「ターラの夢見た家族生活」の達成、まずはおめでとうございます。残り時間がまだあと一週間ありますので、もっとたくさんの方の目に留まればいいなと思い応援メッセージを書かせて頂いております。
私は普段は研究所委託の調査や企業翻訳などを請け負う研究者兼翻訳者です。そして、新中学生になる発達障害児を育てる母親でもあります。最近よく社会福祉の分野で「みんなで育てる」という言葉を聞きますが、発達障害児を育てていると地域の繋がりを持つことが実はとても難しいというのが実感としてあります。周りの方もよく言うのですが、まずママ友というものが出来づらいのです。癇癪を起こしたり多動があったりすると他の子どもと遊ばせることが難しく、公共の場所に連れて行っても周りに謝ってばかり。そういう状況を避けるがために、発達障害児の家族はいつしか孤独の中での子育てを強いられがちです。ただでさえ育てるのに少し骨が折れる子どもかもしれないのに、周りと断絶された状況で子育てをすることで、母親が鬱状態になってしまったりすることは往々にしてあるようです。そしていっぱいいっぱいになってしまったとしても、渦中の親は一体どこに助けを求めていいのか分からないのではないでしょうか。
笑い話にすらなりませんが、先月の息子の小学校の卒業式で、私は知り合いの親御さんは見事にほとんどいませんでした。六年間も通ったのに、です。特別支援学級の先生や放課後デイサービスの先生などに支えて頂いたのでとても充実してはいましたが、それでも「もう無理…」となってしまったことが実は何度もありました。そんなときに、真っ白になってしまった頭で何度も何度も「誰に助けを求めよう」と考えたけれども、誰一人浮かんでこなかったことを思い出します。そのときの絶望的なまでの孤独感。「みんなで育てる」って一体なんだろうと思いました。
私がこのターラちゃんのプロジェクトに強く惹かれたのは、あのとき、頭が真っ白になってしまった私の横に家族ぐるみで支援をしてくれるエデュケータの存在があったら…と思わざるを得ないからです。そしてたった今孤独な育児を強いられ、子どもとの関わりに悩む人の側にエデュケータがいたら…と。私だけではありません。何よりも子どもにとって母親以外にそういう関わりを持ってくれる存在は必要だったと思います。
エデュケータという子どもに寄り添い、親にも寄り添う専門職。誰かを責めるのではなく、共に考えてくれる存在。そんなシステムがいつか日本にも導入され、本当の意味で「みんなで育てる」ことが可能な社会がくることを願ってやみません。
補足ですが、今週4月2日~8日は「発達障害啓発週間」です。三年前、同じくサウザンブックス社さんのクラウドファンディングで『キッズライクアス』という自閉症スペクトラム障害の男の子の物語を翻訳させて頂きました。ご興味ある方は是非こちらも手に取ってみてください。
林 真紀
つくば未来リサーチ代表(翻訳者/研究者)。慶應義塾大学環境情報学部卒業、一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程中退。精密機器メーカー、国立大学法人の研究室にて翻訳者として勤務の後、独立。研究所からの委託調査業務や企業翻訳の傍ら、発達障害の子どもを育てる保護者向け記事や電子書籍などを多数執筆。2020年に自閉症スペクトラム障害の青年が主人公のヤングアダルト小説『キッズライクアス』(サウザンブックス社)を翻訳出版。