image

韓国で美しい単行本になり、台湾・フランスでも翻訳された、
ボーイ(ズ)ラブコミック『キミのセナカ』を日本語で書籍化したい!

『キミのセナカ』の作者、漫画家・野原くろさんにメールインタビューしました!

こんにちは、サウザンブックスPRIDE叢書です。プロジェクト達成率40%も見えてきて、参加人数はもうすぐ200名に届きそうになりました。ご参加、情報拡散へのご協力、本当にありがとうございます!

多くの方に読んでいただきたい本作品、どういった経緯で描かれたのか等、作者・野原くろさんにメールインタビューを実施しました。

 


Q1:『キミのセナカ』を描かれた理由や背景、そして作品のメッセージを教えていただけますか。また、読者からはどんな反応がありましたか。
 
 「キミのセナカ」に収録されている、韓国・台湾版の第1話、フランス版のエピソード0は、元々2012年に、同性を好きな10代のための「10スタート」というサイトから依頼を受け、「IT'S OK!!」という同人誌に描いた「キミのいるトコロ」という漫画でした。
居場所がないと感じている人へ、自分なりの「大丈夫」を描きました。

2015年の夏、韓国の出版社6699pressのジェヨンさんからの、ゲイを応援する漫画を描いて欲しいという依頼のメールを読んだときに、居場所を見つけられずに悩んでいるタケルと公太郎の話がピッタリだと思い、その後のふたりの物語「キミのセナカ」を短編として描くことにしました。
しばらくして、この物語を続けて一冊の本を出しませんか?とジェヨンさんからお話があり、少しずつ描き進め、2019年に単行本「キミのセナカ」が完成しました。

悪者も登場しない、大事件も起きない、誰もが経験するような物語ですが、そんなどこにでもありそうな日常を描くことで、些細なことも本人には大事件だったり、忘れられない瞬間になったり…そういうことを表現できたらと思いました。
読み終えた時、言葉や風景が心に残っているような、そんな漫画になるようにと思いながら描きました。

 読者からの反応は、ゴクゴクとペットボトルのドリンクを飲むような何気ない仕草にキュンとしてしまったり、そういう日常の些細なシーンに対して共感するという感想を多くいただきました。
 

Q2:これまで多くの作品を描かれていますが、特に印象深い作品やエピソードなどありますか。 

 長く描いていたということもありますが、『ミルク』と『下宿のお兄さん』の登場人物、それから『キミのセナカ』のタケルと公太郎は、ずっと同じ時間を生きているようなつもりで描いて来たので、時々、みんな別の世界で実際に生きているような、そんな感覚になることがあります。


Q3:東京を拠点に長く活動されていましたが、いまは北海道にお住まいとのこと。なにか作品への影響はありますか。また、いまの取組まれているお仕事や今後の展望もお聞かせください。

 作品への影響はほとんど感じていませんが、東京以外の場所を舞台に描きたいと思うことが多くなったかもしれません。僕は昔ながらの商店街や古い建物が残っている街並み、坂や階段、細い路地のある風景が好きなので、東京は大好きな場所でした。なので、東京を舞台にすることが多かったのですが、札幌に引っ越して地元の小樽へ帰る機会が増えると、小樽も好きな街の条件を満たしていることにあらためて気づいて、小樽を舞台に描きたいと思うことが多くなりました。『キミのセナカ』も完全に小樽が舞台ということではないですが、あちこち小樽に実際にある場所が出て来ます。

仕事は東京にいた頃と何も変わっていませんが、『バディ』『サムソン』と、漫画を連載させてもらっていた雑誌がどちらもなくなってしまったこともあり、今は『Sweet』や『newTokyo』などのイラストの仕事と、同人誌の制作・販売を中心に仕事をしています。最近はフランスやイギリスなど、海外から仕事の依頼が来るようになって来ました。

新作をどんどん描きたい気持ちはあるのですが、雑務が多く、毎日瞬く間に時間が過ぎてしまうのが悩みです。子供の頃から何をやっても人より時間が掛かってしまって、体育の授業の時はすごく急いで着替えているのに、みんなより着替え終わるのが遅かったな…と、今思い出しました(笑)。描くスピードも自分でも嫌になるくらい遅いので、もっとデッサンの練習をして、速く描けるようになりたいです。子供の目標みたいで恥ずかしいですが…。


