インド神話をもとにしたファンタジーを編集するのは初めてで、ドキドキしながら仕事を進めています。
世界で読まれるファンタジーのほとんどが欧米の作家によるもので、ヨーロッパの神話やキリスト教の影響を受けています。そんななか、インド文化を背景とする本作の刊行は本当に喜ばしい。本書は〈パーシー・ジャクソン・シリーズ〉の著者リック・リオーダンによる“作家たちが受け継いだ神話に基づく物語”という趣旨のレーベルからの一冊ですが、その企画に感謝あるのみです。リオーダンが言うように「読者が未知の神話との出会いを楽しめる本」になるよう関係者全員で頑張っています。
本づくりにおいて編集者は1人目の読者と言われます。本作の脱稿原稿を読んだわたしの第一声は「なんか全員キャラが濃い!」でした。
死後に天国と地獄に分かれるキリスト教の「一度きりの人生」と違い、インドでは魂がカルマに従って何回も転生します。つまり人生とは「過去を背負って繰り返されるもの」らしい。そのせいかインド神話からの登場人物はみな眩しさも陰りも強烈で、その光と影が作品全体の読み応えにも繋がっているような気がします。
おもな登場人物(叙事詩マハーバーラタの5人の王子の生まれかわり)は現代のアメリカのティーンの女の子なので、ガールズ・ストーリー/シスターフッド小説の魅力もあります。女神や女の魔物も超強力。また、神も半身(デミゴッド)もいろんな生き物も亡霊も、カルマゆえ復讐に燃えている場合が多く、そうだったのか! そこで裏切るの!という展開が続きます。そんな魅力をじゅうぶんに楽しんでいただけるよう、編集者としても細心の注意で取り組んでいます。
プロジェクトを応援してくださった方たちが満足できる一冊にするべく、そして、さらに多くの方々にも読んでいただけるような本になるように各担当が作業を進めていますので、楽しみにお待ちください。
奥田知子(編集協力:リテラルスパイス代表)
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