学賞「マグネシアリテラ(Magnesia litera)」の児童書部門受賞を始め、国内で高く評価されているだけでなく、イタリア語やフランス語などさまざまな言語に翻訳され、ヨーロッパを中心に国外でも楽しまれている。アニメ化されたものも多く、チェフのHPから観ることができる。コミック以外では、『小さい悪魔の話(O čertovi)』(2001年)や『素晴らしい庭(O zahradě)』(2005年)で児童文学作家としても活躍していて、小説の挿絵の仕事も多い。チェコ映画界の巨匠でイラストレーターでもあったイジー・トルンカの才能を引き継ぐ唯一の作家と評される。
チェフのHP:www.pavelcech.wz.cz
【チェコ・コミックについて】
チェコ・コミックには約100年に及ぶ長い歴史があります。もっともそれは決して平坦なものではなく、チェコという国が歩んできた道のりと同じく、波乱に富んだものでした。1989年のビロード革命による民主化以降、新しい世代の作家たちが多種多様で魅力的な作品を次々と生み出していますが、残念ながら現時点では日本語訳はほとんどありません。とはいえ、2017~18年には明治大学米沢嘉博記念図書館で「チェコ・コミックの100年展」 が開催されました。今後のさらなる紹介が期待されます。
参考URL:https://www.meiji.ac.jp/manga/yonezawa_lib/exh-czech.html
海外マンガと聞いて、まっさきにチェコ・コミックを思い浮かべる人はいないでしょう。アメリカのコミックスやフランス語圏のバンド・デシネをまず思い浮かべるのではないかと思います。ところが、実はチェコにも魅力的なマンガがたくさん存在しています。残念ながらまだ日本語に翻訳されていませんが、読んでいただく機会があれば、きっとその魅力に夢中になっていただけるのではないかと思います。
2017~18年に明治大学米沢嘉博記念図書館で「チェコ・コミックの100年展」を開催した際(パヴェル・チェフの『ペピーク・ストジェハの大冒険』もこの展覧会で紹介しました)、来場者の皆さんから「これはマンガというよりアートですね」というご感想をたくさんいただきました。うれしく思う一方で、驚きました。なぜならチェコ人にとって、マンガはまごうかたなきアートだからです。日本のマンガに慣れ親しんでいる皆さんには意外に思われるかもしれませんが、チェコ・コミックは自宅で気軽にコレクションできるアートの一つなのです。
チェコ・コミックは日本のマンガより大判で、しばしばオールカラーで描かれています。アメリカのコミックスやフランス語圏のバンド・デシネとよく似ていると思われる方もいらっしゃると思いますが、当然ながら、それらとまったく同じではありません。チェコ・コミックにはチェコ・コミックならではの特徴があります。大げさに聞こえるかもしれませんが、それにはチェコの歴史が大きく関わっています。チェコ・コミックの発展は、チェコの国内外の情勢に翻弄されてきたのです。
チェコでは1948年から1989年まで共産党の独裁政権時代が40年以上続きました。その時代、政府に非協力的な芸術家や知識人たちは職を追われました。もっとも、働かなければ投獄されてしまいますから、彼らは秘密警察や密告者たちの監視の目にさらされながら、単純労働に従事して、どうにか生計を立てていたのです。
視覚に強く訴えかけるからでしょうか、その時代、チェコ・コミックも共産党政権から睨まれ、幾度となく弾圧されてきました。「西側の堕落した文化の権化と見なされたチェコ・コミックは、必然的に地下活動の対象となりました。幼児雑誌に掲載されるコミック以外では商業化などは考えられず、描くならば逮捕されても構わない覚悟が必要でした。
公表されることなく、親しい友人同士の間でこっそりと見せ合うことしかできなかったにもかかわらず、その不遇の時代にチェコ・コミックは描き継がれてきました。作家たちにとって、それは最後の心の砦だったと言えるかもしれません。紙の上でだけは、現実の世界から離れて精神を解放させ、心の奥深い場所に分け入ることができたのです。こうしてチェコ・コミックは、作者自身の内面を強く反映する芸術に発展しました。1989年、ビロード革命を迎え、民主資本主義へと社会が転換した後も、チェコ・コミックのこの精神は現代の作家たちに受け継がれてます。
