こんにちは、クラウドファンディング発起人の阿辻香子(Coco)です。
一週間でなんと10%超え!SNS上でもたくさんのシェアと応援をいただき、予想以上の反響で驚いています。応援してくださっているみなさま、本当にありがとうございます!!
三ヶ月という期間で目標金額に達成しなければ出版ができないということで開始前は不安ばかりでしたが、一週間目の反響を見て少し安心しました。どうしても日本の方々に届けたいストーリーなので、クラウドファンディング最終日までできる事をして、達成できるようがんばります。
今回この翻訳本プロジェクトを立ち上げようと思ったキッカケは、私がもともとルビー・トゥイ選手のファンで、本を読んでみて様々は場面で感動したからです。
去年ニュージーランドで行われた女子ラグビーワールドカップの仕事を終えて台湾へ戻る前に現地で本を購入し、飛行機で読み始めたところ、プロローグ部分ですっかり彼女のストーリーに引き込まれてしまいました。帰ってからも夜な夜な読み続けて320ページを2週間ほどで読み終えました。
運動とは全く無縁で育った私は、アスリートという人種は元々環境にも恵まれていて幼い頃から楽しんで運動ができ、さらにどんなスポーツも華麗にこなすいわば特別なスキルがある人達だと思いこんでいたのですが、彼女のストーリーはそれを覆すものでした。想像を絶する苦労の上にある今の彼女のポジション。読んでいる途中に涙が流れてくる場面もありました。
この本の出版を応援していただいているみなさんに、まずはそのプロローグ部分を読んでいただきたいです。まだ編集がかかっていなく、本書に掲載されるバージョンではありませんが、プロローグ部分を翻訳したものを公開します。これを読んで続きが読みたくなった方に支援と引き続き応援していただければ嬉しいです!
『ストレートアップ』ルビー・トゥイ
プロローグ
パス、ヒット、バウンド、キャッチ。
私は早朝の誰もまだいないクライストチャーチのアイラムフィールドで、変なたまごみたいな形をしたラグビーボールをポールに向かってひたすら投げていた。もう一度、もう一度。100回まで。いや、もっと。この時はラグビーを初めて2年目で、2度目の夏のセブンズシーズン中。このスポーツが好きだ。ラグビーの全てが大好きだ。私はラグビーが下手ではないとは思うが、このチームの中ではダントツで下手で、ビリからそれなりに上手くなる方法を探して試行錯誤していた。パス、ヒット、バウンド、キャッチ。これも一つの方法だと思いながら、チームメイトたちが徐々に車を止めてスパイクに履き替えフィールドに集まって来る中、ひたすら投げていた。
パス、ヒット、バウンド、キャッチ。カンタベリー大学に就学した去年、18歳の時に私はラグビーに恋をした。当時はフィールドの反対側にある学生寮に住んでいて、部屋の窓からラグビー場が見えた。パラギ(サモア語で「白人」)側の家族から、大学に行くという事は新しい事に出会い挑戦し、それがどこに繋がるかを見に行く事だと言われていたので、大学で女の子に「女子ラグビーを見に来なよ。走り回りに来るだけでもいいから。」と言われた時に、よし、ちょっとやってみるか、と思えた。でもスパイクを持っていないと彼女に言うと、誰かが貸してくれると言われ、クールな文化だと思った。長年ネットボール(イギリス連邦の国で主にプレーされているバスケットボールに似たスポーツ)をプレーしていて、ニュージーランドの女子代表チーム「シルバーファーンズ」に入る事が夢だったけれど、私はだいたいいつも自分に合う靴を持っておらず時には裸足でプレーした。ネットボールでは靴を貸し合う文化はなかった。
とりあえず試しに行ってみたら、その場で見たものが信じられなかった。その日フィールドで出会った女子たちのような人間に今まで会ったことがなかった。女子ラグビー選手たち。新発見だ。私のような新人、経験者、そして国代表チーム「ブラックファーンズ」のメンバーたち。国代表選手は当時の私にとっては架空の生物、おとぎ話に出てくる魔法生物のような存在だった。話には聞いたことがあるが、実際に目にしたことはなかった存在。そしてその女子たちは、一緒にやりたいならそんな所に立ってないでこっちおいでよ!と手を広げて誘ってくれた。私は多分人生でずっとこんな場所を探していたので、もちろん!と飛び込んだ。
ニュージーランドのオークションサイト「トレードミー」で$20でスパイクを落札した。当時は$20でも高いと思ったが、それを持って大学のチームに加入した。
