『ウォーターシップ・ダウンのものがたり』(Tales from Watership Down)は、 アニメ映画にもなった『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』の続編として世に出された短編集。
英国ファンタジーの名作『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』は、いわゆる動物寓話とは一線を画する本格的ハイファンタジーであり、現代の神話たるトールキン『指輪物語』と同次元のレベルにある。
すなわち独自の言語=ラパイン語(Lapine) があり、独自の神話があり、これらを巧みに合わせた「うさぎ目線のパラダイム=ものの見方」から世界が描かれ、語られる。
その純度は宮沢賢治がエスペラント語を使用し作品世界の生けとし生けるもの、人も動物も平らかに語ろうとするそれに等しい。
この世界観なくして『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』は、かくも純粋度の高いファンタジーたり得ず「ファンタジーだからこそ可能な、表面的現実より何段階も深い現実性」は実現できなかったと言えよう。
そしてこのリアリティを支える世界設定エピソード=村のその後、神話など、散りばめられた独自言語とともに詰め合わせされたのが『ウォーターシップ・ダウンのものがたり』であり、本編『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』を、さらなるハイファンタジーの高みへ押し上げている作品となっている。
『うさぎたち』のかたわらへ『ものがたり』を、ぜひともそえられることをおすすめする理由である。
門倉直人(著述家、ゲームデザイナー&シナリオライター)
代表作;
『ザ・ローズ・トゥ・ザ・ロード』(TRPG/ツクダホビー)
『魔法使いディノン』(ゲームブック/早川書房)
『テラ・ファンタスティカ』ゲームデザイナー(SRPG/セガ・サターン)
『ナップルテール』シナリオプロデューサー(ARPG/ドリームキャスト)
『ネットゲーム'88』(ネットゲーム/遊演体)
『風景をあきなう少女ミョー』(小説/『ナイトランド・クォータリー』アトリエサード)