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母子感染症を防ぐため、実話を元にしたストーリーを翻訳出版したい!
障害を持って生まれ16歳で亡くなった少女と愛犬の物語

あらためて「トーチの会」と『Anything But a Dog!』について

この度は『Anything But a Dog!』プロジェクトへのご支援ありがとうございます。初めて「トーチの会」を知ったという方も大勢いらっしゃるのではと思い、「トーチの会」について、今回の翻訳出版プロジェクトについて、代表の渡邊智美さんにうかがいました。

 

「トーチの会」代表 渡邊智美

 

 

「トーチの会」ってどんな団体ですか?

 

先天性トキソプラズマ症と、先天性サイトメガロウイルス感染症の子を持つ母親たちが立ち上げた患者会です。

患者同士の交流や情報交換をはじめ、独自に作成したホームページやパンフレット、ポスターなどを用いて啓発し、また、国への政策提案を目標に活動しています。具体的には妊婦健診におけるトキソプラズマ抗体検査・サイトメガロウイルス抗体検査の必須化や国主導での全妊婦への注意喚起、ワクチンや治療薬の国内認可などをもとめて活動しています。

 

 

先天性トキソプラズマ症と先天性サイトメガロウイルス感染症とはどのようなものですか?

 

トキソプラズマもサイトメガロウイルス(以下CMV)も、妊婦から胎児へと感染する母子感染症です。どちらも今はまだワクチンはなく、気を付けていても完全に予防するのは難しく、また、感染時の母体の症状が少ないので、子どもにはっきりとした症状があらわれていなければ非常に見つけにくい病気です。子どもの症状としては、小頭症や子宮内胎児発育遅延、精神運動発達遅滞、脳性麻痺などが見られ、その程度は気づかないくらいの軽度から重度まで様々です。また、日本では確立された治療法がないので、投薬にも保険がきかないことがほとんどです。

日本では世間の認知度や予防に対する意識の低さのために患者が増えてきています。先天性CMV感染は毎年およそ1000人の障害(続発症)の原因となり、トキソプラズマも数百人が先天的に感染して生まれていると言われています。

 

 

「トーチの会」設立のきっかけを教えてください

 

2011年春に先天性トキソプラズマ症の娘を出産したことをきっかけに、日本では認識されていないトキソプラズマ症という病気に関する知識を世の中に広め、私と同じように悲しい思いをする母子を減らしたいと考えるようになりました。

しかし、当時ただの一歯科医師、一主婦であっただけの私は無力で発言力も弱く、患者会という団体で声を上げていく必要性を強く感じていました。そんな中、母子感染症の研究をされている長崎大学の森内教授と出会い、アドバイスや協力をいただきながら、同じような状況の先天性CMV感染症と合同の患者会をつくるへと動き出すことにしました。

代表挨拶・設立の経緯

 

 

今回の翻訳出版のプロジェクト『Anything But a Dog!』とはどこで出会ったのですか?

 

「トーチの会」を設立した翌年、ある学会でシンポジストをつとめさせていただいた時のこと、井上直樹先生(厚労省母子感染症研究班班員 当時 国立感染症研究所 ウイルス第1部所属)からこの本を手渡されました。

米国で先天性CMV感染症は、ダウン症や小児エイズを超えて長期後遺症を引き起こす原因1位であり、日本よりも患者数は多く、患者団体も複数あります。「トーチの会」のホームページを作るときにも、参考にしたのは米国の先天性CMV感染症患者会のホームページでした。CMVに特化した学術集会もあり、そこでは研究者のみならず当事者たちも壇上に上がり色々なアピールをするのだそうです。

ある年、その学術集会に参加した井上先生が、患者団体の代表として講演したリサ(『Anything But a Dog!』の著者)から会場でこの本を購入し、直接話をしたところ、啓発のためには日本でもこういう活動が必要だと強く思ったそうです。

私もこの本の内容を日本でも紹介したいと思いましたが、どこの出版社に持ち込んでも自費出版を勧められるばかりで、資金不足のトーチの会にはそれは不可能でした。

一旦はあきらめ、でも常に頭の端にこの本のことを置いている状態で三年が経ちましたが、縁というものは予測しないところからいきなりくるもので、今回クラウドファンディングという形ではありますが、翻訳出版が実現できそうな機会を得られました。非常にうれしいです。

そして、三年間借りっぱなしだったこの本をようやく井上先生にお返しできそうで、これでやっと宿題が終わる…というような気持ちでいます。

 

 

プロジェクトが成立して本ができたらどのように使いたいですか?

 

トーチの会のホームページにはたくさんの体験談が掲載されており、これらを読んだ方は皆「驚いた。決して稀なことではないし、他人事でもない。無知は怖い。たくさんの人に知らせたい。」とおっしゃいます。

でも、ホームページは、自らアクセスしなければ目にすることは難しいです。

本であれば、病院の待合室や子ども家庭支援センター、保健所などの図書コーナーにも置くことができますし、それだけ気軽に手にとってもらう機会が増えるのではないかと考えました。

また、この本は、教科書のような難しい言葉は出てきませんし、あくまで普通の読み物として楽しめるので、母子感染症を知るための敷居を低くすることができます。読んでいるうちに自然と病気の情報が得られ、当事者の気持ちも理解でき、啓発には最適な資料だと思います。

ぜひ、妊婦さんや患児の家族・周囲への教育などにも活用していただけたらと思います。また、これから患児らと接する可能性のある医療・保育の道を目指すような方にもぜひ読んでいただきたいので、大学、専門学校などにもおいてもらえると嬉しいです。

 

 

まだプロジェクト募集中ですが、ご支援くださった方に一言お願いします

 

まずは、ご支援くださった皆さんに、心から感謝申し上げます。

「トーチの会」は「自分たちのような経験をする人を、これ以上出したくない」という一心で活動しています。しかし、だからと言って私たちは決して「感情」的に動こうとは思いません。専門家の意見をよく聞き、協力し合い、裏付けのある確かな情報を発信し、政治的にも思想的にも中立な存在として、あくまで穏やかに活動していきます。でも、母子感染を防ぎたいと誰もが思うように、「感情」を動かせる啓発をしたいとは思っています。

この本には、そんな風に、感情を動かす力があると思います。

出版が無事実現しましたら、皆さんのご支援を決して無駄にしないよう、この本を使ってより一層力強く、啓発を進めていきたいと思います。

 

2016/09/08 12:08