冒頭でも申し上げた通り、チェコ・コミックにはすばらしい作品がたくさんあるのですが、残念ながらまだほとんど日本語に翻訳されていません。このような状況を変えるためにも、ぜひ皆さんのお力を借りて、パヴェル・チェフの『ペピーク・ストジェハの大冒険』という作品を翻訳出版することができたらと思います。
幸い日本ではチェコ・アニメがよく知られています。共産党独裁政権下の困難な時代に活躍した世界的なアニメの巨匠にイジー・トルンカがいます。彼はただ美しい世界を描いたというだけでなく、人生の苦悩といった一見ネガティブなテーマも取り上げ、人間を丸ごと肯定した偉大な作家でした。実は今回ご紹介するパヴェル・チェフは、チェコの芸術界でトルンカの再来だと評価されている逸材です。その才能のほどは、この本を読んでいただければわかるのではないかと思います。
ジャン=ガスパール・パーレニーチェク(Jean-Gaspard PALENICEK)
1978年にチェコスロヴァキア、プラハ生まれ。詩人、執筆家、美術展キュレーター、映画評論家。祖父は世界的なピアニストのヨゼフ・パーレニーチェクで、チェコを代表する音楽家を多数輩出した音楽一家。パーレニーチェク自身も作曲を手掛ける。 母国語のチェコ語、フランス語の他にも英語、イタリア語など数ヶ国語に通じる。 劇団オルフェウス(Orfeus)に入団して各地で演劇活動を行った後、チェコ外務省文化広報機関チェコセンターパリ支部にてプログラムディレクター、副館長、館長を務めた。フランスの各都市に協力し、パリの「外国文学の夕べ」など、様々な文化イベントを立ち上げる。グランパレやポンピドゥーセンター、プラハナショナルギャラリー、チェコ国立プラハ工芸美術博物館などとの美術展企画協力、また、多様な芸術・学術分野をクロスさせたイベントを開催する他、『アナルゴン(Analogon)』や『レヴォルヴァーレヴュー(Revolver Revue)』など、欧州の雑誌に文化社会評欄や随筆の連載を持つ。フランス・パリ市立フォーロム・デ・ジマージュ(Forum des images)、ラ・ロシェル国際映画祭、アンジェ国際映画祭プルミエプラン(Premiers Plans )など、映画祭美術・プログラムアドバイザー、DVD制作協力・監修する他、パリソルボンヌ第4大学、パリソルボンヌ北大学、明治大学、成城大学、東京女子美術大学などで、文学、美術史、美術外交や映画史について講演会講師を務める。
自身の著書に『白樺(Les Bouleaux)』、詩集『悲しみの聖母(Mater dolorosa)』、戯曲『バルザック家(Le Ménage de Balzac)』 (3冊ともに未邦訳:Revue K社、2008年、2009年)、 「注目すべき芸術家」 シリーズにて詩的日記『一文(Jedna věta)』 (Revolver Revue社、 Praha、2013年)などがある。
近年、チェコと日本の懸け橋となる活動を積極的に行っていて、2017年から2018年にかけて行われた「チェコ・コミックの100年展」(明治大学米沢嘉博記念図書館、北九州市漫画ミュージアム)ではコーディネーターを務め、チェコの学生たちと一緒に作成した『Iogi 井荻』(第15回日本国際漫画賞〈入賞〉)では原作者兼アドヴァイザーを務めた。
髙松美織(たかまつみお)
パリソルボンヌ大学臨床心理学部修士課程終了。フランス語通訳、翻訳家。「チェコ・コミックの100年展」(2017年~18年、明治大学 米沢嘉博記念図書館ほか)、「カレル・ゼマン展」(2010年、刈谷シ市美術館ほか)、「ミュシャと日本・日本とオルリク」(2019年、千葉市美術館、和歌山県立近代美術館ほか)、「藍のファッション」(2021年~22年、チェコ国立プラハ工芸美術館)などの企画準備で翻訳協力、また「Iogi 井荻」展(2021年~22年、杉並区立郷土博物館分館、須崎市民文化会館、女子美ガレリアニケ他)や「ヴァーツラフ・シュライフ」作品展では美術展企画調整をした。
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