双極症のご本人のそばにいるご家族が、大きな衝撃と傷つきを経験される場面のひとつが、躁状態のご本人への対応です。
多くの対応マニュアルには「感情的にならずに、受診を促すことが大切です」と書かれています。しかし多くのご家族は「そんなことは、まずできない」とおっしゃいます。専門の医療関係者がそろっても対応が難しいのが躁状態です。ご家族が途方に暮れられるのは当然のことです。
さらに双極症のご本人は、躁状態のときのことを詳しく覚えていないことも多く、ご家族がそのときの大変さを訴えても、きょとんとされることが少なくありません。ご本人からの謝罪などもないままのことがあり、ご家族は深刻なダメージと、ご本人へのさまざまな複雑な感情を抱えられます。
そして、この躁状態のいちばん近くには、子どももいます。大人でも途方に暮れる状態を、事情をのみ込めないまま、いつもとはまったく違う親の姿として、子どもはそばで見つめています。ふだんの親とは違う様相は、子どもにとって、言葉にしづらいほど深い傷つきになっているように思います。
佐藤は、京都の家族会での個別相談や、「子どもの集い」「きょうだいの集い」「配偶者の集い」で、たくさんの、さまざまなお立場の声をうかがってきました。集いに参加されるご家族の「ご本人の疾患」は、統合失調症が最も多く、次いで双極症、さらに発達障害と続きます。それだけ多くのご家族が悩みを抱えておられます。
ありがたいことに佐藤は、日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023のナラティブレビューチーム「第5章 社会心理的支援」のメンバーに加えていただき、多くのご家族の声を盛り込むことができました。とてもうれしく思っています。
「子どもの集い」では、精神疾患のある親のもとで育った方々が幼かった頃の体験を聴かせてくださいました。親の変化を前に、なにが起きているのかもわからず、ひとりで抱えていたと語る方は少なくありません。だからこそ、あのとき身近に相談できる誰かがいたら、と考えさせられます。精神疾患のあるご本人の子どもに向けて、これまで多くの方が資料や情報を届けてこられました。そうしたなかで、双極症をテーマに、子どもの目線から描いた絵本『うちのママは凧のよう』の翻訳プロジェクトが立ち上がったことをうかがいました。ぜひこのチャレンジを応援したく、メッセージを届けさせていただければと思いました。
この絵本には、グレースという支援者が登場します。グレースが子どもの心をしっかりと受け止めるやりとりを通して、多くの子どもたちのなかに「困ったら、誰かに相談すればいいのかもしれない」というイメージが育っていくなら、本当に助けになると思います。
双極症をテーマにしたこの絵本を、ご本人やご家族、そして支援者に、なにより親のそばで日々を過ごす子どもたちに届いてほしいと願い、ぜひ手に取っていただきたいと思います。このプロジェクトを、たくさんの方に応援していただければと思います。
Cafsきょうと(Carer and Family Support きょうと)
代表 佐藤純
京都・四条烏丸の事務所で、「本人もだいじ 家族ひとりひとりもだいじ 支援者もだいじ」を理念に、民間の有料相談室を開いています。親、きょうだい、配偶者、子どもなど、さまざまなお立場のご家族の相談や訪問、ゼミ、動画配信、研修講師などを務めています。
ホームページ:https://www.carerandfamilysupportkyoto.com/