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出版不況にめげない!台湾の活力あふれる「独立書店」をまとめた
『書店本事 個性的な台湾書店主43のストーリー』を翻訳出版したい!

台湾映画研究家の稲見公仁子さんに、映像作品『書店裡的影像詩』の監督・侯季然(ホウ・チーラン)についてコラムを執筆いただきました!

こんにちは、サウザンブックスです。
台湾映画研究家で著作物も多い稲見公仁子さんに、『書店本事』の兄弟作でもある映像作品『書店裡的影像詩』の監督・侯季然(ホウ・チーラン)についてコラムを執筆いただきました!
 


侯季然のこと
Text by稲見公仁子

4年前、台湾ドラマの名プロデューサー蘇麗媚(スー・リーメイ)が書店を扱ったドラマ「巷弄裡的那家書店」(日本未公開)で侯季然(ホウ・チーラン)をディレクターに起用したドキュメンタリーコーナー『書店裡的影像詩』を付けると聞いたとき、なんて贅沢なことを考えたんだろうと思った。
侯季然が台湾映画界で知られるようになったのは、2003年の台北電影節だろう。2003年に実験映画『星塵15749001』(日本未公開)で台北電影奬の百万首奬(グランプリ)を受賞した。まだ大不況の底で喘いでいた台湾映画界にあって彼は期待の新鋭のひとりになった。
公式初来日は、2005年の東京国際映画祭(TIFF)――この年のTIFFは“台湾電影ルネッサンス”と銘打った台湾映画特集があり、11本の台湾映画が上映された。この前年あたりから台湾映画界は復調の兆しを見せていて、そんななかで組まれた特集のなかに侯季然のドキュメンタリー『台湾黒電影』(原題:台湾黑電影)があった。
『台湾黒電影』は、それまで映画史的には黙殺に近い扱いを受けてきた社会写実路線(1979~82)の娯楽映画を題材にした、1時間に満たない作品だった。題材が題材であったせいか、登壇した侯季然は若い研究者といった雰囲気を醸し出していた。
それから5年経った2010年、彼は劇映画の監督として再びTIFFに現れた。李安(アン・リー)・李崗(ガン・リー)兄弟の新進監督バックアッププロジェクト“推手計画”のメンバーに選ばれ、オムニバス映画『ジュリエット』(朱麗葉)の監督のひとりとしての来日だった。担当したのは第1話をで、足の不自由な女性(演じるはビビアン・スー!)の哀しい恋物語だったが、個人的に強く印象に残ったのは70年代という時代性。そこに共産主義に傾倒する学生が登場することが何より衝撃的だった。TIFFでの来日時にインタビューの時間がもらえたので、そのあたりのことを監督に訊いたところ、こんな言葉が返ってきた。
「映画にせよ他の作品にせよ、僕は台湾の感覚・時代意識を強く反映させたい。そういう時代への意識を持っています」
このときは、70年代から続く台湾人の意識の流れに言及していたのだが、描き方としては歴史とか理論ではなく平凡な人をポイントにして、その人の生き方を通じて時代を描く手法をとったと述べていた。
この後、彼は2011年の金馬影展オープニングフィルム『10+10』(日本未公開)、『狼が羊に恋をするとき』(南方小羊牧場、12、日本公開待機中)、オムニバス『台北工廠2』(14、日本未公開)を経て『書店裡的影像詩』を手掛けることになる。先にインタビューした際の“台湾の感覚・時代意識”というフレーズや姿勢を考えると、彼が書店を撮ったのもさもありなん。『台湾黒電影』にも、後に2016年のTIFFで上映した『四十年』も同様に台湾の意識を伝えようとしている。彼は『書店裡的影像詩』の書店の店舗のそのなかで、どんな台湾を見せてくれるのだろうか。そして、それが【書店本事】という一冊の本と一緒になったときに、どんな風景に変わるのか、とても楽しみだ。

 


映画監督・侯季然(ホウ・チーラン)によるドキュメンタリー映像作品『書店裡的影像詩』

以下、写真提供:小島あつ子

「狼が羊に恋をするとき」SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2013上映時に会場で撮影



小島個人所有のDVD



「四十年」第29回東京国際映画祭上映時に会場で撮影

 

稲見公仁子(いなみ・くにこ)Kuniko Inami

台湾映画研究家。執筆参加した書籍に「中華電影データブック 完全保存版」(キネマ旬報社、監修も)、「アジア映画の森―新世紀の映画地図」(作品社)、「台湾を知るための60章」(明石書店)、「旅の賢人たちがつくった台湾旅行最強ナビ」(辰巳出版)等がある。06年より18年春まで「な~るほど・ザ・台湾」(美好寶島)で台湾ドラマ等の紹介コーナーを担当。台湾影視研究所として台湾映画を軸とした講座も企画している。


※「な~るほど・ザ・台湾」は台湾で編集発行されていた日本語の雑誌で、2018年4月号をもって休刊した。

 



いまの達成率は17%、支援者数はもうすぐ100名です。
プロジェクト終了まで残り40日ほどとなりました。

成立、そして日本語版の発行をめざして頑張って参ります!
引き続き、情報拡散へのお力添えのほど、どうぞ宜しくお願い申し上げます!

2018/08/07 16:22