みなさん、こんにちは! 原正人と申します。フランス語圏のマンガ“バンド・デシネ”を中心に翻訳の仕事をしつつ、サウザンブックスのレーベル“サウザンコミックス”の編集主幹もさせていただいています。
僕は昨年11月から今年2月にかけて、ダヴィッド・プリュドムの『レベティコ』というバンド・デシネ(フランス語圏のマンガ)を翻訳出版するクラウドファンディングの発起人を務め、みなさんのご支援のおかげで無事プロジェクトを成立させることができました。『レベティコ』はまもなくサウザンブックスの“サウザンコミックス”レーベル第1弾として出版されます。
同じサウザンブックスでは現在、loneliness booksの潟見陽さんが発起人を務め、野原くろさんのマンガ『キミのセナカ』のクラウドファンディングが行われています。
このマンガは、まず野原くろさんの短編がベースにあって、韓国の出版社6699pressの依頼でその続編が描かれ、さらにそれを膨らませる形で、日本人マンガ家のマンガであるにもかかわらず、韓国で最初に単行本として出版されたとのこと。それが台湾とフランスでも出版され、今回ついに日本語版を出版すべく、クラウドファンディングが行われているわけです。
僕が発起人を務めた『レベティコ』もそうですが、さまざまな理由で日本語では手軽に読めない優れたマンガが、クラウドファンディングという手段を通じて皆さんの共感を集め、皆さんに協力していただく形で日本で出版できるのは、本当にすばらしいことだと思います。それが海外で評価された日本人作家の作品なのであれば、なおさらでしょう。
日本人のマンガ家さんが国境を飛び越え海外でお仕事をするのは、今やそれほど珍しいことではありません。フランスでは寺田亨さん、高橋光さん、オオシマヒロユキさん、田村吉康さん、エルド吉水さんなどなど、さまざまなマンガ家さんたちがオリジナル作品を発表していますし、アメリカでもグリヒルさん、タケダサナさんといった作家さんたちが大活躍しています。もちろん逆に、Boichiさん、ウィスット・ポンニミットさん、オーサ・イェークストロムさんなど、海外の作家さんが日本で活躍しているケースもたくさんあります。
おそらくマンガがグローバルな言語だからこそ、こうした例が相次いでいるのでしょう。とはいえ、ある国の出版社がわざわざ外国人作家と仕事をするからには、そこに自国の作家にはない独自の魅力を見出してもいるはずです。韓国の気鋭の出版社6699pressが野原くろという作家に何を見出し、『キミのセナカ』という単行本を出版したのか、非常に気になります。
このプロジェクトが無事成立して、『キミのセナカ』を日本語で読める日が来るのを楽しみにしています!
サウザンコミックス編集主幹 原 正人
原 正人(はら・まさと)
1974年、静岡県生まれ。翻訳家。フレデリック・ペータース『青い薬』(青土社)、トニー・ヴァレント『ラディアン』(飛鳥新社)、バスティアン・ヴィヴェス『年上のひと』(リイド社)、グカ・ハン『砂漠が街に入りこんだ日』(リトルモア)など訳書多数。監修に『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』(玄光社)がある。サウザンコミックス第1弾ダヴィッド・プリュドム『レベティコ』(サウザンブックス)がまもなく出版される予定。
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