こんにちは、発起人の小島です。プロジェクト開始から3週間が経過し、本当に嬉しいことに、すでに50名近くの方にクラウドファンディングにご参加いただいています。が、あと2か月ちょっとあるとはいえ、目標の200万円まではまだまだ遠い・・・改めて気づいたのが、クラウドファンディングで本の予約を募ることの難しさです。あたりまえですが、「読んでみて気に入ったら買ってね」というわけにはいきません(それでは遅い)。日本語版を出すためにこの本と映像集に興味を持っていただき、残り92%を集めるという課題が、今年の夏休みの宿題となりました。
宿題のヘビーさにちょっとテンションが下がりそうになったので、気分転換に『書店本事』の日本語翻訳版が「書店店頭に平積みされ、あの梅原潤一さんによる手書きPOPが添えられている」の図を妄想して、ひとりニヤニヤしてみました。我ながらずうずうしい。でもいいんです、妄想は自由なのだ!
『書店本事』は書店が舞台のテレビドラマの脚本のために、製作スタッフが台湾各地の書店を取材したことがきっかけで生まれました。取材の結果、九州ほどの大きさの島には、独立書店と呼ばれる個人経営の書店や古書店がそれこそ星の数ほど存在して(原題サブタイトルは「地図上にきらめく読書の星空」)、ドラマの製作者たちはそこで独立書店の文化が花開きつつあることに気づきます。そしてその豊かさやユニークさに意義を見出し、世の中に伝えるために、もう一度映像と文章という異なる手段で独立書店にアプローチし直したのでした。
こうして当初予定にはなかったけれど、急遽作られたのが、書籍『書店本事』と映像集『書店裡的影像詩』です。でもなぜ独立書店にアプローチするのに、わざわざふたつの手段を用いたのでしょうか。
例えばプロジェクトサイトで冒頭部分の試訳した「雑談をこよなく愛する書店:水準書局」。
“・・・店を訪れたことのある人なら、店主の曾大福(ツォン・ダーフー)が本を「熱烈におススメ」するのが好きで、本の値段がどこまで安くなるかは彼の気分で決まり、そして会計時に本のカバーに店主の手により「水準書局」の印が押される、ということに気付くだろう。・・・”
そしてこちらは『書店裡的影像詩』の「水準書局」です。(中国語字幕版)
映像では、言葉はわからなくても、店主のツォンさんのおしゃべりに困惑気味な若いお客さんの表情が見て取れて、お楽しみいただけるかと思いますが、試訳にある、なぜそんなに本を推すのか、値引き率が変動するのか、そして印を押すのか、についての説明はありません。小学生の頃から新聞配達で家計を助け、教科書代に困った医専時代を経て軍医になった苦労人のツォンさん。自身の体験から「文化の礎である本は、誰もが買えなければならない」と考え、手が届きやすいように値引きをして販売する一方で、ある方法で経営のバランスを上手に取っています。
もうひとつ。田植え前の稲田でジャンボタニシを駆除するシーンから始まるのは、『書店裡的影像詩』の「小間書菜」です。(中国語字幕版)
書店ドキュメンタリーなのにいきなり田んぼ?というこちらの書店は、自然豊かな台湾東部・宜蘭の、築60年以上の元穀物倉庫をリノベーションしたお店です。「小間書菜」はいらなくなった本を持って行くと、環境に優しい農法で生産された米や新鮮な野菜と交換してくれる古書店で、店主の彭(ポン)さんは台北生まれの都会人。サラリーマンの夫と台中で暮らしていましたが、あるきっかけで田舎に移住し、一見風変わりな書店を開くことになりました。
『書店本事』の面白さは「人」、
そして「書店」+「○○」の組み合わせの意外性にアリ!
そもそものドラマのためのエピソード集めは、書店の人間模様を描くためだったわけで、おそらく取材対象も店そのものではなく、書店の中にいる「人」に焦点を当てたものだったのでしょう。「人」のストーリーに独立書店の文化を見出したこともあって、映像と文章によって再録された主役はやはり「人」でした。
一般的な書店ガイドブックや旅行ガイドに掲載されているお店紹介は、そこが訪れる価値のある場所であることを伝えるために、「場所」がメインで情報が集められていると思います。一方で『書店本事』は徹底して「人」に重点を置き、さらに「書店」+「○○」というその人でなければ生み出すことはなかったであろう意外性に溢れた組み合わせを、背景も含めて活き活きと描いています。
さらに本だけではなかなか想像しづらい店主の人柄や、実際のお店の様子を、3分間という短い映像を通して感じ取ることができるようになっていて、映像には収まりきれない店主の人物像や書店の成り立ちなど詳細な人間ドラマは本から深く読み取ることができます。台湾では『書店裡的影像詩』がインターネット上に全て公開され、書籍『書店本事』の各書店のページに掲載されたQRコードをスマホやタブレットで読み取ると、そのまま映像にリンクするようになっていました。
『書店本事』と『書店裡的影像詩』には、古くは台湾戒厳令下の1950年代から『書店本事』が出版される直前の2013年に開業した、台湾全土40余りの書店が収録されています。書店を営む「人」から広がる、四十人四十色のストーリーと「書店」+「○○」は、見ごたえ/読み応えがあります。さらに、読み手のおかれた立場や興味の対象など様々な要件によって、いろんな物事の捉え方や価値観を、提示してくれると思います。
今回ご紹介した「水準書局」と「小間書菜」はほんの一例にすぎません。ネット書店や大型チェーン書店によるし烈な価格競争に、実店舗で挑む「水準書局」のツォンさんや、農作物と本の物々交換というユニークな方法を実践している「小間書菜」のポンさんのストーリーを含め、『書店本事』と『書店裡的影像詩』をぜひ日本語版でお届けしなければと、夏休みを前に(いや、オトナなので夏休みはないのですけどね。)心に誓うのでした。
・・・さて、いかがでしたでしょうか?ご支援くださっている皆さまも、ぜひ書店平台に『書店本事』が積まれているところを妄想してみて下さい。
そのためにも、ぜひの「夏休みの宿題」へのご参加およびお手伝い(つまり情報拡散のご協力)をお願いしたく!
そして皆さまがもしも書店員だったら・・・本にどんなPOPを添えますか?
プロジェクト成立まで、どうぞ宜しくお願い致します。