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自閉症スペクトラム障害の男の子の自立の物語
『Kids Like Us(僕らのような子どもたち・仮)』を翻訳出版したい!

多様性教育に取り組む小学校教諭・星野俊樹さんから応援コメントをいただきました!

 昨年、WEBメディアのBuzzFeedの記事で、多様性教育に関する実践が取り上げられて大きな注目を集めた星野俊樹さん。普段は小学校教諭として多様性教育の実践に熱心に取り組み、その実践にかける想いや狙いなどを社会に向けて発信していくという、いわば現場で地道な実践を続けるアクティビストでもあります。
 発起人である林と星野さんは、常にこの「現場」と「実践」を大切にするアクティビストでありたいという気持ちで繋がってきたように思います。現場もターゲットも違えど、私たちには常に共通する問題意識がありました。それは、世の「普通はこうであるべき」をもう一度問い直してみようという想いでした。

そんな星野さんから、Kids Like Us の翻訳出版プロジェクトへの応援メッセージを頂きました!
 


 私は小学校教員で、ジェンダーや性の多様性についての教育実践をしています。学校という場は、とかく「普通」であることが前提になりがちで、「普通」から外れた子どもたちや、保護者と教員も含む大人たちの生きづらさに、一教員としてどう寄り添い、励まし、学校内の「普通」を相対化させられるか、日々考え試行錯誤する日々を送っています。

 私と林さんとの出会いは大学時代にさかのぼります。当時はそれほどお互いに付き合いもなく、すれ違えば軽く一言挨拶を交わすくらいの顔見知りの関係だった私たちでしたが、大学卒業後、20年ぶりにFacebookで再会を果たした林さんは、生きづらさや「普通」という言葉の欺瞞と闘う、知性と人間味あふれる女性になっていました。

 林さんと私は、性別・国籍・セクシュアリティ・職業・障害といった社会的なアイデンティティではなに一つ共通項がありません。しかし、信条や問題意識(Issue Awareness)では、互いに共鳴し合い、深く繋がりあっている実感があります。

 差別や偏見といった社会問題に対し、社会的なアイデンティティでつながり、当事者たちが一枚岩となってアプローチするやり方の困難さや限界が見えてきた今、私は共通の問題意識をもつ多様な人々がゆるやかに連帯しあうこと、つまりイシューでつながることに新たな可能性を感じています。

 私は20年の時を経て出会い直し、このプロジェクトをきっかけに、林さんとイシューで繋がることができました。このプロジェクトを通じて、多くの人たちが林さんとイシューで繋がることに喜びと希望を見出しています。

 この物語の主人公は、高機能自閉症(自閉症スペクトラム障害)の高校生の男の子、マーティン。いわゆる「普通」とは違う彼が恋をしたり、友情を育んだり、将来に思いを馳せる中で、自分を見つけていくお話です。

 高機能自閉症という、いわゆる「普通じゃない」属性を持つマーティンですが、一人の人間を形作る要素や属性の全てが「普通」の人間など存在するわけがなく、誰もがその人固有の「普通じゃなさ」を抱えて生きています。そのような意味で、マーティンは読者である私たち自身でもあるのかもしれません。

 この物語は、読者である私たちとマーティンとを結ぶ、隠された補助線の存在を仄めかす役割を果たすことでしょう。「普通」とは一体なんなのか。この問いの答えは、私たちとマーティンの間を結びつけるそれぞれの補助線の延長線上に、読者の数だけ存在するのかもしれません。その答えを見つけたい方、ぜひ翻訳・書籍化に力をお貸しください



photo: Kenji Kagawa

星野俊樹
桐朋小学校教諭。1977年兵庫県生まれ。2000年に慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、雑誌編集者として出版社に勤務する。働きながら通信課程で小学校教員免許を取得した後、東京都の教員として公立小学校に採用され、6年間勤務し退職。その後、京都大学大学院教育学研究科に進学し、2015年に修士課程を修了。同年、学園法人桐朋学園桐朋小学校の教員として着任。5〜6年生の担任をしていた時の実践「生と性の授業」が、2018年5月にBuzzFeedの記事で紹介され、大きな反響を呼んだ。

 

 実践に関する記事

「あの日の僕や君を救いたかった。「生と性」を小学生に教えた担任の2年間」(BuzzFeed)


「あきらめずに火を灯し続けること。学校で多様性を伝えるほっしーの横顔」(Palette)


「自分の心に正直に生きる」ということ〜「生と性の授業」に込められた思い〜」(次世代価値コンソーシアム)

 

 

2019/07/31 17:42