過去から現在、未来へとつながる闘いの歴史 山縣真矢
2日間でのべ約24万人の来場者(主催者発表)を記録したアジア最大級のLGBTQイベント『東京レインボープライド2023』も終わり、寒暖差の激しかったゴールデンウィークも過ぎ去りました。
昨年、旧統一教会と自民党の癒着が白日の下に晒されましたが、一時期は頑張って報道していたメディアも、圧力がかかったのか、今ではあまり取り上げなくなりました。解散命令請求もうやむやな状態のまま、世界平和統一家庭連合は、現在も宗教法人として存在しています。
そんななか、今春の統一地方選では、神道政治連盟(神政連)からの「公約書」が自民党の候補者に送りつけられ、200人以上がそれに署名していたことが明るみになりました。しかし、ここでも圧力がかかったのか、一部メディアが報道しただけで広く問題視されることなく、スルーされています。
神政連といえば、昨年6月、自民党の国会議員らが参加した神道政治連盟国会議員懇談会でLGBTに差別的な内容の冊子が配布されて問題となりましたが、相変わらず、選挙となると暗躍しているようです。
2月の荒井秘書官の差別発言以降、G7までに「LGBT理解増進法」の成立をという機運が高まる一方、ここにきて自民党保守派(人権嫌悪派)が気炎を揚げはじめ、そもそも骨抜きの「LGBT理解増進法案」に対してさえも圧力をかけ、その成立さえも危ぶまれる状況になっています。
そこで思い出されるのは、宮崎県都城市で2004年に制定された「男女共同参画社会づくり条例」です。この条例は、「性別又は性的指向にかかわらずすべての人の人権が尊重され」と明記し、性的少数者の権利を擁護することを明文化した、全国で初めての画期的なものでした。しかし、その後、反対派による激しい攻勢の結果、「性別又は性的指向にかかわらず」という文言が削除された新条例が2006年に制定されてしまいました。その反対運動を先導/煽動していたメディアが『世界日報』で、まさに「統一教会」でした。
2000年代はジェンダーフリー・バッシング、バックラッシュの嵐が吹き荒れた時代で、その影響もあってか、統一教会等の攻撃によって、都城市の画期的な条例から「性別又は性的指向にかかわらず」という文言が削除されてしまいました。そして今、20年前に地方自治体で起きたことが、国政レベルで起きています。この10年で「LGBT」は広く知られる存在となり、差別禁止法や同性婚は選挙の争点として扱われるまでなりましたが、その反作用として、性的少数者の権利獲得運動に向けられる風当たりは、より強くなってきています。
歴史は、つながっています。過去の闘いが、形や大きさを変え、現在の闘いへとつながっていきます。
私たちの運動に立ちはだかる宗教右派の存在が見えてきた今だからこそ、本書を書き進める意義があるとあらためて実感しながら、歴史のつながりがきちんと伝えられるよう、資料を手に取り、取材をし、本書の制作を進めています。
[参考文献]
★山口智美、斉藤正美、荻上チキ『社会運動の戸惑い』(2012年/勁草書房)
★野中大樹「神社庁が統一地方選候補に送りつけた「公約書」」(2023年4月22日/東洋経済オンライン)
●https://toyokeizai.net/articles/-/667833
★「「LGBTQ理解増進法」が議論となる中、神社本庁の関連団体が統一地方選候補者に“公約書” 受け取った議員は…」(2023年4月25日/TBS NEWS DIG『news 23』)
●https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/452353?display=1
※制作状況は、今後もこちらの「活動報告」にてお知らせして参ります。
※書籍完成は2024年の春を予定をしております。