おかげさまでプロジェクト達成し、期限がきましたので募集を終了しました。みなさまからのご支援心より感謝申し上げます。
『ぼくらのサブウェイ・ベイビー』 は、サウザンブックスのECショップ、全国の書店、ネット書店で販売中。
書名: ぼくらのサブウェイ・ベイビー
作:ピーター・マキューリオ
絵:レオ・エスピノーサ
訳:北丸雄二
発行年:2022年4月
仕様:上製本/A4変形判/36ページ
ジャンル:ノンフィクション・絵本
ISBN:978-4-909125-36-1
活動報告のページでも本の制作の様子をお知らせしていますので、合わせてごらんください。
ぼくらもその時はまだ知らなかった。
ダニーが見つけたのはただの赤ん坊じゃなく、
ぼくらの家族だったんだってことに。(本文より)
赤ちゃんは家族の元に生まれてくる。養子で家族になる赤ちゃんもいる。
これはニューヨーク市の地下鉄で自分の家族を見つけたある赤ちゃんのお話。
仕事帰りのダニーが地下鉄で見つけたのは、トレーナーにくるまれていた生後間もない赤ちゃんだった!
家族を持つなんて考えたこともなかったゲイのカップルと、地下鉄にいた赤ちゃんが家族になるまでの、ほんとうにあった奇跡の物語。
パパ・ピートが小さな息子ケヴィンのために毎晩読み聞かせた自分たち家族のストーリーが、ポップな絵本になりました。
書名: Our Subway Baby(ぼくらのサブウェイ・ベイビー)
文:ピーター・マキューリオ
絵:レオ・エスピノーサ
発行国:アメリカ
発行年:2020年
ジャンル:ノンフィクション・絵本
ISBN:978-0-525427-54-4
文:ピーター・マキューリオ
非営利演劇集団「アザー・サイド・プロダクションズ(Other Side Productions)」の創始者かつアートディレクターであり、『ニューヨーク・タイムズ』や『マリ・クレール(オーストラリア)』『リーダーズ・ダイジェスト』などに寄稿。ニューヨーク市に夫ダニーと暮らす。二人の息子ケヴィンは現在大学で勉学中。
https://www.petermercurio.com/
絵:レオ・エスピノーサ
コロンビア・ボゴタ出身の受賞歴のあるイラストレイター/デザイナー。ピュリッツァー受賞作家ジュノ・ディアズ(Junot Díaz)の絵本『アイランドボーン(Islandborn)』などでも絵を担当。作品は『ニューヨーカー』『ワイアード』『エスクワイア』『ニューヨーク・タイムズ』『ジ・アトランティック』などで見られる。ユタ州ソルトレイク・シティで家族とともに暮らす。
https://studioespinosa.com/
【BBC】'We found a baby on the subway - now he's our son'(BBC News)
【FINDERS】20年前、男性カップルはNYの地下鉄で赤ちゃんを拾った。その子は現在、カップルの息子として大学生に成長
【テレビ朝日「大下容子 ワイド!スクランブル」】「ワールド・ニュースペクター」(6/4放送)
最初にケヴィンがその大きな目でぼくらを見上げたとき、この子はきっといろんなことに興味を持っていろんなことを観察する子だとわかりました。そして案の定、成長するにつれ彼の好奇心も大きくなって、とくにぼくらがどうやって家族になったのかを知りたがりました。2012年、ニューヨーク州で同性婚が認められた翌年、ぼくらケヴィンの父親2人が結婚するのを、あのクーパー判事にやってもらおうと言ったのはケヴィンのアイディアでした。彼がうちに来て10年後、ぼくらはまたあの家庭裁判所に出向きました。今回は結婚するために。クーパー判事もケヴィンもお互いの再会に興奮していました。2人は握手をし合い、判事が求めてそれはハグに変わりました。その女性とその少年、私たちの人生を永遠に豊かなものに変えてくれた2人がいま再びそれをやってくれようとしていました。結婚式の執行者と立会人として、この2人以上に最高の人間をダニーもぼくも知らなかった。
