こんにちは、サウザンブックスです。
いくつかの書店の翻訳を担当いただく予定であった天野健太郎さんが昨年11月にお亡くなり、その後、制作体制を整えて参りました。
翻訳については、プロジェクトの発起人でもある小島あつ子さんと翻訳者の黒木夏兒さんとのお二人に担当いただき、この度、一通りの翻訳が終わりましたことをお知らせいたします。
黒木夏兒さんからのコメント
本文の原稿は終わり、今は実際に本屋さんに行きたい気持ちでいっぱいです。これらの本屋さんに行って、本文の中で紹介されている本を買いたい。特に桃園にものすごく興味が湧いてきています。空港以外では家具の博物館に一度行ったことしかなく、あまりガイドでも取り上げられていない気がするのですが、今、私の中で桃園のイメージは「本屋さんの宝庫」です。そして雲林も行きたい。
本文中で紹介されている本、は勿論ネットでも買えるのですが、それをやるとこれらの「素敵な本屋さん」はなくなってしまうのだと、これは一人のオーナーの言葉。とても大事なことだと思います。今、日本でもどんどん実体店舗のある本屋さんが減ってしまっている。実体書店があるからこそできる「ついで」の出会いが消えてしまう。それはとてもとてもつまらないし、そして最終的に出版物の命を縮め、作品が生まれる機会をも奪ってしまうのだろうと怖くなってきます。
ただ、そう感じると同時に、そういう時代の中で敢えて本屋さんを開業したこれらのオーナーたちに、この訳を通じてとてもたくさんの勇気を貰った気がしています。せっかくの猪年だし、やりたいことに猪突猛進にしてしまえ。
あ、でもその前にクリスマス正月がほぼなかったので、せめて元宵節でちょっと春節気分を味わい、遅ればせまくりの年賀状(?)を書いて恩師たちに近況報告と本の宣伝をば。
黒木夏兒(くろきなつこ)
日本女子大学国語国文科卒業、専攻は江戸・中世文学。出版者に編集者として勤務中、2007年から中国語学習開始。2010年に退職後、慶応大学外国語学校に入学、卒業。中日翻訳開始は2009年から。台湾ドラマ企画資料、台湾BL同人誌、台湾BL小説の出版者向けサンプルなど翻訳の後、2013年に台湾BL小説『ロスト・コントロール〜虚無仮説〜㈵・㈼』(フロンティアワークス出版)で翻訳デビュー。2016年、台湾映画『太陽の子』で字幕翻訳を担当。他に、資料段階でのアニメ・ゲーム等の脚本翻訳多数。
小島あつ子さんからのコメント
プロジェクト発起人の小島です。『書店本事』中、担当パートの翻訳を終えることが出来たのは、ちょうど台湾が賑々しく春節を迎えた頃のことでした。皆さまのおかげでクラウドファンディングが目標達成に終わった昨年9月後半は、歓びも束の間、今度は本作りという自分にとって全く未知の領域に突入するプレッシャーをじわじわ感じていました。ですが、その重苦しさは、台湾の書店主たちの物語を原語から日本語にしていく中で、いつしかすっかり消えてしまいました。ひとりひとりの店主とじっくり向き合い、そこから枝葉のように広がる世界に触れる事の出来たこの冬は、何物にも代えがたい貴重で至福な時間となりました。原文およそ4000字前後で書かれた台湾の市井の人の個人的なドラマは、書店を創業するに至ったきっかけや、それまでの生い立ち、人生観や価値観、影響を受けた人や本との出会い、経営の楽しさ、そして苦しみや迷いなどが語られ、そして時々は、そこに台湾の複雑な歴史や今の社会を垣間見る面白さが加わります。翻訳を通して、改めて各エピソードの内容の自由さや多様さを実感しました。いずれも読み応えのある内容です。本の完成まであともう少し、どうぞ楽しみにお待ちください!
小島あつ子(こじまあつこ)
『書店本事』翻訳出版プロジェクトの発起人。台湾への尽きせぬ興味と台湾映画好きが高じて、自主上映活動を行う「台湾映画同好会」を2015年に立ち上げる。これまでに6回、日本未配給/権利切れ映画の自主上映会を開催。元図書館司書=「本好き」と思われがちだが、その実「本に囲まれた静謐な空間」が好き。
また、お届けの予定時期については、当初は4月を予定しておりましたが、これから、編集・デザイン・印刷・製本工程と進めて参りますので、5月中旬以降と変更させていただきたく存じております。お届けの時期が確定しましたら、改めてご報告致します。
引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。