こんにちは、『Kids Like Us』発起人の林です。クラウドファンディング開始から37日、55%を達成いたしました。ご支援、情報拡散のご協力ありがとうございます。
本プロジェクトではリターンとして『Kids Like Us』日本語版1冊とGet in touch への寄付をセットにした「書籍+一般社団法人 Get in touchへの寄付」コースを設けており、ご好評いただいております。東ちづるさんが代表を務めるGet in Touchは、誰も排除しない、排除されない「まぜこぜの社会」を目指し、これまでさまざまな取り組みを行ってきました。今回は東さんに、Get in Touchの活動について、そして「まぜこぜの社会」について、詳しくお話しを伺うことができました。
林:まずはGet in Touchの活動内容について簡単にお聞かせください。
東さん:Get in Touchの理念は、誰も排除しない、されない「まぜこぜの社会」を目指すというところにあります。そのために、活動は大きく分けて二つ。様々な団体や福祉、企業、行政、家族、個人を繋げていくこと。制度を変えるには行政に働きかけなければいけない。あるいは企業とも繋がっていかなければならない。本気で社会を変えていくためには、各方面にアプローチしていかなければならないのです。ですから、Get in Touchがハブになって、どんどんつなげていっています。そして、もう一つはアートや音楽、舞台、映像といったエンターテインメント活動を企画開催し、いろとりどりの人たちが一緒に集まることのできる時間・空間・人間関係を作り出すこと。そこで、「違い」をハンディにするのではなく、アドバンテージにする機会を作っていきたいと考えています。なぜエンターテイメントなのかというと、講演やシンポジウムといったイベントには、常日頃から人権や福祉に関心の高い人たちが集まる傾向にあります。なので、普段はそういった活動に参加していない、そうした課題は他人ごとだと思っている人たちを巻き込んでいきたいのです。皆がまぜこぜに集まったり繋がったりすることで、「支援する/支援される」という分断をしない、浅く、広く、ゆるく、依存し合う関係を作っていきたいと思っています。
林:「浅く広くゆるく依存し合う」という言葉、とても深いですね。
東さん: 家族や福祉だけではなく、皆が浅く広くゆるくつながり合うことこそが、多様性社会だと思っています。「理解」するとか「知識」を持つとかはもちろん大切ですが、その人の「生きづらさ」の全てを理解する/知るということは難しいです。とにかくその場を共有する、共に時間を過ごす、そこで新しい人間関係を作っていく、「一緒にいる」ことで気づくことがたくさんあります。それが「浅く、広く、ゆるく依存し合う」ということにつながっていくのだと思います。その理念は私たちの団体名にこめられています。Get in Touchは「つながろうぜ」ぐらいの意味です。とにかく集まろう、そしてゆるくつながろう、そしてその後にKeep in Touch《連絡を取り合おうね》、という。
林:そもそもの設立のきっかけは何だったのでしょうか。
東さん:3・11の東日本大震災のときに、自閉症や、目や耳の不自由な人、車いすの人、LGBTsの人たちなど、普段から生きづらさを抱えている人たちが避難所で追いやられてしまう現状にショックを受けたことがきっかけです。例えば、自閉症のお子さんが避難所という普段と違う環境の中でパニックを起こしてしまって、怒鳴られたり、無理矢理静かにさせられたり、車いすユーザーがやんわりと退避させられているということがありました。社会が不安に陥った時に、普段から生きづらさを抱える人たちがますます追いつめられてしまうという現実を知ったのです。
そこで、活動仲間と、しっかりつながってお互いを活用しようと声をかけました。そしてその年の冬に、アメリカの自閉症支援団体Autism Speaksの働きかけで開催された「日米自閉症スペクトラム研究会議」で、「Get in Touch実行委員会」として障害のある作家のアート展と音楽ライヴイベントを開催しました。そこから、活動が拡大していき、その翌年法人化することになりました。
林:Get in Touchさんは「世界自閉症啓発デー」でも、いつも積極的に活動していらっしゃるイメージです。
東さん:世界自閉症啓発デーは国連で2007年に定められたもので、4月2日には世界中で自閉症を理解してもらうためのブルーイベントが行われます。日本でも東京タワーや通天閣などをライトアップする取組みが行われてはいたのですが、それがあまりニュースに登場することがありませんでした。
私たちは、世界自閉症啓発デーが日本で認知されるようになるためには、とにかくメディアに取り上げてもらうことが重要だと考えたのです。そして開催したのが”Warm Blue Day”というキャンペーンです。「とにかく青いものを身につけて集まりましょう」と、自閉症の団体だけではなく、見えない人、聞こえない人、ダウン症の人たち、いろんな団体の人たちに呼びかけて、ブルー感満載で一同に会したのです。それが本当に「まぜこぜ」でとても居心地が良かったのです。自閉症のお子さんがパニックを起こすことを心配していた親御さんもいらっしゃいましたが、結果的には一人もパニックを起こすことなく、笑顔でいられたのです。それはきっと、皆がウェルカムの場所だったからだと思います。
林:「楽しい」とか「ワクワクする」がモチベーションって大事ですよね。福祉関係のイベントってどうしてもそういうのが言いづらいものですが。
東さん:Get in Touchは主に、ワクワクウキウキするまぜこぜの空間、時間、人間関係をつくるイベントを開催しています。集客力もありますし。啓発というフレーズを使わないで気づいていくのがいいと思っています。
林:東さんの活動に対するそのエネルギーはどこから来ているのでしょうか。
東さん:仲間がいるから、そして、自分自身が生きづらいからです。
林:その「生きづらい」という言葉で考えるのが、やはりどうしても生きづらさを抱えた人たちは、こういうイベントになかなか気軽に足を運べないという面もあると思うのです。電車に乗るのが辛いとか、会場で新しい人に会うのが怖いとか。
東さん:様々な事情で来られない人のほうが圧倒的に多いと思います。
林:そういういわゆる「サイレントマジョリティ」が、Get in Touchの活動にどのような形で参加していくことが可能だと思われますか?
東さん:まず、Get in Touchでは映像の配信やイベントのネット中継などを積極的に行っています。学校教育用のDVD『自分が自分らしく生きるために』は、全国の小・中・高・特別支援校に約800枚無償配布できていて、1000校をめざしています。そして、映画『私はワタシ ~over the rainbow~』の配給も進行中です。こちらは、LGBTsの50人の言葉を紡いだドキュメンタリーです。生きづらさを感じながらも、自分らしく生きることを模索する魅力的な皆さんが登場します。
林:なるほど。配信やネット中継は嬉しいですね。東さんのお話をお聞きして、社会運動や社会活動は「ワクワクする」とか「楽しみたい」という動機が第一にきてもいいのだと再発見しました。「啓発」とか「理解」とかちょっと堅苦しい言葉はいったん横に置いておいて、とにかく楽しく集まろう、ムーブメントの始まりって実はそこだったりしますよね。素晴らしいです。
本プロジェクトでは、『Kids Like Us』の翻訳出版とGet in Touchさんの活動の両方を同時にご支援いただけるコースを設けました。幸いなことにたくさんの方に関心を持って頂けていて、本当にありがたいです。