それは、子どものとき暴力や暴言など不適切な環境で育った「負の影響」に他なりません。負の影響は、日々の生活や人間関係にいつまでも容赦なく絡みついてきます。少しでも早く、子どもたちが深く傷つく前に救い出さなければ。
かといって、家庭というプライベートな空間に、他人がズカズカと入れるものではありません。児童相談所や警察など国家権力が介入すれば万事OKかというとそうでもありません。
フランスの児童福祉をテーマにしたこの漫画では、困っている子どもや家族への声の掛け方、接し方など、私たちが参考にできるヒントが満載です。私たちに何ができるか、多くの人と一緒に考えたいです。
津田塾大学卒業後、株式会社パソナに入社。副社長秘書、営業、契約管理、人事等を担当。二児出産後、キャリアアップを目指し参加したビジネス研修で「企業による児童養護施設の子どもたちを支援する企画立案」に携わったことをきっかけに、2004年NPOブリッジフォースマイルを創設。多数の企業や社会人ボランティアの協力を得て、施設や里親家庭を巣立つ若者を支援している。
発起人・安發明子よりコメント
日本で社会的養護の子どもは未成年人口の0.2%、フランスは2%です。それは虐待が10倍あるからではありません。虐待ではなく「心配」「危険」という基準によって予防として事態が悪化することを防ぐことを目的としているからです。虐待といった極端に関係性が悪化した状況を経験すると回復に数年間を要し、さらに1/4もの若者は成人してからも後遺症が残り安定し自立して暮らせる状況にないということがフランスの研究でわかっています。フランスの保健省は12%もの大人が未成年のときに継続的な暴力被害の経験をしており、そもそも被害を受けないよう全ての子どもに福祉とケアが届くことを目指しています。保健省はさらに予防は保護が必要になることに比べコストが1/9000で済むとしており、この漫画で紹介する「予防的対応」である在宅教育支援に力を入れています。日本でも市町村がこの支援を担うことになっており、今後ますます強化されていくことが発表されています。
私も日本で働いていたときに、フランスのワーカーたちが教育や夫婦関係などデリケートに思われるような内容についても話せること、親たちに頼られ感謝されていることが不思議でした。ワーカーたちに聞くとどの親も必ず子どもにより良い成長をしてほしいという気持ちであることは同じであり、ワーカーたちが子どもの幸せを想い親のことも支える意思があることが伝われば必ず協業し合えると笑います。それは「虐待疑い」ではなく「子どもの心配な状況への支援」から入っていることと、親自身が課題に感じていることを一緒に克服しようとすること、実際状況が改善していく専門性をワーカーが身につけておりチームで連携し包括的に家庭を支えているからです。
そこには職人技のような探求があり、配置転換でたまたま担当できるものではありません。日本でも市町村が担うことになっている在宅支援は今後ますます強化されようとしています。親子をどのように専門職が支えることができるだろうか? 議論するきっかけになる一冊になると思っています。