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日本初のレズビアンマザー絵本を誕生させたい!
絵本『In Our Mothers’ House (ママたちの家で・仮)』を翻訳出版して
全国の学校や図書館に届けたい!

一般社団法人レインボーフォスターケア代表理事・藤めぐみさんインタビュー

求めているのは自分を見てくれているおとな
それがレズビアンでもゲイでもそんなことを子どもは気にしない


昨年、大阪市でゲイ・カップルが里親として認められたというニュースが話題になった。このケースを後押ししたのが、同性カップルの里親認定を推進する取り組みをしている一般社団法人レインボーフォスターケア。その代表である藤めぐみさんに話を聞いた。いま同性カップルを里親として認めるべき理由とは−−−。

 


■若いセクシュアルマイノリティが未来を思い描けるように

宇田川しい  同性カップルがなかなか里親認定されないという問題の背後には、家族というのは女性の母親と男性の父親がいなければならないという固定観念があると思います。でも現実にはレズビアン・カップルで子育している人はけっして少なくないんです。『In Our Mothers’ House』は、レズビアン・カップルと養子縁組がテーマの1冊ですが、こんな絵本をみんなに読んでもらえれば、多様な家族がいるということが分かって偏見もなくなっていくと思うんですけどね。

藤めぐみ 私もアメリカに行って子育てしているレズビアン・カップルに話を聞いて、日本のメディアに載せてもらったりしています。ただ、そういう話をすると「海外の話でしょ」って言われちゃうこともある。どうしてアメリカの話と切って捨てられるのか私には理解できません。同じ人間の営みだし、同じ先進国のはずですし。

宇田川 『In Our Mothers’ House』もそうなんですよ。「いい話だけどアメリカの話だよね」って。いや、そんなことない。可視化されていないだけで、子どもを育てているレズビアン・カップルなんて日本にも大勢いるんですよ。

この絵本を読んでいてとても興味深かったのは、“近隣に住む意地悪なおばさん”の描かれ方ですね。レズビアン・カップルの家庭に差別心をむき出しにしてくる女性ですが、多様性を認めない彼女のほうこそ孤立しているように見える。彼女だけが憎しみのこもった表情をしていて孤独感に溢れているんですよ。

宇田川 差別する人の内面的な問題をうかがわせますよね。

シアトルで里親をしているレズビアン・カップルに話を聞いたら、やはり偏見を持つ人はいるというんですね。ただ地域の人たちと交流するうちにそれが消えていったと。周囲はまずレズビアン・カップルという認識から入るけど、次第にたんにヒューマンビーイングとして見てくれるようになったと。

宇田川 ヒューマンビーイングという視点に立つならヘテロカップルと違いはないですね。レズビアンマザーの家庭が特別なものではなく、どこにでもあるような家庭なんだということを、絵本を通して知ってもらいたいです。

ある児童養護施設でレズビアンの女の子が「自分は将来、結婚できないし子どもも持てない」と思って悩んでいたそうなんですね。施設の職員が「ゲイ・カップルの里親も認められたし、そういう家族もいるんだよ」と話したらその子はとても安心したそうです。『In Our Mothers’ House』のような絵本を見ることでまだ若いセクシャルマイノリティがいろんな将来を思い描けるようになることはたいせつだと思います。


■LGBTと里親家庭に共通するカミングアウトの問題

宇田川 藤さんがLGBTの里親を後押しする活動をはじめたきっかけはなんだったのですか? 

 きっかけは里親家庭を増やす活動をしている人たちと知り合ったことでした。その人たちと話して気づいたのは、里親も里子もマイノリティでありLGBTと同じような問題を抱えているということなんです。たとえば周囲に里親、里子であることを隠していて、周りにいつ打ち明けるかとか、里親家庭であることを知られないために、周囲にどんなふうに説明をしているかというような話題が出てくる。

宇田川 レズビアンやゲイがカミングアウトするかどうか悩むのと似ていますね。

わたしからしたら里親を引き受けるというのは立派だし、なぜ隠す必要があるのかと思ったのですが、「やっぱりまだ偏見がある」というんですね。非常に差別的なひどいことを言われることもあるそうなんです。それは偏見によるもので、現状が知られていないから出てくるような言葉なんですよ。