いま大学に通って、ケヴィンは数学とコンピュータ・サイエンスを勉強しています。彼は「アルティメット」というフリスビーの団体競技をやっていて、すごく跳びはねるので「フロッグ(カエル)」というあだ名がついています。かつてぼくらの腕の中に抱かれていた子はいま183cmの背丈になりました。ハーフ・マラソンやフル・マラソンも走ります。家族でいっしょにハイキングやサイクリングやカヤックや国立公園の探検にも出かけます。それとNYメッツの応援にも。クーパー判事はいまは引退しましたが、ぼくらとは連絡を取り合い、裁判所から離れて今やぼくらの家族の一員になっています。 (ピート・マキューリオ)
アイルランドで有名な極右活動家で陰謀論者のジェンマ・オウドーハティGemma O'Doherty という女性が、「私は誰一人として、ゲイであって幸せである人を見たことがないし知りもしない。ゲイという生き方は惨めで、淫らで、暗鬱たるものだ」とネットに動画投稿したのはつい先ごろ、2021年5月のことです。
一方で遡ること半世紀以上、「幸せなホモセクシュアルを見せてくれたら、陽気(ゲイ)な死体を見せてあげる」という有名なセリフで芝居を終えたのは1968年ブロードウェイ初演のゲイ戯曲『真夜中のパーティー Boys in the Band』でした。「幸せなホモセクシュアル」も「陽気な死体」も、そんなものは存在しない──オウドーハティの言ったことと同じです。同時に、陽気な死体とは文字どおりゲイの死体という意味にもなり、つまりこれは「幸せなホモセクシュアル」とは「死んだゲイ」のことだという含みにもなります。ゲイは死んで初めて幸せになれる──そんなふうにも信じられていた昔でした。現代LGBTQ解放運動の契機とされる「ストーンウォールの反乱」が勃発する一年前のことでした。
でも、2021年のオウドーハティの動画は散々な反応を呼び起こすことになります。
彼女の動画が紹介されたTwitter上では、「ええ、私たちはとても"惨め"で"暗い"生活を送っている」などという皮肉たっぷりな返事付きで、何とも幸せそうなゲイやレズビアンの、それこそ老若男女あらゆるカップルの写真が溢れたのでした。しかもそのうちの数少なくない写真には、カップルに挟まれて大きな笑顔の子どもたちの姿もまた多く写っていたのです。
私がピートとダニーの本書『Our Subway Baby』のことを知ったのは4月8日、やはりTwitter上でのことでした。すぐにAmazonでKindle版を入手し、その絵が私が25年住んだマンハッタンそのものの街並みやタウンハウス(住宅)の”再現”だったことに強く懐かしさを覚えつつ、「ああ、こういう本が日本にはなかったなあ」と、翌日には作者のピートに「これをぜひ日本でも出版したい」とメールを出していたのでした。ピートは半日もせずにすぐに返事をくれて、翻訳権をめぐるエージェントを紹介してくれました。
アメリカでも同性カップルが養子を迎えることに大きな反発があった時代がありました。そもそも同性愛自体が赦されないとするキリスト教の影響もありましたが、同時に同性カップルが異性カップルのような「健全な家庭生活」を営めないという誤解があり、そこで育つ子どもたちに悪影響を与えるという偏見もありました。
しかし2004年にマサチューセッツ州が、2008年にコネチカット州、2009年にアイオワ州、バーモント州、メイン州、2010年にニューハンプシャー州、2011年にニューヨーク州とワシントンDCが同性婚を合法化して以来、養子縁組の合法化も進み、2017年には最高裁判決によって連邦レベルで同性カップルの養子縁組が可能になりました。
