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エイズが死に至る病だった1990年代前半、
医療従事者や患者を描いた海外コミックス
『テイキング・ターンズ HIV/エイズケア371病棟の物語』を翻訳出版したい!

HIV予防啓発に取り組む桜井啓介さんから応援コメントが届きました!

 2005年にHIV陽性とわかった私が最初に直面した問題は、ウイルスによる健康状態の悪化でも薬の副作用でもなく、「HIVというものの価値観が周りと合わなさすぎる」ということでした。感染直後の診察や主治医から教えてもらえたHIVについての情報からして、当時自分が抱えていたほかの健康問題と比べるとさほど深刻な状況では無かったのは明らかでしたが、そのころの勤務先の上司やHIVを専門としていない医療機関では「HIV感染が深刻でないわけがない」という前提で話が進んでしまう状況だったのです。HIVとは全く関連していない別の疾病で全身麻酔の手術を予定していたのを白紙に戻される経験はなかなか貴重でした。
 「治療や予防の重要性は損なわないようにしつつも、HIVに対するイメージを変えないと陽性だと伝えるたびにいろいろ辛い」と考えた結果エイズNGOでのボランティアや当事者としてのスピーカー活動に結び付き、今に至っています。
 
 HIVについて様々な世代のかたにお話しさせていただく機会を得たことで気づいたことは、いまだにHIVと死のイメージが強固に結びついているかたがいる一方、「HIVで死ぬイメージはない、単なる感染症なのになぜ差別に結び付くのかわからない」という学生さんがいたりすることでした。HIV感染症という病気の存在を知ったときにどのようなものとして知ったのか、ということが大きいのだなと思いますが、「テイキング・ターンズ」は長い期間を扱っている物語なので、この病気に対するイメージの移り変わりを感じることができます。
 また、活動を通してHIV感染症以外の疾患の患者さんにお会いすることも多いのですが、実は同じように「病気のイメージ」によって周囲のかたとのコミュニケーションの問題を抱えているかたはけっこういると感じています。HIVとは逆に軽いイメージで考えられてしまいご本人が感じているその病気の重さが伝わらない、というケースもあります。
 グラフィック・メディスンにはマンガという親しみやすい手法で、その病にかかわる様々な視点を提供し、その時代に適した「病気のイメージ」を示し、アップデートしてくれるのではないかと期待しています。このクラウドファンディングが成功し、多くのかたがその可能性を感じていただけることを願っています。
 


桜井啓介
本職とは別に、NPO法人ぷれいす東京での予防啓発スタッフ、NPO法人日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラスでの陽性者スピーカー、患者協働の医療を推進する会(AMCOP)のコアスタッフとして活動している。
2021年2月28日には「ながさき・愛の映画祭」にて開催されるヒューマンライブラリーに「HIV陽性者の本」として登場予定。

 

2021/02/09 14:36