宇田川 日本の社会的養護(※)についての認識は諸外国に比べるとまだまだ立ち遅れている気がします。

最近でこそ里親で顔を出して実情を訴える方も出てきましたが、差別や偏見を恐れてなかなか顔を出せない現状があり、そのことがまた理解促進を妨げているという悪循環はありますね。

それと里親の場合は、多くの場合、実親がいますから、そちらのプライバシーの問題もあって顔を出せない。そんなこともあってなかなか実態が知られにくいんですね。子どもに向けられる目も厳しいです。児童養護施設の建設計画があると反対運動が起きたりする。「そういう子は悪い子だ」と決めつけている人がいるんです。

宇田川 ひどい話ですね。

悪気はなくても、児童養護施設の子どもや里親家庭で育っている子ども、
養子縁組した子どもを傷つけていることもあります。
小学校で「お母さんに生まれた時の話を聞きましょう」なんていう授業がありますよね。血縁のある親子を前提として学校ではそういうことをやらせるわけです。あるテレビ番組で養子の高校生が話していたのですが、小学校の時、赤ちゃんの頃からの写真を貼ってまとめる宿題があって、ネットで拾った赤ちゃんの写真を自分の写真として貼って提出したと。そこまで気持ちが追い込まれてしまう。学校や社会が、「いろんな家族がいるんだよ」というメッセージをもっと出すべきなんだと思います。

宇田川 児童養護施設では、セクシュアルマイノリティの子どもはとくに困難を抱えてしまうという現状があるようですね。

大規模施設では複数人で入浴することが多く、個室がない施設もまだ多いです。セクシュアルマイノリティの子どもで修学旅行が嫌というケースは多いですが、施設ではそういう集団生活がずっと続くわけです。

こういった生活はセクシュアルマイノリティに関わらず、すべての子どもにとって負担でもあり、最近では施設が小規模化してシェアハウスのような個室があるタイプも増えています。同時に里親家庭も増やそうとしているわけです。LGBTの子どもにはLGBTの里親を、というふうには思いませんが、LGBTの子どもに理解のある里親が増えてほしいですね。

宇田川 レズビアン・カップルならレズビアンの子ども、ゲイ・カップルにはゲイの子どもというふうだと、経験からのアドバイスもしやすいと思いますが。

そう単純には言えないでしょうが、なにかしらアイデンティティをめぐる問題に直面したことのある大人やマイノリティ性のある大人などのほうがいいのかなとは思います。

宇田川 アメリカではセクシュアルマイノリティであることが分かったら、家を追い出されたというようなケースもあるようですね。

LGBTであることが分かったからというのではなく、ちょっと他の子とは違うという育てにくさがあって、それで親が育てられなくなるというケースもあります。さまざまな形でセクシュアリティの問題が複雑に絡み合っているのではないかなという気がしますね。



■法的には可能でも運用で排除される同性カップルの里親

宇田川 日本でも自治体によっては、同性カップルが里親になることが可能ですね。

本来、法律的にはなんの問題もないんです。だから、むしろこの活動をはじめたときに困ったくらいなんですよ。禁じている法律があるなら法改正を求めればいい。でも、法律ではなれるはずなのになれない。どこになにをお願いすればいいんだろうと思って戸惑いました。

宇田川 運用がおかしいわけですね。

興味を持った同性カップルが問い合わせの電話をしても、電話口でひどいことを言われて諦めるという話は聞きます。そもそも同性カップルは不可だと思い込んでいる当事者もいる。

宇田川 なんとなくそう思い込まされているという感じがします。

里親制度自体が知られていないという問題も大きいですけどね。自治体によってもさまざまですが、東京都の基準では夫婦が原則になっているような感じなんです。それで独身だとさらに条件がつく。同性カップルについてはなにも書かれていない。

宇田川 じゃあもし同性カップルが里子を迎えようと思ったら、独身として申請してその条件をクリアしなければいけないわけですね。

独身の場合の条件というのは1人で子育てするから必要なんであって、同性カップルは夫婦に準じていいはずなんですけどね。

宇田川 昨年、大阪市がゲイ・カップルを里親認定しました。法的になんの問題もないわけですから、意識を変えていけばいいだけですよね。

逆に言うと意識の問題なので、自治体職員に偏見があったらそれまでです。その報道があってからも里親になろうとして断られたという話は聞きます。ですから自治体がホームページ上で、同性カップルの里親を歓迎するメッセージをしっかり出すというような施策がほしいですね。そういったものがあれば窓口で断るということがなくなると思います。


