おかげさまでプロジェクト達成し、期限がきましたので募集を終了しました。みなさまからのご支援心より感謝申し上げます。
『一橋大学アウティング事件が ‘私’ に遺したもの(仮)』は、2025年春以降に全国書店で発売予定です。
くわしい発売情報をお求めの方は、サウザンブックスのサイトでお知らせメールに登録ください。詳細が決まり次第、お知らせします。
活動報告のページでも本の制作の様子をお知らせしますので、合わせてごらんください。
2015年、一橋大学法科大学院においてゲイの学生から同性愛の恋愛感情を告白された異性愛の男性が、共通の友人関係や告白後のゲイの学生の言動に悩んだ後に、友人ら7人にグループメッセージでその学生が同性愛者であることを暴露(アウティング)。これをきっかけにゲイの男性が心身に変調をきたし転落死したとされる、一橋大学アウティング事件。そこから、2025年で10年の節目となる今、事件を風化させないためにも関係者の声をまとめてかたちにします。
書名:一橋大学アウティング事件が ‘私’ に遺したもの(仮)
編著:松中権
仕様(仮):四六版・全1C・頁数未定
ジャンル:単行本・社会問題・LGBTQ
発行・発売:サウザンブックス社
【予定している執筆者】
・松中権(プライドブリッジ会長、認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ)
・神谷悠一(プライドブリッジ副会長、一般社団法人LGBT法連合会事務局長)
・川口遼(プライドブリッジ副会長、名古屋大学ジェンダーダイバーシティセンター客員研究員)
・松岡宗嗣(一般社団法人fair 代表理事)
・本田恒平(立教大学経済学部助教・一橋大学学生団体LGBTQ+ Bridge Network 元代表)
・太田美幸(一橋大学教員)
・くにたち男女平等参画ステーション パラソル
・松岡成子(特定非営利活動法人ASTA共同代表)
ほか
2015年6月、一橋大学法科大学院に通うひとりの男子学生が、同級生が参加する「LINE」グループにて、ゲイであることを暴露(アウティング)されました。男子学生は心身の不調を訴え、大学のハラスメント相談室、担当教授、保健センターに助けを求めましたが、結果的に状況の改善がなく、同年8月24日に校舎から転落死しました。
翌年、遺された両親が同級生と大学を相手に損害賠償を求めて東京地裁に提訴した「一橋大学アウティング裁判」は、2018年10月31日に結審し、2019年2月27日、東京地裁は遺族の請求を棄却しました。(遺族と同級生の間では、2018年1月15日付で和解が成立しています。)
その後、遺族は控訴しましたが、2020年11月25日に東京高裁も請求を棄却しました。しかしながら、判決理由の中では、アウティングは「人格権ないしプライバシー権などを著しく侵害するものであり、
許されない行為であることは明らか」と言及され、アウティングの違法性について言及された日本初の判決となりました。
東京地裁の判決の日である2019年2月27日の朝、判決の結果がいずれにせよ、二度と同じような悲しい出来事が一橋大学で起こらないようにと、一橋大学の卒業生および在学生、LGBTQ+当事者とアライが繋がるネットワークとして「プライドブリッジ」を仲間たちと立ち上げ、主に一橋大学の卒業生を中心に寄付金を募りました。
2019年9月に、「プライドブリッジ」と「一橋大学大学院社会学研究科ジェンダー社会科学研究センター(CGraSS)」は、覚書を締結し、LGBTQ+学生を含む全ての学生が一橋大学において安全・安心な学生生活を送れる環境づくりにつとめるとともに、ジェンダー・セクシュアリティに関する社会問題について実践的に考える機会を学生に提供することを目的に、ジェンダー・セクシュアリティに関するリソースセンターの設置及び運営と、ジェンダー・セクシュアリティに関する寄附講義の設置及び運営を中心とする新規事業「一橋プライドフォーラム」を開始しました。
以降、「ジェンダー/セクシュアリティとライフデザイン」という寄附講義を3年間開講し、学生団体「LGBTQ+ Bridge Network」の協力を得て、一橋大学キャンパス内でのリソースセンターの運営を約5年間支援してきました。なお、寄附講義は2021年度で終了し、2022年度からは、一橋大学社会学部の専門科目として履修できることになり、2024年度も継続しています。リソースセンターは、学生や教職員に向けた情報発信の拠点として、また、学内の当事者とアライが安心して集うことができるコミュニティスペースとして活用されています。
2018年4月から、東京都国立市では、これまでの市民・行政・議会の取り組みを受けて「アウティングの禁止」を日本で初めて盛り込んだ「国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例」が施行されました。2020年6月1日から施行されている改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)においては、事業主に対してパワハラ防止に関する措置義務が課されました。その措置義務の具体的内容が示されている「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示5号)」(パワハラ防止指針)において、「SOGIハラ」と「アウティング」に関する事項が明記され、「パワハラ」の一環としてその防止が全国で義務となりました。一橋アウティング事件は、制度を前に進め、確実に社会に変化をもたらしてきました。
そして、変化は、社会だけではありません。
多くのLGBTQ+当事者は、「彼は私だ」と感じ、自らの人権が守られていないことについて、声をあげる人も増えてきました。また、性のあり方を問わず、多くの人が心を痛め、もし自分がアウティングの現場にいたら、
そして、もし自分がアウティングをしてしまったら、と考える時間を重ねてきたと思います。ひとりひとりに、何らかの意識の変化、行動の変化、描く未来への変化がもたらされているのだと思います。もちろん、ご家族やご友人にも、ゆっくりと時間をかけて。
来年で、彼が亡くなられて10年となります。節目と呼ぶのが良いのかはわかりませんが、歴史と変化と希望を、きちんと書籍としてまとめて残し、ひとりでも多くの方に、手に取っていただく機会をつくりたいと思っています。
サウザンブックスと支援金の使途について
このプロジェクトの支援金については、「原稿執筆費」「編集・デザイン・DTP費」「印刷・製本費」「発送・流通・宣伝費」など、本の制作からお届けにかかる費用に使用させていただきます。完成した書籍は、日本中の書店・ネット書店、図書館などで流通する書籍となります。一般的な出版社が発行する書籍と同様です。