皆さん、こんにちは。サウザンコミックス編集部です。
10月末から11月上旬にかけて、サウザンコミックス第3弾『ワイン知らず、マンガ知らず』の作者エティエンヌ・ダヴォドーが来日し、日本各地でさまざまなイベントが行われました。
以下に、その簡単なレポートをお届けいたします。
一連のイベントの皮切りは、10月28日(金)にアンスティチュ・フランセ横浜で行われた「漫画家エティエンヌ・ダヴォドーを迎えて」。エティエンヌ・ダヴォドーの講演に加え、『ワイン知らず、マンガ知らず』の帯に推薦文を寄せてくださった島村菜津さんとの対談も行われました。対談の進行役を務めたのは、本書の監修者の京藤好男さんです。島村さんが紹介してこられたスローライフと『ワイン知らず、マンガ知らず』の中で語られるビオディナミ農法について、和気あいあいとした議論がなされました。
イベント終盤には島村さんがエティエンヌ・ダヴォドーにワインをプレゼントする一幕も
イベント終了後に行われたサイン会には多くの方が並んでくださいました
左から島村菜津さん、エティエンヌ・ダヴォドー、京藤好男さん、アンスティチュ・フランセ横浜館長のシモン・ホレンベルジェさん
その後、エティエンヌ・ダヴォドーは仙台と札幌を訪問。特に札幌は18年前の2004年、『JAPON』(飛鳥新社、2006年)収録の「サッポロ・フィクション」を執筆するために初めて来日し、2週間滞在した思い出の地。久しぶりの訪問を満喫したそうです。
11月2日(水)にはサウザンブックス社主催のトークイベントが行われました。前半はトークイベント、後半はサイン会という構成で、参加者の皆さんには日本のナチュラルワインを試飲していただきつつ、エティエンヌ・ダヴォドーとの交流を楽しんでいただきました。『ワイン知らず、マンガ知らず』の最も感動的なセリフに、「この場所の瓦の下で、本と同じように、ワインは人を出会わすためにあるということを確認する」(P263)というものがありますが、まさにそれを体現するようなイベントになったのではないかと思います。このイベントでは、『ワイン知らず、マンガ知らず』の翻訳者・大西愛子さんが通訳を務めてくださいました。
左から大西愛子さん、エティエンヌ・ダヴォドー、司会の原(写真提供=すずきたけし)
サイン本をお渡し(写真提供=すずきたけし)
しばし東京でのんびりしたのち、一路、北九州に向かったエティエンヌ・ダヴォドーは、11月5日(土)にワイン生産者の宮木秀和さんと「ワインとマンガのマリアージュ」というトークイベントを行い、その日の夜のうちに京都に移動。翌11月6日(日)に京都国際マンガミュージアムで、一連のイベントの最終日に臨みました。
京都国際マンガミュージアムに到着すると、まずは施設内のカフェの壁にお絵描き。来館したマンガ家さんがこのカフェの壁に絵を描くのは、恒例となっています。ミュージアムを訪れることがあったら、ぜひのぞいてみてください。海外のマンガ家さんの絵もたくさんありますよ。
壁に絵を描くエティエンヌ・ダヴォドー
完成した絵がこちら
午後からは『夏子の酒』や『奈津の蔵』、『蔵人』といった日本酒をテーマにした作品で知られるマンガ家・尾瀬あきらさんとのトークイベント。「マンガと酒、そしてワイン」と題されたそのトークイベントでは、尾瀬あきらさんの『夏子の酒』とエティエンヌ・ダヴォドーの『ワイン知らず、マンガ知らず』、それぞれの代表作について、たっぷり語っていただきました。
会場には多くの方が駆けつけてくださいました(写真提供=京都国際マンガミュージアム)
『夏子の酒』は1980年代末から1990年代初頭に発表された日本の新潟を舞台とした日本酒づくりをめぐるフィクションで、『ワイン知らず、マンガ知らず』は2010年代初頭のフランスを舞台に繰り広げられるワイン生産者とマンガ家の交流を描いたルポルタージュです。時代も物語の舞台も扱われるアルコールも語りの形式も異なっているのですが、ひとたび読み比べてみると、作品を通底している基本的な精神の類似に驚かされます。『ワイン知らず、マンガ知らず』を気に入ってくださった方で、『夏子の酒』を読んでいない方がいたら、ぜひお読みください。
エティエンヌ・ダヴォドーと尾瀬あきらさん(写真提供=京都国際マンガミュージアム)
サウザンコミックスは2020年のダヴィッド・プリュドム『レベティコ―雑草の歌』(原正人訳)のクラウドファンディング成功とともに産声を上げ、第2弾のコミックス、MK・サーウィック『テイキング・ターンズ HIV/エイズケア371病棟の物語』(中垣恒太郎、濱田真紀訳)、第3弾のバンド・デシネ、エティエンヌ・ダヴォドー『ワイン知らず、マンガ知らず』、第4弾の台湾マンガ、原作:楊双子、作画:星期一回収日『綺譚花物語』(黒木夏兒訳)と、これまで4冊の本を刊行しているのですが、コロナ禍ということもあり、作者をお招きできたのは、実は今回が初めてです。今後、機会があれば、ぜひ他の作家さんもお招きして、イベントを行うことができたらと思います。
なお、サウザンコミックスでは、現在、第5弾のチェコ・コミック、パヴェル・チェフ『ペピーク・ストジェハの大冒険』を鋭意制作中で、加えて、第6弾デイヴィッド・マッズケリ『アステリオス・ポリプ』を翻訳出版するためのクラウドファンディングを行っている最中です。
クラウドファンディングの期限は12月15日(木)までで、そろそろ残り1カ月という状況です。サウザンコミックスの既刊と同様に、本書もまたぜひとも日本語に翻訳されなければならない作品です。この機会に翻訳出版できなければ、きっと今後長らく、もしかしたら永久に日本語に翻訳されないかもしれません。ぜひ一度ページを訪れていただき、気に入っていただけたら、ご支援・応援よろしくお願いします。