image

世界のマンガの翻訳出版レーベル・サウザンコミックス第一弾!
傑作バンド・デシネ『Rébétiko』(レベティコ)を翻訳出版したい!

東洋大学で行われたイベント「レベティコ―東と西のはざまで」に行ってきました

皆さん、ご無沙汰しております! サウザンコミックス編集主幹の原正人です。

去る12月8日(木)に東京の東洋大学で「レベティコ―東と西のはざまで」というレベティコをテーマにしたイベントが行われました。サウザンブックス社の古賀さんと一緒に参加してきましたので、以下に簡単にレポートしたいと思います。

その前に、サウザンコミックスでは、第6弾となるデイヴィッド・マッズケリ『アステリオス・ポリプ』翻訳出版クラウドファンディングを12月15日(木)まで行っています。既に目標金額に到達し、日本語訳が出版されることは確定していて、お得な価格で本を予約購入し、今回限りの特典を入手できるまたとない機会となっています。よかったらぜひサイトをご覧いただき、面白そうだと思ったら、ぜひご参加ください。それにしても、ダヴィッド・プリュドム『レベティコ―雑草の歌』から始まったサウザンコミックスが第6弾まできて、デイヴィッド・マッズケリ『アステリオス・ポリプ』のような、世界マンガ的にも重要な作品を翻訳出版できるとは感無量です。来春には第5弾パヴェル・チェフ『ペピーク・ストジェハの大冒険』の完成も予定しています。どうかこれからもサウザンコミックスの挑戦を見守っていただけるとうれしいです。
 

残り2日!お得なクラファン期間をお見逃しなくです〜!

さて、気を取り直して、「レベティコ―東と西のはざまで」のレポートをしていきましょう。そもそもこのイベントは、松山大学教授・黒田晴之さんが代表を務める科研費基盤研究「新移民音楽の受容とフォーク音楽との関係を、音楽言説の観点から検討する」の一環として行われたものです。約3時間と長丁場のイベントだったのですが、第1部が講演、第2部がラウンドテーブル、第3部がコンサートという3部構成になっていて、まずはレベティコという音楽について歴史や背景を学んだ上で、実際にその音楽を聴くというとても贅沢な体験を味わうことができました。

 

イベント会場の様子

第1部では3つの講演がなされました。東洋大学教授でギリシア近現代史を研究されている村田奈々子さんによる「レベティコとギリシア人の歴史」、松山大学教授でドイツ文学とユダヤ文化を研究されている黒田晴之さんによる「「レベティコ」とはなにか?」、そして、京都大学特任准教授でオスマン朝宗教と文化史を研究されている今松泰さんによる「「トルコ」における「レベティコ」」。村田さんの講演では、1832年の独立以降、ギリシャが近代化し、ナショナリズムが台頭していく過程でレベティコが誕生した経緯が、黒田さんの講演では、ディアスポラ(離散)の音楽であるレベティコの起源と発展が、今松さんの講演では、ギリシャの隣国でレベティコ誕生にも大いに関わることになったトルコにおけるレベティコの受容が、それぞれ詳しく論じられました。いずれも、できることならダヴィッド・プリュドムの『レベティコ―雑草の歌』を翻訳する前にぜひ聞いておきたかった、すばらしい講演でした。

続いて、ラウンドテーブルでは、オーストラリアを拠点に活躍するGreek FringeのメンバーであるCon KalamarasさんとChristina Bacchiellaさん、そして、ギリシャのアテネを拠点に活躍するバンドRebetienのメンバーであるFotis Vergopoulosさんに、それぞれの生い立ちとレベティコとの出会いからレベティコの定義に至るまでさまざまな質問が向けられました。レベティコはもともと20世紀初頭のギリシャに誕生した音楽ですが、今回いらした3人のミュージシャンはいずれもオーストラリアにゆかりのある方々です。オーストラリアは移民の多い多文化国家として知られていて、ギリシャ系の移民も多く、だからこそレベティコが定着しているのだそうですが、オーストラリアのギリシャ系の人々にとってレベティコとは?といった質問も飛びました。また、タクシームを始め、レベティコ特有の演奏の実演も行われました。

 

左からChristina Bacchiellaさん、Fotis Vergopoulosさん、Con Kalamarasさん

最後のコンサートでは、Con Kalamarasさん、Christina Bacchiellaさん、Fotis Vergopoulosさんの3人が、レベティコの名曲をたくさん演奏してくれました(10曲ほどだったでしょうか)。もちろん『レベティコ―雑草の歌』の主人公たち、マルコス・ヴァンヴァカリスやヨルゴス・バティスの曲も含まれていました(例えば、これとか)。これを録音ではなく、ライブで聴けるなんて(マルコスとレコード会社の関係者とのやりとりを思い出してください)! 現地でなければなかなか聴くことのできないすばらしい音楽に身を委ね、100年ほど昔のギリシャに思いを馳せつつ、しばし至福の時を過ごしました。

ちなみに今回のイベントを取り仕切っておられた黒田晴之さんの翻訳で、I・ゼレポス『ギリシャの音楽、レベティコ ある下層文化の履歴』という本が風響社から年明けに発売されるとのこと。『レベティコ―雑草の歌』でレベティコという音楽に興味を持たれた方はぜひチェックしてください。

 

I・ゼレポス『ギリシャの音楽、レベティコ ある下層文化の履歴』
(黒田晴之訳、風響社、2023年発売予定)

2022/12/13 13:51