image

エイズが死に至る病だった1990年代前半、
医療従事者や患者を描いた海外コミックス
『テイキング・ターンズ HIV/エイズケア371病棟の物語』を翻訳出版したい!

発起人よりプロジェクト後半に向けてのお願い

『テイキング・ターンズ HIV/エイズケア371病棟の物語』翻訳刊行プロジェクト発起人の中垣恒太郎です。早いもので、90日間のクラウドファンディング期間も折り返しをこえました。すでにご支援をいただきました皆様、ありがとうございます。目標到達額は18%と、なおも厳しい状況が続きますが、皆様に翻訳書をお届けできますように引き続き頑張ってまいります。
 
『テイキング・ターンズ』はさまざまな視点から読むことができる味わい深い作品です。1990年代アメリカにおけるHIV/エイズ特別病棟がどのような状況であったのか、口承の記録に基づくドキュメンタリー作品でもあります。原書の刊行時、看護師の手によって描かれた比類ない回想録(グラフィック・メモワール)という評価があったように、医療従事者の視点からの回想マンガは世界では珍しいものです。日本の豊かなマンガ文化との比較も興味深いものでしょう。
また、作者自身のセクシュアル・アイデンティティをめぐる観点も注目してみたいポイントです。作者はグラフィック・メディスンの創設者であると同時に、ジェンダー・セクシュアリティとマンガ表現にまつわる活動に対しても積極的に関与しています。
 
2021年1月16日(土)に、第7回海外マンガ読書会を開催しました。通常は東京での開催なのですが、はじめてのオンライン開催となりました。対象作品として、グラフィック・ノベルの古典的名作、アート・スピーゲルマン『マウス――アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語』の復刻版(「完全版」、小野耕世訳、パンローリング、2020)を扱いました。日本のさまざまな地域から、さらには海外(ドイツ)からもご参加いただき(参加者15名)、オーストラリア、ベルギー出身の研究者を含め、それぞれのご関心分野も多様な方々が集い、一つの作品について楽しく語りあうことができました。テーマ、技法、歴史的・地理的背景に対する注目のあり方も、印象深い場面の選び方もまさに多彩でした。慣れないオンライン読書会でしたから運営の仕方はもう一工夫したいところですが、読書会の楽しさを実感することができました。
そして、『テイキング・ターンズ』も、読書会などさまざまな形で、多くの皆さんと感想を共有させていただきたいという思いをあらためて強くしました。

「活動報告」の場を通して、『テイキング・ターンズ』を媒介に、さまざまな活動をされている方を「繋ぎたい」という願いからこのプロジェクトをスタートしました。感染者数増大という状況の中で、実際に訪問できる機会に大きな制約が生じてしまっているのですが、その中でも(まだ公開されていないものも含めて)「応援コメント」を多方面からいただいています。グラフィック・メディスン、医療人文学など、さまざまな領域を、『テイキング・ターンズ』を媒介に繋いでいく試みとして、これからの「応援コメント」にもぜひ注目いただきたいです。そして、グラフィック・メディスンが学際性、臨床現場を重視していることからも、この作品を日本語の翻訳を通して、多くの読者の方に届けることを目指していきたいです。
 
また、タバネルブックスさんをはじめ、支援者の皆さんの中にも、新しい形での書店、あるいは本にまつわるスペースを営んでいる方もいらっしゃいます。個性的な書店、本とめぐりあう場が増えてきていますね。『テイキング・ターンズ』もぜひ、そうしたラインナップに入れていただくことができますように。
 
夢はつきませんが、とはいえ、プロジェクト期間は残りわずかです。
目標達成率18%という厳しい状況ですが、引き続き頑張ってまいります。
よろしければ、ご関心のありそうな方にぜひこのプロジェクトをご紹介いただけましたら嬉しく思います。引き続きご支援をどうぞよろしくお願いいたします!
 

                                     2021年1月19日
中垣 恒太郎
 

2021/01/19 12:13