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10代レズビアンのリアルな青春とサバイバルを描いた映画原作小説
『The Miseducation of Cameron Post』を翻訳出版して若者に届けたい!

LGBT系ユースの居場所作りを行う団体「にじーず」

こんにちは、サウザンブックスPRIDE叢書です。『The Miseducation of Cameron Post』プロジェクトには、LGBT系ユースの居場所作りを行う団体「にじーず」への寄付付きコースを設けています。LGBTテーマのニュースやイベントなどを多く見かける昨今ですが、ユースを取り巻く環境も変わりつつあるのでしょうか。トランス男性としての自らの体験からその必要性を実感し、LGBTユースのためのスペース「にじーず」代表の遠藤まめたさんに、PRIDE叢書編集主幹の宇田川しいが話を聞きました。
 


コンセプトは“タダでダラダラ出来るネカフェ”

宇田川しい 遠藤さんが「にじーず」を立ち上げたのはどのような経緯からだったんですか?

遠藤まめた 池袋に「東京都エイズ啓発拠点ふぉー・てぃー」という若者向けのHIV/エイズ啓発をしている団体があります。池袋保健所の一階を借りて若者がタダでだらだらできるスペースを提供しながら、雑談の中で10代の子たちの性や恋愛の悩みをキャッチする団体ですが、私は学生時代そこでアルバイトをしていました。当時は自分がスタッフだったこともあり、LGBTユースのたまり場として機能していましたが、自分がやめてしばらくするとレインボー色がやや薄れてしまい。もう一度「ふぉー・てぃー」で、中高生も含めたLGBTユースが集まれる居場所をきちんと作ろう、毎月やろうと「ふぉー・てぃー」スタッフから誘っていただいたのがきっかけでした。それで2016年8月から、「ふぉー・てぃー」の協力で池袋保健所で毎月「にじーず」の活動をすることになりました。

宇田川 10代の子をHIV/エイズの啓発施設に呼び込むというのは、なかなかハードルが高そうですね。

遠藤 HIV/エイズのことを真正面から言っても来てくれないんですね。だから当時は“タダでダラダラ出来るしょぼいネカフェみたいな場所”といって中高生を勧誘していました。「エアコンもあるからおいでよ!」って(笑)。

宇田川 居心地をよくしてとにかく来てもらおうと。それで集まったんですか。

遠藤 結構来てくれましたよ。カントリーマァムと、黒背景に「ふぉー・てぃー」とピンクの文字でバタフライもあしらったデザインの名刺をサンシャイン通りでたくさんまいて…

宇田川 けっこうアヤしい感じですね。客引きみたい(笑)。

遠藤 今はしてないそうですが(笑)。だらだらしに来たら「なんでエイズのポスターだらけなの?」って聞いて、種明かしです。でも、そのうちに連れて来た子が待ち合わせ場所として「俺”

エイズ”にいるから、おまえ早く来いよ」なんて友だちに電話するようになったりして。仲良くなると、学校や恋人、家族や性の悩み、いろいろ話してくれました。いきなり相談なんてできないですから、ユースの支援は、まずは「だらだら」からです。


 

知識はあっても自分以外のセクシュアルマイノリティを知らない

宇田川 それでその後、「ふぉー・てぃー」のスタッフと一緒にLGBTユースに特化した「にじーず」の活動を始めたわけですね。こちらは初めから人は集まったんですか?

遠藤 ツイッターと口コミで、最初から4、5人は来ました。SNSで繋がってる子と「にじーず」でリアルするみたいな使い方をする子もその頃から多かったですね。

宇田川 なるほど、初めて会う場所っておとなでも悩みますもんね。「にじーず」みたいな場所なら安心だ。

遠藤 今の若い世代はネットを駆使しますから、知識だけはあるっていう子は多いんです。デミセクシュアル、アロマンティック、ジェンダーフルーイド、いろんな言葉で自己紹介してくれます。

宇田川 それは大したもんだなあ! 僕なんか、そういうの原稿に書く時、ちゃんと確認しないとあやしいですもん……。

遠藤 スタッフも知らない言葉があります。ただ、インターネットでかきあつめた知識はあっても、実際に自分以外のセクシュアルマイノリティにあえたのは「にじーず」が始めてということも多いです。

宇田川 現在は何人くらい集まって、どんな活動をしてるんですか?

