こんにちは。翻訳を担当している吉良です。8月中に全部の翻訳が終わり原稿をサウザンブックスさんに渡しました。一息ついたところで、この作品の感想を。
第一印象は素朴な絵だな、と思いました。訳してみると専門用語がとても多く出てきました。これまでの、そして現在の日本では残念ながらセクシャルマイノリティに対する差別的な言葉がたくさんあります。この本を読む人を傷つけずに、そしてあまり堅苦しくならないように、サウザンブックスさんとも発起人のakipakaさんともたくさん相談しながら言葉を選んでいきました。
韓国語でも日本語でも、英語の概念をそれぞれの言葉に直していることが多いです。漢字語に直している言葉も、外来語として定着した言葉もあります。不正確な言葉を使うわけにはいかないのですが、初めて聞く言葉ばかりだとトランスジェンダーの存在が遠くなってしまいそうです。読んでいる人には「この言葉は聞いたことがあるな」と思ってほしいし、そこからトランスジェンダーの存在を考えてほしいのです。そこで、デザイナーさんにルビをお願いしました。狭いフキダシのなかにルビがならんでいたら、それはデザイナーさんの職人技です。
原稿が終わってから韓国に行ってきました。今回は地方までぐるりとめぐりました。
旅行の間中「マランとシャイエンが同じ空の下に!」と感動していたわけではありませんが、ふたりのことを思い出すこともありました。
たとえば、群山(グンサン)という街で初めて開催されたブックフェスティバル。これは日本の文学フリーマーケットに近くて、書店で流通する本も個人で作ったZINEもあり、すごい熱気でした。韓国のクラウドファンディングで作った99人の漫画家が土地の話を描いたシリーズを買ってきました。韓国の漫画、シンプルな絵だけどメッセージが伝わってきます。
実は旅行中にもデータで原稿のやり取りをしていました。ページの見出しやフキダシの中、地の文で使うフォントの確認でした。全体のバランスを見ながら読みやすくする、これもデザイナーさんと編集さんの仕事なので、私は「どちらかと言えばこれが一番読みやすいですね」と言うくらいしかできないのですが。
マランとシャイエンが伝えたかったメッセージ、その熱量を失わないよう丸ごと届けられるように、みんなでリレーして日本語の読者の皆さんに届けます。
もうしばらくお待ちください!
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