✴︎クラウドファンディング期間中のみ、お得な先行予約特典がございます。
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✴︎発行予定時期:2026年春予定
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1982年にドイツのティーネマン社より限定発行されたドイツの作家ミヒャエル・エンデの詩と画家ビネッテ・シュレーダーの絵による絵詩集『Die Schattennähmaschine(影の縫製機)』。存在を表現することの本質に迫る詩「Der wirkliche Apfel(本当の林檎)」からはじまる19篇の詩は、シュールであり、哲学的であり、神秘的であり、そしてユーモアも感じられる。表題作『Die Schattennähmaschine(影の縫製機)』では、夜から朝へのうつろいに影のもつ神秘を重ねる。終演を迎え、シュレーダーが描くカメが歩む舞台は宙へと浮かび消えていく。磨き抜かれた言葉とモノクロームの細密画で端正に構成された本書は、美しい装丁と一体となり、エンデ作品の中でもとりわけ格調高い一冊。邦訳版は2006年に長崎出版より酒寄進一による翻訳で出版されたが、現在は絶版となっている。
縫製機
たたずむ
夜の砂丘
日の出まで
ブラバントの服きた
おんなが七人
ぬいもの はげむ
(本文より一部抜粋)
【原書の情報】
書名:Die Schattennähmaschine(影の縫製機)
作:ミヒャエル・エンデ(Michael Ende)
絵:ビネッテ・シュレーダー(Binette Schroeder)
発行年:1982年
発行元:Thienemann
ジャンル:単行本・絵詩本
作:ミヒャエル・エンデ(Michael Ende)
1929–1995年。ドイツのガルミッシュ生まれ。作家。小説、絵本、戯曲、詩などの文芸作品がある。愛をもって社会を見つめ、深い思索のもと生まれた作品は、世界中の多くの読者に読み継がれている。1960年『ジム・ボタンの機関車大旅行』(邦訳版1986年/岩波書店)で作家としてデビューし、ドイツ児童文学賞を受賞。以降、執筆活動を続け数々の国際的な文学賞を受賞。主な邦訳作品に『ジム・ボタンと13人の海賊』『モモ』『はてしない物語』『鏡のなかの鏡—迷宮—』『魔法のカクテル』『魔法の学校—エンデのメルヒェン集』(以上すべて岩波書店)などがある。『モモ』の装画・挿絵はエンデ自身が描いたもの。長野県の信濃町黒姫童話館に、原稿や草稿、ノート、写真、書簡、自筆原画、愛用品などのエンデの関連資料が多く所蔵され、一部が常設展示されている。
絵:ビネッテ・シュレーダー(Binette Schroeder)
1939–2022年。ドイツのハンブルグ生まれ。絵本作家、画家、イラストレーター。1969年『お友だちのほしかったルピナスさん』(邦訳版1976年/岩波書店)で絵本作家としてデビューし、BIB金のりんご賞を受賞。主な邦訳作品に『こんにちはトラクター・マクスくん』『ラ・タ・タ・タム ちいさな機関車のふしぎな物語』『ぞうさんレレブム』『ラウラとふしぎなたまご』(以上すべて岩波書店)などがある。エンデとは古くからの友人で、『影の縫製機』のほかに『満月の夜の伝説』(岩波書店)などを共作している。
訳:酒寄進一(さかよりしんいち)
和光大学教授、ドイツ文学翻訳家。主な訳書にイーザウ「ネシャン・サーガ」三部作、テツナー「黒い兄弟」(共にあすなろ書房)、シーラッハ「犯罪」、カシュニッツ「その昔、N市では」(共に東京創元社)、ケストナー「終戦日記一九四五」「独裁者の学校」(共に岩波文庫)。ヘッセ「デーミアン」(光文社古典新訳文庫)など。今年11月公演予定のヘッセ「シッダールタ」と来年3月公演予定のブレヒト「コーカサスの白墨の輪」(共に世田谷パブリックシアター)の原作翻訳を担当。
発起人:atelier yamaguchi(アトリエ・ヤマグチ)山口吉郎・山口桂子
はじめまして。私たちは人文書から絵本まで幅広いジャンルのブックデザインを手がけるデザインユニットです。サウザンブックス発行の書籍も多くデザインしてきました。そんな私たちが今回なぜ発起人になったのか、そのきっかけについてお話させてください。
■ミヒャエル・エンデに出会いなおす
『モモ』でミヒャエル・エンデの作品に出会ったという方は多いかと思います。私たちも『モモ』によって人生に大きな影響を受けました。そこからエンデの作品や言葉に触れていくにつれ、エンデについてもっと学びたい思い、2023年夏、信濃町黒姫童話館で開催された「エンデキャンプ」に家族で参加しました。全国から集まったエンデのファンや研究者と交流し、作品や多くの関連資料に触れ、自然豊かな環境の中で大人も子どもも一緒になって遊び、語らい、エンデに見守られているような感覚を覚えながら、エンデの創る〈物語の力〉に大いに感銘を受けました。その奇跡のような3日間を忘れられず、2024年夏のエンデキャンプ、秋のエンデ学会へも参加しました。エンデ学会では〈ミヒャエル・エンデの絵本の世界〉について発表を行いました。
黒姫での体験を通して強く思ったことは、エンデの遺したメッセージを今の時代を生きる人々に広め、未来に語り継いでいくために、私たちにできることは何だろうか、ということです。
そんな時、サウザンブックスの古賀さんから『影の縫製機』邦訳版の版権が取得できる可能性があると伺いました。私たちはエンデのいちファンに過ぎませんが、書籍をデザインすることはできます。本づくりでエンデのメッセージを未来につなぐことに貢献できれば……という想いで今回クラウドファンディングにチャレンジすることにしました。
