おかげさまでプロジェクト達成し、期限がきましたので募集を終了しました。みなさまからのご支援心より感謝申し上げます。
『ハチクマの帰還』は、2025年春以降に全国書店で発売予定です。
くわしい発売情報をお求めの方は、サウザンブックスのサイトでお知らせメールに登録ください。詳細が決まり次第、お知らせします。
活動報告のページでも本の制作の様子をお知らせしますので、合わせてごらんください。
・書籍1冊以上のコースにご参加いただいた方全員に本編に未収録のイラストを使用したイラストカードをプレゼントします。
・1口のご参加につき1枚とさせていただきます。
・イラストカードは非売品です。別の場で販売・配布を行う予定はございません。
父親から受け継いだ小さな書店を営む主人公シモンは、本が売れない時代の流れに逆らえず、ほどなく店をたたむ準備を進めていた。妻からは、今後の生活のことを考えて店を好条件で買い取ってくれるチェーン店に売却しようと提案されているが、頑なな姿勢を崩そうとはしない。二人の関係はぎくしゃくしていた。
このような苦境の最中、シモンは車で倉庫に向かう途中、女性の自殺現場に遭遇する。その日を境に悪夢を見るようになり、蓋をしていた過去のトラウマに向き合うことを余儀なくされる。
シモンは中学生の時に親友を亡くしていた。親友の死の真相を知りながら、ひとり秘密を抱えたまま生きてきたのだった。
ある雨の夜、シモンにひとりの謎めいた少女との出会いが訪れる。彼女との交流を通して、シモンは過去と向き合い、次第に心の平穏を得るようになるのだが、果たして、彼女はいったい何者なのだろうか。そして、彼のたどり着いた答えとは……。
オランダのテレビ局でドラマ化されるなど反響の大きかった作品。出版翌年の2015年にベルギーの歴史あるマンガ賞サン=ミシェル賞(Prix Saint-Michel)で、最優秀オランダ語圏作品賞を受賞している。
真実なんか教えるものか。
僕は自分にそう言い聞かせてきた。
でも、時間が経つにつれ、僕はだんだんこう考えるようになった。
僕は真実を伝えるべきだったんじゃないかって。 (本文より)
書名:De terugkeer van de wespendief(ハチクマの帰還)
著:エメー・デ・ヨング
発行年:2014年
仕様:168ページ/1色
ジャンル:単行本/海外文学/グラフィク・ノベル
ISBN:978-9492117656
写実的で緊張感のある白黒の描線。説得力のある語りのリズムが、読者を主人公シモンの内面世界へと誘う。
著:エメー・デ・ヨング(Aimée de Jongh)
1988年オランダ生まれ。ロッテルダムの「ウィレム・デ・コーニング・アカデミー(Willem de Kooning Academy)」でアニメーションの学位を取得後、22歳の時から新聞連載にてグラフィックノベルの執筆を始める。これまでに、オランダ国内外で数々の漫画賞を受賞し、オランダで今最も才能のあるグラフィックノベル作家と評される。外務省主催の日本国際漫画賞においても、第12回で『身体の老いとともに感情もまた老化する(Bloesems in de herfst)』が優秀賞、第15回で『砂の日々(Dagen van zand)』が最優秀賞と、2度受賞している。
『ハチクマの帰還』タイトルの由来について
本書のタイトルにもなっている「ハチクマ」についても少しご紹介しておきたいと思います。ハチクマ(正式にはヨーロッパハチクマ)はタカ科の猛禽類で、主にハチを餌にすることからその名前がつけられました。夏をオランダやベルギーをはじめとするヨーロッパで過ごし、冬になるとアフリカへと渡ります。特徴的なのは、どちらか一方でも生き残る確率を上げるため、つがいが必ず別々のルートで長い渡りをすることです。主人公シモンの子供の時の夢は鳥類学者になることでした。大人になったシモンは作中でこう語ります。「ハチクマを知っているかい?新しいスタートを切ることで生き延びる、とても珍しい鳥だ」ハチクマが作品とどう関わってくるのか、ぜひ注目してお読みいただきたいと思います。
オランダのグラフィックノベルについて
