皆さん、こんにちは! サウザンコミックス編集主幹の原正人です。
7月30日(水)の暑い盛りに始まったサウザンコミックス第12弾アレハンドロ・ホドロフスキー作、ミロ・マナラ画の『ボルジアの血脈』翻訳出版クラウドファンディングですが、最近はめっきり涼しくなり、残り期間も早いもので2週間を切りました。クラファンの終了日は10月27日(月)の23時59分です。
ご支援くださった皆さん、ありがとうございます! 現時点で300人近い方にご支援いただき、達成率は40%目前まで来ています。
サウザンコミックスのクラウドファンディングはスロースターターであることが多く、第10弾『ガウディの幽霊』プロジェクトも第11弾『地域の私生活99』プロジェクトも苦戦した期間が長かったのですが、終盤で一気に盛り上がり、最終的に無事成立しました。今回も必ずや成立させたいと思います! おそらくこのプロジェクトのことを知らない方がまだまだたくさんいらっしゃるのではないかと想像します。周囲に興味を持ってくれそうなお知り合いがいたら、オンラインでもリアルでも、こんなクラファンのプロジェクトがあるよと、お知らせいただけるとありがたいです。
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さて、本作『ボルジアの血脈』は、チリ出身の映画監督として有名なアレハンドロ・ホドロフスキーが原作を、イタリア出身のエロティックアートの巨匠ミロ・マナラが作画を手がけたバンド・デシネです。
ホドロフスキーが監督した映画(『エル・トポ』、『ホーリー・マウンテン』…)や出演した映画(『ホドロフスキーのDUNE』。激熱のドキュメンタリー。全人類に見てほしい!)は見たことあるけど、バンド・デシネは読んだことがないという方もいらっしゃるんじゃないかと思いますが、実はホドロフスキー原作のバンド・デシネはめっちゃたくさんあり、翻訳も案外たくさんあります。そして、そのほとんどは僭越ながら、僕が翻訳しています。
ホドロフスキー原作バンド・デシネの数々。ここにぜひ『ボルジアの血脈』(中央)を加えたい!
ぶっちゃけ激烈に面白い作品がある一方で、そうでもない作品もあります(笑)。ここでは面白い作品の一例をあげるにとどめますが、まずはやっぱり『アンカル』(メビウス作、小学館集英社プロダクション、2010年)。バンド・デシネに興味がおありなら、一読しておいたほうがいいのではと思う古典級の作品で、その後に続く映画やマンガへの影響という観点からも見逃せません。そして、そのスピンオフである『メタ・バロンの一族』(フアン・ヒメネス画、上下、小学館集英社プロダクション、2012年)。スピンオフと言っても、これ単独で読める作品で、その作画の美しさ、世界観のすさまじさ、登場人物たちのエキセントリックぶりから、奇作・怪作を愛してやまない人たちにぜひ読んでほしい超弩級バンド・デシネです。
いろいろ翻訳があるなら今回新たに翻訳しなくてもいいじゃんと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、バンド・デシネを始めとする海外マンガの寿命は、悲しいかな、決して長くありません。かつて僕が翻訳したホドロフスキー原作のバンド・デシネは今やほぼすべて古本でしか買えません。それらの大半が翻訳出版されたのは今から10年ほど前のことです。中にはとんでもない古書価になっているものもあります。ホドロフスキー作品が日本語でアクセスしづらくなっている今、まだ日本語に訳されていないホドロフスキーの重要な作品を新たに手に取りやすい形でご提供したいと思います。
10年以上前にパリのホドロフスキー邸にお邪魔したときに撮った一枚。当時たくさんあったホドロフスキー原作バンド・デシネもほとんど絶版に。ホドロフスキーのためにもぜひ『ボルジアの血脈』日本語版を実現したい!
そして何より、これまで翻訳されてきたホドロフスキー原作バンド・デシネは、メビウスと共作した作品を軸に、SFやアクションが多く、今回、日本語版出版を目指している『ボルジアの血脈』のような歴史ものは、一度も翻訳されたことがありません。ホドロフスキーファンとしては、彼の知られざる一面を知るまたとない機会と言っていいでしょう。
もちろんホドロフスキーを知らないという方もいらっしゃると思います。もしボルジア家というテーマに興味がおありなら、そのテーマにホドロフスキーという作家がどうアプローチしているのか、ぜひその点に着目してください。彼は時に史実を捻じ曲げることすら厭わないタイプのクリエイターですが、そうした創作態度は彼自身の創作哲学に裏打ちされています。本作をきっかけにぜひアレハンドロ・ホドロフスキーという映画監督・作家およびその作品世界を知っていただければと思います。
もちろん作画のことも忘れてはいけません。本書の作画を手がけるのは世界的に評価の高いイタリアのマンガ家ミロ・マナラです。ミロ・マナラについては、ひとつだけ『ガリバリアーナ』(鵜野孝紀訳、パイインターナショナル、2013年)という作品が翻訳されているのですが、マナラは作品がひとつだけ翻訳されていれば十分などという作家ではまったくありません。本書では、ホドロフスキーの暴走しがちな想像力を、ミロ・マナラの写実的な絵が現実につなぎとめる役割を果たしています。エロティックアートの巨匠としても知られる彼の上品なエロスにもぜひぜひご注目ください。
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『ボルジアの血脈』はこれまで何度か翻訳出版の企画が立ち上がりつつ、残念ながら今のところまだ日本語に翻訳されるには至っていない作品です。この度、鈴木賢三さんが発起人に名乗りをあげてくれ、翻訳出版クラファンが行われることになりましたが、この機会を逃したら、いよいよ日本語には翻訳されないままになってしまうかもしれません。今度こそぜひ日本語版を実現したいと思いますので、どうぞご支援・応援よろしくお願いします!