■ミヒャエル・エンデ作品のもつ〈物語の力〉
「ファンタジー作家」と呼ばれることの多いエンデですが、エンデの語る「ファンタジー」とは現実から乖離したものではなく、現実の未来を創る力となるものです。エンデはその「ファンタジー」が現代社会から失われていることが人々の「内なる世界」を破壊し「心の荒廃」につながっていることを憂い、「内世界の破壊に対して抵抗する」ための言葉を紡ぎ続けました。そのことが最もわかりやすく表現されたのが『はてしない物語』でしょう。この作品には〈本の力〉を信じる私たちも大いに励まされました。
エンデの作品は、今の時代を生きる人々、子どもだけでなく大人の心にも深く深く届く〈物語の力〉を持ち続けています。少し先の未来がわかる『モモ』のカシオペイアのように、未来から響いてくるようなエンデのメッセージは、エンデがこの世を去って30年経つ今も古びることがないどころか、ますます切実に私たちに響きます。だからこそ今現在も多くの読者がエンデの物語を求めているのではないでしょうか。
■ミヒャエル・エンデの作品を語り継いでいくために
『影の縫製機』(長崎出版)を含め、エンデの邦訳作品は、主要作品を除き品切れや絶版が多く、一部の古書価は高騰しています。この状況を変えるべく、絶版になった邦訳作品を少しずつでも復刊したい。新刊を再流通させることで、エンデ作品に出会う機会を増やしたいと強く考えています。
■『影の縫製機』の魅力
この度のクラウドファンディングでは『影の縫製機』の新しい装いでの出版を目指します。
この本は19篇からなるエンデの詩と、シュレーダーの絵によって構成されています。シュレーダーの絵は詩の説明ではなく、詩の言葉を具体化しつつも迷宮化し、重層的な響きを生み出しています。そこには、詩をイメージして描かれた絵もあれば、絵にインスピレーションを受けて書かれた詩もあるという創作過程での相互作用も影響しているでしょう。モノクロームの細密画を細部まで見ていると、闇に目を凝らすように色々なものが見えてくるようです。本を開く度に新たな響きを感じられる、そんな魅力的な絵詩集です。
新装版では、長崎出版版の翻訳をされた酒寄進一先生の訳文を使わせていただけることになりました。原文の韻文詩のドイツ語ならではの表現が、日本語でも味わえるように訳されていて、読む度になるほどとうなったり、遊び心にくすっとさせられたり、エンデの詩の魅力が日本語読者も存分に味わえる訳となっています。
酒寄先生の巧な日本語訳を読んでいると、原文ではどんな表現なんだろうと気になる方も多いと思います。今回、ドイツ語原文も巻末に収録できることになりました。ドイツ国内でも絶版となっている本書のドイツ語原文を読むことができる貴重な一冊となります。
『影の縫製機』の原書『Die Schattennähmaschine』は、函、本体表紙ともにつややかな黒い布貼りの装丁で、グレーがかったしっとりとした上質なレイド紙にくっきりと濃いブラックインクで印刷されています。初めて手に取った時はその美しさにうっとりと見とれてしまいました。また、紙面にさまざまなリズムをもたらしている詩のタイポグラフィも魅力的です。
エンデは「芸術作品と言うのは、つねに、頭、心、感覚からなりたつひとつの全体性である」(『エンデの贈りもの』河出書房新社/1999年発行)と述べていたそうです。詩と絵と装丁が見事に調和したこの作品も、美しい芸術作品と言えるでしょう。
発起人である私たちはブックデザイナーですので、原書の美しい装丁を研究し、その魅力をできるだけ引き継いだ新装版をお届けしたいと願っています。
夢は広がるばかりですが、それを実現するためには多くの皆様のご支援が必要です。
『影の縫製機』新装復刊のためのクラウドファンディングへ、ぜひ、ご参加をよろしくお願いいたします!
2029年のエンデ生誕100年に向けて、エンデのファンタジーの灯火がより多くの人々の心を照らすよう願っています。
■今回のプロジェクトでめざす新装復刊版の仕様
・B5判横変型(H185×W202)
・布装函入り
・布装上製角背かがり綴じ
・表紙空押し/背箔押し
・本文88p(予定)/1色刷
※ドイツ語版の原書を踏襲した仕様になります。
※本クラウドファンディング内では『Die Schattenn.hmaschine(影の縫製機)』をご紹介する際の書名、詩などの訳文は酒寄進一先生による日本語訳(『影の縫製機』長崎出版)を使用させていただいています。
発起人:atelier yamaguchi(アトリエ・ヤマグチ)山口吉郎・山口桂子
東京・国分寺市の書籍のデザインを中心としたデザイン事務所。担当した主な書籍は『大きなシステムと小さなファンタジー』(影山知明 著/クルミド出版)、『おしゃべりなドイツ語』(綿谷エリナ 著/左右社)、『なんにもおきない まほうのいちにち』(ベアトリーチェ・アレマーニャ 作、関口英子 訳/ポリフォニープレス)、『どうぶつえん』(スージー・リー 作、姜汶政、松岡礼子 訳/サウザンブックス社)、『ぼくらのサブウェイ・ベイビー』(ピーター・マキューリオ 作、レオ・エスピノーサ 絵、北丸雄二 訳/サウザンブックス社)、『ジュリアンはマーメイド』(ジェシカ・ラブ 絵・文、横山和江 訳/サウザンブックス社)など。
X(旧twitter):@yamaguchike_at
website:https://at-yamaguchi.com/
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