みなさん、こんにちは。私は、イタリア語(ときどき英語)の翻訳の仕事をしている栗原という者です。2020年から、イタリアコミック(イタリア語では「フメッティ」と言います)を日本語に翻訳する仕事にも取り組んでおり、その最初の仕事が、ほかでもない、ゼロカルカーレの『コバニ・コーリング』という作品でした。以後、同書を翻訳・刊行できたことには大きな満足を覚える一方で、ゼロカルカーレのコミックの日本への紹介が一冊にとどまっていることにかんしては、ずっともどかしい思いを抱いていました。
出版社への持ち込みは続けていましたが、海外コミックの企画はほんとうに通らない……そんななか、二宮大輔さんをはじめとする「京都ドーナッツクラブ」のメンバーが、著者の商業作家としてのデビュー作に当たる『アルマジロの予言』翻訳刊行のクラウドファンディングに挑戦するというニュースが舞い込み、「モルタッチ・トゥア!」と叫びをあげた次第です(このページを参照: https://kdc.hatenablog.com/entry/2020/11/24/144201 )。
私が訳した『コバニ・コーリング』は、著者の「代表作」に数えられてはいるものの、舞台が中東の紛争地帯(シリア北部)ということもあり、ゼロカルカーレに特有の「こてこての地元っぽさ」は鳴りを潜めています(イタリア語原書で読めば、あらゆるページにローマ方言が氾濫しているのがただちに見てとれるのですが、それを翻訳で再現するのはさすがに厳しい)。たいする『アルマジロの予言』ですが、これはもう、半径一キロの世界をひたすらに沈潜していくこの作家のスタイルを、存分に堪能できる一冊です。イマジナリーフレンドのアルマジロ、外見が鶏(ディズニーアニメ『ロビンフッド』のLady Cocca)のマンマ(母ちゃん)、稀代の悪友セッコら、ゼロカルカーレ作品に欠かすことのできない魅力的なキャラクターも、すでにこのデビュー作でお目見えしています。
翻訳を担当する二宮さんは、留学生として長くローマに滞在されていた経験をお持ちです。ゼロカルカーレが深い愛着を寄せる地元、地下鉄B線の最果ての地、ローマ郊外「レビッビア」の空気が色濃くにじむ本作の訳者としては、まさにうってつけではないでしょうか。イタリアコミックの日本への普及を願う者として、また、ゼロカルカーレのいちファンとして、クラファンの成立を心から願っています。Daje, Ham-egg Daisuke e Circolo delle Ciambelle di Kyoto, in bocca al lupo!
栗原俊秀
1983年生まれ。会社員、翻訳家。イタリアの現代小説、古典、ノンフィクション、イタリアコミック、ジョン・ファンテなどの翻訳を手がける。2025年には自主レーベル「ビブリオテーカ・クリタリアーナ」を立ちあげ、書籍の制作・販売にも取り組んでいる。ゼロカルカーレ『コバニ・コーリング』の訳者。
書名:コバニ・コーリング
著:ゼロカルカーレ
訳:栗原俊秀
発売年月:2020年9月
ISBN:4763409387
発行:花伝社
https://www.kadensha.net/book/b10032516.html