(頭韻を踏んだ)ダディ・ダニーとパパ・ピートの二人の父親の愛と幸せに包まれて、ケヴィンはすでに大学生(それも、優秀な大学生)になっています。それはすでに英国BBCなど世界のメディアでも紹介されました。その後日談や詳細はやがて刊行される本書内で触れるとして、実は世界にはすでに同性カップルに育てられている/育てられた子どもたちが何十万人も存在しています。ニューヨークの私の友人の同性カップルの数組にも幸せな子どもたちがいます。その事実を知らない人たちだけが「LGBTは生物学上の種の保存の法則に背く」「道徳的に赦されない」と臆することなく口にします。「幸せなゲイ」が存在しないかのように振る舞う冒頭の極右陰謀論者のように──私は、そんなふうに言えてしまう人たちの「不幸」と「不実」をこそ、世界中の数多くの「幸せな子どもたち」の事実で救いたいと思う。
結婚の平等を求めるNPO法人EMA日本のウエブサイトには次のように紹介されています。「同性結婚を認めた国では、ほとんどの国が養子を認めています。このうち米国ではレズビアンカップルの3組のうち1組が、ゲイカップルの5分の1が、オランダでは同性カップルの9%が、デンマークでも6分の1の同性婚カップルが子どもを育てています」
「全米小児医学会は2002年に、同性カップルの養子について、『両親』が同性同士でも子どもには異性の両親と同様の『愛情があり、安定した心理的にも健全な家庭を与えられる』と発表しました。一般の親に育てられた子どもの間には『心理や認識力、社会的・性的機能の側面で違いはない』『子どもの発達は同性の両親という特別な家族構造』に左右されるというよりも『家庭内の関係』に影響される面が大きいと指摘しています」
自分の子どもが嫌いな親などいない、というのは嘘です。出産後のホルモン・バランスの変調や育児ノイローゼだけでなく、育児を放棄する親、子どもを虐待してしまう親、親になれない親はたくさんいます。家族とは、そのままで家族でいられるわけではありません。
けれど、あらかじめ自分の親を嫌いな子どもはいません。もし人間の「生物学」から何らかの法則を導けるならば、第一は「すべての赤ん坊は親を必要としている」ということです。そうじゃなきゃ死んでしまう。
この親子のアンバランスを埋めるために、私たちは社会を営みます。社会の中で他者を知ります。他者と他者が知り合って家族になります。その他者が親になることもできる。
家族とは、そのままで家族でいられるわけではありません。家族とは、家族であろうとする、あるいは家族になろうとする努力のことなのです。
北丸雄二(きたまるゆうじ)
ジャーナリスト、コラムニスト。中日新聞(東京新聞)ニューヨーク支局長を経て1996年から独立。長年にわたりNYから日本向けに米政治・文化などのほか、LGBTQ+情報を発信。2018年から拠点を東京に移す。ラジオやネットメディアでニュース解説の傍ら、『LGBTヒストリーブック』『フロント・ランナー』『完全版 ノーマル・ハート』等の訳書も刊行、ブロードウェイの日本公演版台本『ヘドウィグ&アングリー・インチ』『ボーイズ・イン・ザ・バンド〜真夜中のパーティー』『アルターボーイズ』などの翻訳も多数手掛ける。近刊に日米社会評論『愛と差別と友情とLGBTQ+(仮題)』。東京新聞毎金曜に時事評論『本音のコラム』連載中。
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・レズビアン少女のサバイバルと再生を描いた青春映画の原作小説『ミスエデュケーション』
・地方で暮らす男子高校生2人の勇気と優しさが詰まったコミック『キミのセナカ』
・台湾発・映画製作を通してレズビアンの母親に娘が向き合う『筆録 日常対話』
LGBTヒストリーブック 絶対に諦めなかった人々の100年の闘い
著:ジェローム・ポーレン
訳:北丸雄二
ISBN:978-4-909125-18-7
2,600円+税
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