Q4:韓国6699 pressから出版された前後で、心境や読者層の変化などありましたか。最初韓国から連絡が入った際はどう感じられましたか。

 たくさんの国の人に読んでもらえることが、ただただ嬉しいです。読者層に関しては、ツイッターやインスタグラムで海外のフォロワーが増えました。「キミのセナカ」の単行本が販売されている韓国や台湾の読者は、僕の本の写真を撮ってアップしてくれたりしていて、それを見るととても嬉しくなります。台湾では有名な女優さんがインスタにアップしてくれて、おぉっ!と、なりました(笑)。色々な国の人からコメントやメッセージが送られて来るようになり、英語の場合が多いのですが、Google翻訳で訳しながら、できるだけ返信するようにしています。25年以上前に2年間、アメリカ留学の経験があるのですが、英語はすっかり忘れてしまったので悪戦苦闘しています。

韓国には一度も行ったことがなく、知り合いもいなかったので、韓国とは接点のない生活を送って来ました。イタリアやカナダから既存の漫画を翻訳、出版したいという話はあったのですが、その話も流れてしまい、その当時は海外からの仕事の依頼、特に新作の依頼というのは初めてで、最初ジェヨンさんからのメールを読んだときは正直、引き受けた方が良いのかどうか迷いました。
ただ、日本の出版社や個人から依頼を受ける場合も、最初はみんな知らない人なので、同じように不安と迷いが生じます。違うのは国と言葉だけなので、それなら、自分を必要だと言ってくれている人を信じてみたいと思いました。今思えば、ちょっと大袈裟ですが(笑)。日本語で言葉を選びながら、丁寧に、でも熱意の伝わって来るジェヨンさんのメールを読んだ時、誠実そうな人柄だと感じたことも引き受けた理由のひとつです。


Q5:作品によく登場するナルト(猫)のファンも多いようです。 お仕事場の環境やアイデアのまとめ方など教えていただけますか

 iMac (Retina 5K、27インチ、2017)、iPad Pro(12.9インチ、第2世代)、AstropadというアプリでiPadを液晶タブレットにして、アップルペンシルで描いています。iPadを買うまでは板タブを使っていたのですが、一度液タブを経験してしまうと、もう板タブには戻れないと感じるほどアナログに近い自然な描き心地でした。実際、試しに板タブに戻してみたところ、うまく描けなくなってしまっていました。

アイデアは、大学ノートを開いて、ひたすらボーッと考え続けます(笑)。散歩中に思いつくという人も多いようですが、僕は自分の家のくつろげる場所で考えることが多いです。ちゃぶ台にノートを広げて、あえて興味のないテレビ番組を見るとはなしにつけておきつつ、小学生の頃から使っているシャーペンで思いついたことを書き留めていく…という感じが多いです。
僕の漫画は奇想天外なストーリーと言うよりは日常を描く事が多いので、会話のおもしろさを重視して考えます。なので、プロットは脚本のような感じでほとんどがセリフです。

そして、ナルトは本当に人懐っこくて優しい猫です。ナルトの他に2匹いますが、にゃんこ達は僕の宝物です。ツイッターやインスタでもアップしていますので、よかったら見てください。







Q5:最後に、本プロジェクト参加者へのメッセージをお願いします。

 プロジェクトに参加してくださった皆様、本当にありがとうございます。
「あと○○日」を見る度にドキドキしますが、コメント欄のメッセージを読んで勇気づけられています。単行本化が実現し、この漫画を読んでくれた皆さんが、読んでいる間、そして読んだ後に、少しでも世界が明るく見えたなら、とても幸せです。
応援どうぞよろしくお願い致します。

 


野原くろ

ニューヨークPrattInstituteでイラストを学び(中退)、1995年12月雑誌“薔薇族(96年2月号)”で漫画家デビュー。その後、イラストレーターとして活躍しながら、古川書房から単行本『ミルク』全3巻を刊行、雑誌『Badi』や『サムソン』の連載などでも作品を発表し続け、現在は単行本『下宿のお兄さん』が6巻まで刊行中。韓国の6699pressが制作した『キミのセナカ』は韓国、台湾で出版されており、フランスでも電子書籍で連載中、今後書籍化が予定されている。バンドcali≠gariのギタリスト桜井青と「くろとあお」でも活動中。

ホームページ

2020/07/07 13:30