image

世の「さだめ」を問い直す
もうひとつの「マハーバーラタ」の物語
『Ajaya』を翻訳出版したい!

発起人挨拶(『Ajaya』翻訳出版を目指すファンの会代表 木川田朱美)

こんにちは。『Ajaya』翻訳出版を目指すファンの会代表・クラウドファンディング発起人の木川田朱美です。クラウドファンディングが開始されてから数日、たくさんのご支援・ご協力をいただいたみなさまに心より感謝申し上げます。あたたかい応援コメントも多数いただいております。ファンの会一同、大変勇気づけられております。

 

『Ajaya: Duryodhana's Mahabharata』は、日本では私の知る限りゲームファンが発見・紹介し、感想や読書ガイドをSNS上や自費出版本などで共有するなどして広めてきた実績があります。ファンにはよく知られたタイトルですから、今回のクラウドファンディングに起こった反響の多くはファンの蓄積によるものです。

 

ただ、ページ数が多いため、ゴールも500万円と強気に出た本プロジェクトです。成立にはもともと『Ajaya』をご存知なかった方のお力添えも必要になるでしょう。クラウドファンディングを成功裏に終了させるための広報活動を行っていきます。みなさまにも引き続き、周囲の方への情報共有をお願いいたします。インド映画やインドの文学などに興味のある方など、多様な方々に楽しんでいただける本だと思います。

 

このクラウドファンディングの企画書を提出してから、すでに4年の月日が経ちました。ここまで時間をいただいた経緯はクラウドファンディングページに書きましたが、私に勇気がすこしあればもっと早くできたのではないかと反省しています。とはいえ、4年間熱量を失わずにインドや『マハーバーラタ』に関するファンでいられたことには改めて驚いています。

 

今回、「『Ajaya』翻訳出版を目指すファンの会」を構成し、チームでクラウドファンディングを進めています。ファンの会のほとんどのメンバーには、4年前の企画書提出の時期から声をかけています。なので、4年よりもっと前からずっとファンだったメンバーで、とても頼りになる方々です。特にリターンの小冊子は、ファンの会がメインになって編集作業を行っていくことになりますので、充実したものをお届けできるよう連絡を取っていくつもりです。

 

著者のAnand Neelakantan氏は、私が思い立って連絡を取ったときにすぐにご返信くださいまして、この翻訳プロジェクトの実現に手を貸してくださいました。

(著者Webサイト:https://www.anandneelakantan.com/

Neelakantan氏は2024年8月までに16冊の書籍を出版しており、デビュー作は『ラーマーヤナ』をラーヴァナの視点から描いた『Asura: Tale of the Vanquished』です。このあとも神話の脇役や敗者に焦点を当てた小説を執筆し、うちマハーバーラタに関する書籍を3冊(『Ajaya』シリーズ2冊、『Nala’s Damayanti』)出版しています。S.S.ラージャマウリ監督からの打診で『バーフバリ』シリーズの公式ノベライズ『The rise of Sivagami』も手掛けました。『Asura: Tale of the Vanquished』、『Ajaya』シリーズ、『The rise of Sivagami』はいずれも、インドの文学賞であるクロスワードブックアワードにてポピュラー賞最終選考に残りました。

 

今回翻訳出版を実現したい『Ajaya: Duryodhana's Mahabharata』も『マハーバーラタ』における敗者、そして描かれずに透明化されてきた者たちの物語です。著者は普段の発信では自分の立場を明確には示しませんが(今のインドの状況から無理もないことだと思います)、物語の中でナショナリズムへ疑問を呈し、周縁化されたマイノリティに焦点を当てています。敗れるドゥルヨーダナ(作中ではスヨーダナ)が、どのような思いで戦い抜いたのかを、ぜひ多くの皆さんにお読みいただきたいと思います。

 

最後に、ドゥルヨーダナの名前についてです。『Ajaya』作中ではドゥルヨーダナはスヨーダナと呼ばれています。日本語で読めるものでは上村勝彦訳『マハーバーラタ:原典訳』筑摩書房でもときどきスヨーダナになっています。昨年度に初級サンスクリット語の授業で習った内容では、su- は「良い」の接頭辞、dus- は「悪い」の接頭辞とのことです。dus-があとに続くyodhanaに合わせて形がdur-に変化して、Duryodhanaになります。ここから、作者は一般的な「ドゥルヨーダナ」という名前を他者からの悪意のある呼び名とし、作中では「スヨーダナ」としたようでした(Author’s note参照)。ただし、「Duryodhana」をいくつかの辞典で引くと「征服し難きもの」、「どんなことにも負けない」などの意味も出てきます。

 

『Ajaya』もサンスクリット語から来ています。A-は否定の接頭辞で、Jayaは「勝利」転じて「マハーバーラタ」を指します。私は最初、「勝者ならざる者のマハーバーラタ」のようなニュアンスなのだろうと思っていました。ですが『Ajaya』を辞書で調べてみると、「勝利することができない」「征服し難きもの」という意味があります。この意味は、『Ajaya』の巻末の用語一覧にも書かれており、少なくとも著者はこの意味を念頭にタイトルを『Ajaya』としたのだと思います。これはドゥルヨーダナの名前の意味とも重なります。ドゥルヨーダナが主人公のマハーバーラタにつけるタイトルとしてこれ以上のものはないと言ってもよいでしょう。

 

この『Ajaya』をぜひ、日本語で皆さんに届けたいと思っています。今後ともご支援よろしくお願いします。

 

 

 

『Ajaya』翻訳出版を目指すファンの会代表 木川田朱美

 

 


 

おかげさまで好調なスタートを切ることができました。約3ヶ月間のクラウドファンディング、最後までどうぞよろしくお願いいたします。

 

2024/09/03 12:04