マンガの盛んな国であるフランスとベルギーに比べて、なかなか目立ちませんが、オランダ語圏(オランダとベルギーのフランドル地方)にも素晴らしい作品を発表している作家がたくさんいます。国際的なマンガ賞を受賞する作家も輩出しています。もともとアートとデザインの伝統のあるオランダですが、マンガ界では小国です。マンガ家としてやっていくためには、国際的な成功を収める必要があります。そのため、海外の出版社から英語やフランス語で作品が出版されるケースも多いのですが、実は作者はオランダ人だったということがあります。オランダの作家がもっと自国の出版社からオランダ語で作品を発表できるようになればいいなと思っています。
コミックイベントにて。発起人(左)と著者エメー・デ・ヨング
海外マンガファンの皆さん、オランダ発のプロジェクトということでご興味を持ってくださった皆さん、こんにちは。オランダで暮らしながら、オランダのグラフィックノベルを日本で翻訳出版するために活動している川野夏実と申します。
オランダ語を勉強して翻訳家になりたいと思った学生時代、当時はオーソドックスに小説や児童文学、絵本などを探して出版社に持ち込むということを繰り返していました。しかし、出版不況のご時世で夢は夢のまま、あっという間に年月は過ぎ去っていきました。日々の仕事と子育てに追われ、翻訳家の夢にだいぶ埃がかぶっていた時、ある方から「グラフィックノベルを訳してみませんか」と声をかけてもらいました。その時は「えっ、グラフィックノベルって何?」と思いつつも、「やります!」と二つ返事し、ゴッホの生涯をテーマにした作品『ゴッホー最後の3年ー(花伝社)』で念願だった翻訳家デビューを果たすことができました。
これが私とオランダのグラフィックノベルの出会いです。他にはどんな作品があるのか、探して読んでいくうちに、すっかりグラフィックノベルの魅力に取り憑かれてしまいました。日本に是非紹介したいお気に入りの作品にいくつも出会うことができました。
ところが、「訳書が一冊あれば、それが名刺になって次の本が出せるよ」と聞いていたはずが、「どうも、そうじゃないぞ」ということが次第にわかってきました。出版不況に円安も重なって、翻訳出版を取り巻く状況は厳しさが増す一方。そもそも知名度のないオランダのマンガは、出版社からしても読者が見込めません。持ち込めど持ち込めど、ボツになって溜まっていく企画書。オランダには才能に満ちた個性的で素晴らしいマンガ作品がたくさんある。中国や韓国では翻訳出版されているのに、日本の読者に受け入れられないはずがない。このまま諦めたくないと覚悟を決め、今回、サウザンブックスさんの力を借りて、クラウドファンディングに挑戦することにしました。
オランダのマンガの凄さを日本の皆さんに知ってもらいたい。その代表として、今回、選んだのがエメー・デ・ヨングの『ハチクマの帰還』です。はじめて読んだ時、決して長くない白黒マンガでありながら、まるで一本の重厚な映画を見せられたような読後感で、その情熱と技量に圧倒されました(そして、調べるとやはりオランダでテレビ映画化されていて納得)。彼女の他の作品もそうですが、エメーは一流の脚本、監督、カメラワークが一体となった仕事をひとり紙の上でしています。これから、ますます国際的に評価されていく作家になることでしょう。
輝かしい経歴を重ねて順風満帆に見える彼女ですが、マンガ弱国のオランダにおいてマンガ家という職業で食べていくことは大変です。SNSでエメーが「今日は教育文化省にマンガ家支援の嘆願書を持っていった」「マンガ家として生活しているなんてすごいね、と人からは言われるけど、実際の仕事はメールの返信が大半だ」などと発信しているのを見ると、私も彼女のいちファンとして、マンガ大国である日本への翻訳出版を通して、その活動を応援したい気持ちになります。
川野夏実(かわの・なつみ)
宮崎県出身。東京外国語大学外国語学部を経て、
インスタグラム:mikeneko_nihongo
X:@Natsumi_nl
Threads:mikeneko_nihongo
note:川野夏実 オランダのグラフィックノベル翻訳者
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