image

地獄の墓掘人と呼ばれた伝説のプロレスラー
ローラン・ボックの闘いに満ちた人生
『BOCK!』を翻訳出版したい!

ローラン・ボック氏が亡くなりました。

ドイツ・ルートヴィヒスブルクの伝説的ライブハウス「ロックファブリック・ルートヴィヒスブルク」は、公式Facebookページで、創業者の一人であるローラン・ボック・シニア氏が81歳で死去したことを発表しました。19日(現地時間)には、ドイツの新聞「Stuttgarter Zeitung(シュトゥットガルト・ツァイトゥング)」や「Ludwigsburger Kreiszeitung(ルートヴィヒスブルガー・クライスツァイトゥング)」などが訃報を報じています。
 
死因は「病気で亡くなった」としか書かれていませんが、ドイツのレスラー時代の仲間たちのSNSにも追悼の言葉が寄せられています。
 
報道をまとめると、以下のような内容です。
 
「ボック氏はオリンピック出場歴を持つレスリング世界王者であり、引退後は教師や俳優、ナイトクラブ経営など多彩な分野で活動してきた。1983年には仲間とともに旧工場を改修し、『ロックファブリック』を開業。1990年代半ばまで経営の中心を担っていた。関係者は、彼が多くのロックファンに居場所を提供したと功績を讃えている」
 
今回のクラウドファンディングの成功により、2025年7月には自伝の日本語版『ローラン・ボック~欧州最強プロレスラー、人生の軌跡』が完成しました。出版された書籍は、ドイツの現地出版社、著者のアンドレアス・マトレ氏、そしてボック氏本人のもとへと届けられました。同時に、ボック氏の直筆サイン入り書籍を日本の読者に届けるクラウドファンディング特典の準備も進められていました。
 
しかし、その矢先にドイツから届いた一通の連絡が、関係者に衝撃を与えました。
 
ボック氏は重い病気のため療養中で、サインができる状態ではないという知らせでした。さらに、ご家族の意向により、この事実は公にしないよう求められました。ドイツでは実業家として、また日本ではアントニオ猪木氏との名勝負で知られるボック氏だけに、過度な注目を避けたいという配慮があったのだと思われます。日本側の出版関係者もこの要請を尊重し、沈黙を守ることを選びました。
 
ボック氏は、日本語版『BOCK!』の完成を知ってくれたでしょうか。たとえ日本語が読めなかったとしても、この重厚な装丁の翻訳版を手に取ってもらえたなら、きっと喜んでくれたに違いありません。2025年12月にはいってから、著者のマトレ氏と再び連絡を取ることができました。返ってきたのは、「あいかわらず体調は良くない」という知らせでした。
 
ボック氏は2025年の春、日本語版の完成を前に、日本のファンに向けてメッセージを寄せてくれていました。
 
戦友・アントニオ猪木との闘いは、彼にとっても生涯忘れがたい記憶だったのでしょう。病床にあっても、彼の心のどこかに、日本での記憶や、アントニオ猪木戦に懸けた情熱が、甦ってくれていたことを信じたいと思っています。
 
ローラン・ボック氏の人生は、挑戦と波乱に満ちた81年間でした。

心よりご冥福をお祈り申し上げます。
 
沢田 智


2025/12/23 14:13