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エイズが死に至る病だった1990年代前半、
医療従事者や患者を描いた海外コミックス
『テイキング・ターンズ HIV/エイズケア371病棟の物語』を翻訳出版したい!

『テイキング・ターンズ』翻訳刊行プロジェクト――発起人より年内最後のご挨拶。

 『テイキング・ターンズ HIV/エイズケア371病棟の物語』翻訳刊行プロジェクト発起人の中垣恒太郎です。プロジェクトのスタートから1か月終わろうとしています。早くも50名を超える方々にご支援をいただいております。ありがとうございます。
目標到達額まで10%の段階ですから険しい道のりがさらに続きますが、この作品を多くの方に手に取ってもらうことができますように、刊行に向けて引き続き頑張ってまいります。

 この「活動報告」の場を通して、『テイキング・ターンズ』を媒介に、さまざまな活動を「繋ぐ」試みを実践していきたいです。
『テイキング・ターンズ』の著者、MK・サーウィックは、医療人文学、医療の現場を繋ぐグラフィック・メディスンの中心メンバーの一人です。『テイキング・ターンズ』刊行後に、彼女が編者としてまとめたアンソロジー『メノポーズ マンガで扱う更年期』(MK Czerwiec, Menopause: A Comic Treatment, Penn State University Press, 2020)は、女性コミックス・アーティストの作品を収録したもので、ジェンダー、セクシュアリティ、そして「年齢を重ねること(エイジズム)」の観点から高い評価を得ています。『ニューヨーク・タイムズ』誌による「2020年に刊行されたグラフィック・ノベル10作品」にも選出されるなど、その多彩な活動が注目されています。
 『テイキング・ターンズ』は、英文学を学び大学を卒業後、会社につとめるも、仕事での充実を得られず、看護師資格取得を目指して大学に再入学する時点から回想されています。自身の母親も看護師であったこと、病気を患っていた父親に対するケアをしていた経験なども進路の再選択にあたり影響していたようです。看護実習先でHIV/エイズ病棟に携わったことから、作者は1990年代アメリカのHIV/エイズ病棟の状況を、医療従事者として体験することになります。その記録となる『テイキング・ターンズ』は、死の不安に向き合う患者たちとの交流、患者それぞれのプライベートな領域に入り込む医療従事者としての「気持ち」の揺れ動き、かつての患者との再会など、たくさんの読みどころに満ちています。作品の一部翻訳にて、ぜひ作品の雰囲気を味わってみてください。
さらに、その一部翻訳をよりわかりやすく新たに動画にまとめてみました。こちらもぜひご覧いただきたいです。

 


 現在のコロナウイルス感染状況の中で、医療現場の疲弊も多く伝えられています。医療現場の最前線にいる医療従事者の「気持ち」は、本書においても主要な要素になっています。
 日本のマンガおよび医療を取り巻く状況の中で、『テイキング・ターンズ』をいかに豊かに読むことができるかを、この「活動報告」の場を通して、皆さんに紹介できますように準備を進めています。
 現在の状況の中で制約はありますが、このプロジェクトに関連したイベントもさまざまに予定しています。2020年12月28日開催の「海外マンガ忘年会」も、ぜひ多くの方のご参加をお待ちしています。「聴いてるだけ」の方も大歓迎です。気楽にご参加ください。

 『テイキング・ターンズ』を通して、皆さんと一緒に世界を広げていけますように願っています。ご関心のありそうな方にご紹介いただけましたらとても嬉しいです。
引き続きご支援をお願いいたします。良いお年をお迎えください。
 

2020年12月25日
中垣 恒太郎
 

 

 

2020/12/25 10:34