image

世界のマンガの翻訳出版レーベル・サウザンコミックス第一弾!
傑作バンド・デシネ『Rébétiko』(レベティコ)を翻訳出版したい!

マンガ家永美太郎さんにプロジェクト応援インタビュー!

大正12年(1923年)の関東大震災直後の大阪を舞台に、川口松太郎を始めとする実在の文士たちが雑誌『苦楽』の創刊をめぐって奮闘するさまを描いた『エコール・ド・プラトーン』(torch comics)というマンガがあります。実在のアーティストを主人公にした歴史もの(時代も結構近い!)という意味では『レベティコ』にも通ずるこの作品の作者は、永美太郎さん。本作が長編デビューの注目の若手マンガ家です。実は永美さんはかなりの海外マンガ通で、これまでにさまざまな海外マンガを読んでいて、この『レベティコ』プロジェクトを熱烈に応援してくださっています。ということで、永美さんに一問一答形式でインタビューしました!
 


Q1:永美さんはいつ頃どうやって海外マンガと出会ったのですか?

私の世代は幼いころから思春期にかけて、トイフィギアブームあったり、アニメーションや映画(ミュータント忍者タートルズやX-MEN)やゲーム(マーヴル・スーパーヒーローズ)などのアメコミ原作のものが流行っていた時代というのもあり、漫画が好きだと自覚して本格的に数を読み始めた思春期のころ、アメコミやベーデーは当然の様にもう読むべきものとして選択肢に入っていました。その頃は美大受験に失敗して浪人生をして時間に余裕があったので、ジュンク堂の大阪本店や梅田のまんだらけに足しげく通って、その時分は翻訳点数も多くなかったので買えそうなものは粗方買っていました。それ以外には大学二回生の時に読んだ小田切博著『戦争はいかに「マンガ」を変えるか―アメリカンコミックスの変貌』にも非常に感銘を受けた記憶があります。


Q2:特にお好きな作品があれば教えてください。

アート・スピーゲルマン『マウス―アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語』
戦争・歴史・父と子・すべての要素が混然一体となって物語に編み込まれていてとてもシリアスなタッチなのに登場人物を動物で描く様な漫画的な飛躍があって読む人を選ばない力がある。



ヴェラ・ブロスゴル『Anya’s Ghost』
絵が大変可愛い。作者はディズニーの元アニメータなのでアメコミやオルタナティブコミックとも違うカートゥーンタッチではあるけど、くどくない絵柄が思春期的な題材にも非常マッチしていて好みです。



アラン・ムーア『フロム・ヘル』
とにかくテキストの量が多くて、この作品を読んでいる時に少女漫画を読み始めた頃に初期大島弓子作品を読んでいて感じた、テキストの洪水に身を委ねている様なアシッドな感覚を思いだしました。テキストの魔術師、大アラン・ムーア!



ダビッド・ベー『大発作』
禍々しい呪術的な絵が鬱屈した孤独な少年の物語と非常にマッチしていて、心の奥を爪を立てて撫でている様な、痛々しい感覚と共に読めるところが好きです。


 

Q3:永美さんにとって海外マンガの魅力とはどのようなものでしょう? それは日本のマンガの魅力とは異なるのでしょうか?

私は特に日本と海外の作品を分けて考えることはしないかもしれません。一口に日本の漫画といってもあらゆるセグメントでジャンルが分かれていて、それぞれにローカルルールがあり且つ時代によってそれらも刻々と変化し各々に魅力があります。しかし当然好きな作品から影響を受けることはありますので、それが海外作家の作品からということももちろんあります。直接的な参考でいうと、私の場合漫画というか20年代のアメリカやフランスのイラストレーションの中にあるファッションやモードといった時代の雰囲気を絵にすることの手つき、みたいなものを参考にすることが多いです。


Q4:『エコール・ド・プラトーン』第1巻のあとがきマンガに、いつか憧れのマンガ家たちと同じように歴史ものに挑戦したいと思っていたということが書かれていますね。永美さんにとって歴史マンガの魅力とはなんでしょう?