■同性カップルを里親の社会的資源に

里親になる人の平均年齢ってけっこう高いんですよ。夫婦で子どもが欲しい場合はまず産もうとしますし、なかなか産めない場合は不妊治療をします。40歳を過ぎると治療を続けても妊娠できない可能性を考えて、里親についても考慮しはじめる。それで45歳くらいで里親になるというケースが多い。でも、将来的に何歳まで働けるかということなどを考慮すると、もう少し若い方がライフデザインにゆとりがもてると思うんです。実際に、児童相談所は若い里親希望者を歓迎しています。

宇田川 はじめから出産を考えていない、若いレズビアンやゲイのカップルが里親になることは歓迎すべきですね。

同性カップルの里親を断るというのは、1人の子どもから家庭を奪うということなんだと認識してほしいですね。異性カップル同様、里親の人的資源として考えるべきだと思うんです。

宇田川 北欧の一部にはレズビアン・カップルが人工授精をするときに、不妊治療という扱いで健康保険が適用される地域もありますね。日本では、まだ婚姻の平等も実現していませんが、将来的には家族を持つこと、子どもを持つことも当たり前の権利なんだと考えられるようになれば、ずいぶん違ってくるのではないでしょうか。

ただ、同性婚が実現してから子どものことという順番でなければいけないわけではないと思うんです。私がこの活動を始めた時、「里親制度は同性婚の次だよ」ってよく言われました。でも里親っていうのはシングルマザー、シングルファーザーでもなっている人はいる。それに年齢的にも高齢者と成人した親子で里親をしている場合もある。里親と実子がいる家庭もある。

さまざまなんですよ。つまり社会で子どもを育てるという概念に合致すればいいんです。里親家庭にもじつに多様性があるということを考えれば、同性婚の実現を待つ必要はないということが分かります。逆に、同性カップルの里親が増えて、さらに養子にできるようになれば、そこから子どものためにもやっぱり同性婚は必要だねという議論につながる可能性もありますね。

宇田川 「レズビアン・カップルやゲイ・カップルに育てられる子どもはかわいそう」という偏見がありますよね。ストレートだけでなく、レズビアンやゲイ当事者にさえそういう偏見を持っている人もいる。

親のセクシュアリティを気にする子どもが一体どれくらいいるのだろうか、と思います。児童養護施設などで子どもたちを見ていると、一番、子どもが気にしているのは、おとなが自分のことをちゃんと見てくれているかどうかです。児童養護施設の子どもは、運動会の時に居心地の悪い思いをするんです。親はみんな自分の子どもを見ていて、お昼も親子でお弁当を食べる。児童養護施設の子にはそれがないから辛いんですね。

だから、運動会を見に行ったり、お弁当を作って持っていくボランティアがあるんですよ。子どもはとてもよろこびます。子どもが気にかけているのは自分を見てくれている人がいるかどうかであって、それがレズビアンマザーであろうが、ゲイファーザーであろうが関係ない。家に帰ったら温かいご飯が用意されてるとか、そういうことが大切なんです。いろいろなケースを見てきた経験から親のセクシュアリティなんか関係ないと強く感じています。


※社会的養護 保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うこと。「子どもの最善の利益のために」と「社会全体で子どもを育む」を理念として行われる。里親や児童養護施設などの制度がある。


藤めぐみ(ふじ・めぐみ)
一般社団法人レインボーフォスターケア代表理事。インターナショナル・フォスター・ケア・アライアンス(IFCA)日本支部理事。1974年豪州・シドニー生まれ。大阪府育ち。大阪大学文学部卒業、関西大学法科大学院修了。衆議院議員公設秘書、自治体職員、中間支援組織スタッフなどを経験。2013年、LGBTと社会的養護の問題について考える団体「レインボーフォスターケア」を設立。自治体における「同性カップルの里親」の運用改善に取り組み、大阪市での同性カップル里親認定への道を開いた。

 

一般社団法人レインボーフォスターケア

2018/04/17 17:14