遠藤 池袋だと毎回30人くらいですかね。午後1時から5時まで空いていて、ゲームしたり絵を描いたり、テーマトークという話あう時間を設けたりしています。

宇田川 どんなことを話すんですか?

遠藤 みんなに話したいことを紙に書いて投票してもらい、その中からテーマを決めます。「カミングアウト」みたいなセクシュアリティに関するテーマも、「最近みたヤバイ夢」みたいな一見関係のないテーマも両方選択肢として提示できるようにしています。10代の子ってたいへんなことがいろいろあるんです。親との関係や、友だちとの関係、勉強のこと、容姿のこと……。そういったいろいろなことに、セクシュアリティの問題も絡んでくることもあります。だから10代の困りごと全般をなんでも話せる場にしたいです。


 

教科書を変え、教師も変わる必要性

宇田川 「にじーず」に集まるティーンの話をきいていて、彼女ら彼らに、今、なにが必要だと思われますか?

遠藤 まずは教育の重要性ですね。2017年に学習指導要領が改訂される際に、保健体育の教科書にある「思春期になると異性に関心を抱くようになる」という文言を変えるように求める運動がありました。

宇田川 セクシュアルマイノリティの存在がないことになっている、ひどい記述ですよね。

遠藤 ほんとうに。でも残念なことにこの記述は残ってしまったんです。

宇田川 文科省は、現段階では国民の理解や、教員が適切な指導を出来るか考えると難しいとしたんですよね。いやいや、国民の理解のためにこそ教員が指導できるようにしてセクシュアルマイノリティについて教えろよって話なんですが。なにを考えてるんだか……。

遠藤 この記述が象徴的ですが、セクシュアルマイノリティは基本的に学校教育では「いないこと」になっています。「いないこと」にされていて、たまに会話に登場するときはネガティブな語られ方しかされなかったら、そりゃめげますよ。

そして教員の指導力を高める必要はやはりあります。知識はもちろんなんですけど、伝え方も工夫してほしい。たとえば「同性愛は病気じゃありません」しか言わなければ、病気というインプットがされるでしょう。

宇田川 いきなり、そういう言い方をされたら「病気」という単語がどうしたって心に刺さりますよね。

遠藤 生徒のほうがテレビドラマの『おっさんずLOVE』を見ていたり、友達からカミングアウトされやすかったりして、先生よりもこの問題を身近に感じていることも多いです。多様な性については、先生は上から目線で語るのではなく、生徒たちといっしょに学ぶ姿勢をみせたほうが生徒たちからの好感度は上がると思いますよ。

宇田川 「にじーず」は今年の3月から札幌、4月からは埼玉にも活動拠点を設けたんですね。

遠藤 札幌は「札幌市若者支援総合センターYouth+センター」で、埼玉は「埼玉県男女共同参画センターWithYouさいたま」で集まっています。ぜひ多くのLGBTユースに来てもらいたいですね。今、ツイッターでは「沖縄にはないんですか?奈良や長野は?」って聞かれています。もっともっと拠点を増やして、全国どこにでも若いLGBTの居場所があるようにしたいと思っています。

 

遠藤まめた(えんどう・まめた)
1987年埼玉県生まれ。横浜在住。LGBTの子ども・若者支援等を主なテーマとして取り組む。「やっぱ愛ダホ!idaho-net」代表。LGBTユースの居場所「にじーず」主宰。著書に『オレは絶対にワタシじゃない』(はるか書房)、『先生と親のためのLGBTガイド もしあなたがカミングアウトされたなら』(合同出版)などがある。

「にじーず」のホームページ

 

 

いまの達成率は15%ほどで、参加者は70名を超えました!
拠点拡大を頑張っている「にじーず」への寄付付きコースはじめ、いろいろなコースを設けております。ぜひ、周囲の方への情報拡散にご協力くださいませ。

プロジェクト最後まで、どうぞ宜しくお願い申し上げます!

 

 

2019/05/27 16:05