今の時代(場所)とは違う人々の生活が、私の生活の延長と同じ所にある様に読むことが出来る作品に出合った時に、とても普遍的な人々の営みの中に私自身がいるのだという視点が獲得でき、そこが一番の魅力だと感じています。


Q5:『エコール・ド・プラトーン』では、おそらく一般にはあまり知られていないであろうプラトン社の『苦楽』という雑誌を取り上げ、そこに集った文士たちの群像劇に挑戦していらっしゃいます。どうしてこのテーマを扱おうと思われたのでしょう?

一言で表すのは非常に難しいです。複合的な要素が絡み合ってこの漫画にたどり着きました。抽象的に言うならサブカルチャーを通じて日本の近代史を総括したいという思いからこの題材が選ばれました。このテーマは私自身まだまだ未消化な部分が多く、この先も続いていくだろうと思われます。


Q6:『レベティコ』もある意味歴史マンガと言っていいかと思いますが、永美さんのこの作品についての印象をお聞かせください。歴史マンガを描く作家の視点からグッとくるポイントはありましたか?

まず目を奪われたのは光の表現です。色彩が素晴らしくてシーンごとの光の変化、室内や室外、照明の有無、朝なのか昼なのか或は夜なのか。その微妙なグラデーションが非常に繊細に描かれています。光をもって時間を描いています。これはレベティコという音楽を題材にした漫画で、音楽という時間の芸術を表現するためのものだと思われます。私はそこに非常に感動を覚えました。また歴史漫画としてこの作品に個人的に共感するところは、登場人物たちの境遇やそこから生まれた文化です。大恐慌が世界を覆い戦争へと向かう暗闇の時代に、市民の中から生まれた芸術がレベティコだとするなら、私が『エコール・ド・プラトーン』で描かんとしたものは、正にそういった大衆芸術に他なりません。


Q7:この『レベティコ』の翻訳プロジェクトを皮切りに、サウザンコミックスというレーベルを立ち上げ、世界のさまざまなマンガを翻訳していけたらと考えています。まだ日本語には翻訳されていないけど、ぜひ翻訳してほしいという海外マンガがあれば、教えてください。

レベティコのプリュドムがパスカル・ラバテの原作を作画した『プラスチックのマリア様』は10年前に買って眺めてはみたものの、語学力の限界で読むことは叶わなかったので、いつかちゃんと読みたいです。



ヴェラ・ブロスゴルの新作『BE PREPARED』も持っているけど読めていない(語学力!)ので日本語で読めたらいいなあと思っています。


 

Q8:最後に、今後の予定について教えてください。

春に『エコール・ド・プラトーン』の2巻が出ます、ご興味あれば是非お手に取っていただければと思います。

 



永美太郎(ながみ・たろう)
84年12月8日生まれ。関西出身。元ラッパー。レペゼンは特になし。

 

★好評発売中!

書名:エコール・ド・プラトーン
著:永美太郎
発売年月:2019年1月
ISBN:9784845860111
発行:リイド社

こちらからも読めます!

 


永美太郎さんは日本のマンガ家さんですが、日本のマンガだけでなく、海外のマンガも積極的に参照しながら、独自の表現を追求されている姿が本当にすばらしいです。

日本のマンガは日本のマンガ、海外のマンガは海外のマンガと分けてしまうのではなく、それらが同じ価値で並べられ、混ざっていったらどんなにステキなことでしょう!

そんな未来のためにもぜひ『レベティコ』翻訳プロジェクトを成立させ、
サウザンコミックスを立ち上げたい!

クラウドファンディングは残りついに7日!
30%代でプロジェクト成立というところまで来ました!

皆さんのご支援、応援お待ちしております!

原正人

2020/02/10 14:28