皆さん、こんにちは。サウザンコミックス編集部です。
1月21日(火)に始まったサウザンコミックス第10弾『ガウディの幽霊』翻訳出版プロジェクトも、早いもので開始から3週間が経ちました。
現時点の支援人数は104人、達成率は14%です。ご支援くださった皆さん、ありがとうございます! 本プロジェクトを実現させ、まだまだ決して多いとは言えないスペインコミックの翻訳を増やし、日本のマンガとスペインのコミックの架け橋になりたいという発起人マリアさんの夢をぜひ実現したいと思います。
達成率的にはまだまだ心細い状況ですが、プロジェクト成立に向けて、この作品の魅力を知ってもらうべく、マリアさんと一緒にさまざまな活動を行っていく予定です。もし身の回りにこの作品に興味を持ってくれそうな人がいたら、本プロジェクトをオススメいただけるとありがたいです。
さて、去る2月4日(火)に毎月恒例となっているオンラインイベント「海外マンガ勉強会」を開催しました。「海外マンガ勉強会」は、前半1時間は誰かの発表、後半1時間は海外マンガにまつわる雑談という構成のイベントで、今回9回目を迎えました。せっかくの機会なので、今回は『ガウディの幽霊』プロジェクトの発起人マリアさんにスペインコミックについて発表してもらいました。
マリアさんの発表「スペインのコミック」
日本ではまだあまり知られていないスペインコミックについての発表を、在日スペイン人のマリアさんがしてくれるということもあって、当日は約30名もの方が参加してくれました。
発表の概要は以下の通りです。
・自己紹介
・スペインのコミックとは
・スペインのコミックの小史
・スペインのコミック業界(2023年)
・スペインのコミックの魅力
・スペインのコミックのご紹介
日本には、マンガ(漫画、まんが)、劇画、コミックなど、マンガを指す複数の言葉がありますが、マリアさんによると、スペインの場合、イストリエタ(Historieta)、テベオ(Tebeo)、コミック(Cómic)、ノヴェラ・グラフィカ(Novela gráfica)という4つの言葉があるとのこと。これらの言葉はマンガの形式やそれが流行した時代を反映したもので、現在では、もともと雑誌名に由来するテベオという言葉もまだ使われているものの、若い世代の間では、コミックやノヴェラ・グラフィカといった言葉が好まれるようになってきているそうです。
スペインコックの4分類~イストリエタ(Historieta)、テベオ(Tebeo)、コミック(Cómic)、ノヴェラ・グラフィカ(Novela gráfica)
マンガの歴史はもちろんその国の歴史と密接に結びついていて、スペインも例外ではありません。マリアさんのお話で興味深かったのは、フランコ独裁政権崩壊後のコミックの盛衰です。スペインは1939年から1975年にフランコ独裁政権下にあったのですが、その時代、検閲が厳しかったこともあって、大人向けの作品や海外からの輸入は少なかったとのこと。ところが、フランコ政権崩壊後、その反動で、スペイン国外のマンガがスペインに押し寄せ、大人向けのコミックも活況を呈したそうです。ただ、あまりに急激なことで市場が一気に飽和してしまい、経済不況もあって、一時停滞を招いてしまうことに。その後、20世紀末になって、さまざまな出版社が登場したり、インターネット上での作品発表が盛んになったこともあり、再びスペインコミックは盛り上がり、今に至っているそうです。
とはいえ、今現在、多くの作家さんがスペイン国内で十分に活躍できているかというと、必ずしもそういうことではないそうで、北米やフランス語圏を主な活動場所としている作家さんが非常に多いとのこと。スペイン国内でも、スペイン人作家の作品より、日本のマンガや北米のコミックのスペイン語訳のほうが売り上げが高いのだとか。こういった傾向は、日本のマンガとはまったく違っていて、とても興味深いです。
北米で活躍しているスペイン人作家(上)と
フランス語圏で活躍しているスペイン人作家(下)の一例
最後のパートでは、マリアさんがぜひ日本語に翻訳したいと考えているスペインコミックをいくつか紹介してくれました。
マリアさんが紹介してくれた未邦訳スペインコミックの一例。
上からCarlos Giménez, Paracuellos(カルロス・ヒメネス『パラクエージョス』)、
Bea Lema, El Cuerpo de Cristo(ベア・レマ『キリストの体』)、
Paco Roca, Los Surcos del Azar(パコ・ロカ『偶然の畝溝』)
いろいろな作品が紹介されましたが、もちろんマリアさんのイチオシは絶賛クラファン中のエル・トーレス作、ヘスス・アロンソ・イグレシアス画『ガウディの幽霊』。スペインを代表する建築家アントニ・ガウディが残した歴史的建造物群を舞台に、ゴアな猟奇殺人が繰り広げられるというスペイン的要素たっぷりの作品です。奇しくもガウディの代表作で、本書にもたっぷり登場するサグラダ・ファミリアは、来年2026年完成なのだとか。ぜひ本書を本書の日本語版とともに、サグラダ・ファミリアの完成を迎えられたらと思います。
スペインスペインコミックを愛し、日本のマンガやフランス語圏のバンド・デシネもよく知るマリアさんが、ぜひ日本の皆さんに読んでほしいと強くプッシュする本作『ガウディの幽霊』。その日本語版実現のために、引き続きご支援・応援よろしくお願いします。