レズビアン、LGBT、クィア――そういった言葉を目にした時、あなたはどんなイメージを思い浮かべますか?
美しい女同士や、格好いい男同士のカップル。華やかな同性婚の結婚式。六色の虹に彩られたプライドパレード。色とりどりのネオンが煌めく新宿二丁目。長き闘争の道程を経てようやく結婚の権利を手に入れたという、サクセスストーリー。
映画『日常対話』は、そんなイメージとは異なるもう一つの現実を見せてくれる。華やかなLGBT文化やプライドパレードとは無縁の台湾の田舎に住む、美しくも格好よくもない、むしろ地味でダサい六十代のレズビアン。煙草を吹かし、賭け事に興じ、女をたらすのが上手で、道教の儀式を生業とする彼女の姿を、娘は14年間にわたってカメラに収めていく。映画を撮り、母と対話をすることで、娘は和解を試みる――母と、そして虐待を受けていた自分自身の過去と。
今回のプロジェクトの対象となる『我和我的T媽媽(同性愛母と私の記録・仮)』という書籍は、映画『日常対話』では伝えきれなかったことを言葉で補完する、いわばドキュメンタリーの完全版だ。女性大統領、天才IT大臣、同性婚法制化、優れたコロナ対策――近年の人権重視の先進国・台湾のイメージとは違う、もう一つの台湾の実相が、この本、そして映画から見えてくるはず。まだ不寛容だった古い時代を生き抜いた母と娘の物語は、今の日本を生きる人たちに多くのヒントを与えてくれると、私は信じています。
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李琴峰(り・ことみ)
作家・日中翻訳家。1989年台湾生まれ。2013年来日。2017年、初めて日本語で書いた小説『独り舞』(講談社)で群像新人文学賞優秀作を受賞し、作家デビュー。2019年、『五つ数えれば三日月が』(文藝春秋)で芥川龍之介賞と野間文芸新人賞のダブル候補となる。自身の作品を中国語に訳したり、日台のメディアや文芸誌で執筆したりなど、言語と地域を跨がって活動している。女性、国籍、言語、セクシュアリティの問題系を重層的に織り込む作品群が特徴。近刊『ポラリスが降り注ぐ夜』(筑摩書房)、『星月夜(ほしつきよる)』(集英社)。
『星月夜』著者:李 琴峰(集英社)
家族、政治、民族、言語、セクシュアリティー。
居場所を探し続ける彼女たちが辿り着く先は──。
ISBN:978-4-08-771719-8
定価:本体1,500円+税
https://www.bungei.shueisha.co.jp/shinkan/hoshitsukiyoru/