母子感染とは、妊娠・分娩・授乳をとおして母から児にウイルスや細菌、寄生虫などが感染して起こる病態の総称です。HIVや肝炎はよく知られており、妊婦健診の際に抗体検査が行われています。先天性トキソプラズマ症、先天性CMV感染症についてはどうでしょうか?
妊婦に対して、胎児に影響を及ぼす感染症の知識調査を行ったところ、CMVは認知度が最も低く18%。トキソプラズマは58%しかありませんでした。
グラフ「妊婦の先天性感染(胎内感染)の知識調査」
先天性CMV感染症の頻度はダウン症に匹敵しますが、報告される患者数は推定患者数と大きなへだたりがあります。
流産例や死産例はカウントされていないこと、また、非特異的な症状や遅発性障害などがあることから、患者の見落としが多くあると考えられています。医療者も母児も先天性感染に気づかないまま、適切な治療やサポートを受けられていないケースもあるはずです。
このような「知らないのが普通」の現状で、教育・啓発によって「知っていればおこらなかった悲劇」を少しでも減らそう、というのが「トーチの会」の活動目標のひとつです。誰でも手が届くところに「正しい」情報があるか? 妊婦や妊娠希望者だけではありません。周囲の人が知ることでも防げることがあります。
今回の『Anything But a Dog!』翻訳出版プロジェクトも、多くの人に病気について知ってもらうことを目指してプロジェクト達成後も活動を続けてまいります。
資料提供:「トーチの会」代表 渡邊智美