スタートラインに立った瞬間に恋に落ちた。新しい事に挑戦するという事、そしてチームとしての目標。私はずっと目標が欲しかった。小さい頃から私は素早くて運動が得意だったが、楕円形のボールはなかなかうまく投げられなかった。コーチのアーニーは、とにかく続けろ、と言った。
数ヶ月たち冬のスポーツのシーズンが終了になった時、数人のチームメイトが7人制ラグビーのセブンズへ移行し始めた。ルビー、あんたもやる?と誰かに聞かれた。15人制ラグビーが何かを理解したばかりの私だったが、やる!と即答してチームに着いていくことにした。その後、セブンズは私のためにあるような競技だという事を発見するが、15人制より難しく、さらに体力が必要なこのスポーツで私はまたチームで一番下手だった。
その年のコーチは元国代表選手のメレ・ベイカーで、彼女はぶっきらぼうで正直、オブラートに包む言い方を全くしない事で有名だった。私がどれだけ頑張って練習しようとも、ベイカーが満足することはないように感じていた。コーチの車がフィールドに到着し、駐車しているのが見えた。私はこんなにも朝早くからパスの練習をしている事を誇らしく思った。
パス、ヒット、バウンド、キャッチ。コーチに気づいてない風に装いながら続ける。さりげなく続ける。もっと続ける。この世の中で何よりもラグビーが上手くなりたかった。ベイカーが車から降りてきて私の方に歩いて来る時に「ルビー、頑張ってるね!」と言ってくれるのを期待していた。が、彼女は私の横をただ通り去った。全く目もくれずに、気にもとめずに。彼女はそのままチームメイトたちが何か話し合っている所へ行き「位置について!」と叫んだ。なんだよ!落胆しながらも私はボールを置き、位置につく。この日は素敵な朝になるかと思っていたのに、全くそうじゃなかった。なぜかというと、彼女の「位置について!」はこれから死ぬほどきついトレーニングが始まるという意味だからだ。
全力疾走して、戻る。また全力疾走して、また戻る。さらに全力疾走して、戻る、を10回。なんだよこの練習、まじでダルい。これが私の態度だった。体力強化のフィットネストレーニングをしても、私はどうせビリなんだから意味がないと思っていた。ベイカーが笛を鳴らすと、全員フィールドを周るランを始める。テスとシージェイがチームで一番体力があり、2人はとても早く走り出す。彼女たちは私がまばたきをする間に一周を走り終えていた。2人の後ろを負うのはチームの中でも走るのが早い数人、続いて大多数の真ん中グループ、走るのが苦手な選手たちがその後ろにいて、そして私だ。私はジョギングですらない亀のようなスピードで、フィットネストレーニングが大嫌いという思いを抱えながら体を動かしていた。
ベイカーはフィールドの脇にいて私をじっと見ていた。「行け!」と怒鳴られた気がした。私がこのチームでビリなのは十分理解している。ベイカーの横を過ぎた時、なんと彼女が私と一緒にジョギングをしだした。いや、彼女は歩いていたのかもしれない。それぐらい私は遅かったから。
ベイカー自身は経験豊富で長期間プレーしていた元選手でもあるので、当時の私が何かがしっくりきていないのはお見通しだったのだろう。彼女は私とジョギングしながら「私たちの前にいるグループが見える?あの真ん中グループの後ろ、ルーシーとバーディー。」と言った。私が息切れしながら「はい」と返事すると「あそこのバーディーたち。あんたが今あそこに追いつけたら、私はあんたを世界一のセブンズ選手にしてあげる。」と、今でも忘れる事ができないほどには大声で、でも他の誰にも聞こえない絶妙なボリュームで彼女は言った。
マジで言ってんの?この瞬間、私の中で、私がそこそこ長けていて楽しむ事ができて、さらに方法さえ分かれば成し遂げられるかもしれない新しい事に出会った。とりあえずバーディーに追いつけばいい。そしてルーシーに追いつけばいい。これができれば世界一の選手へと繋がる?彼女たちはたった20メートル先にいるだけ。それができれば世界一の選手になれるって?なんでもっと早く言ってくれなかったんだ!
そして私は突然変わった。私がスピードを出した時、ベイカーは一緒に走るのをやめた。ルーシーとバーディー・・・追い上げながら頭の中で、できる、絶対追いつける!と思い続けた。追いついた。真ん中のグループに追いついた。マジかよ・・・。気づいたらそのグループを追い抜いていた。やばい!これ最高じゃん!今まで自分の足に嘘をつかれていた気がした。きっとやればできたのに、ずっとこれ以上早く走れないって言い続けやがって!実際に今とても早く走れている。真ん中グループを軽く追い抜き、さらに1人追い抜いた。
私の前にいるのはシージェイとテスだが、すぐに追い抜いて全員が私の後ろにいる状態になった。地面に崩れ落ちた。ショックだった。とにかく自分で自分に驚いた。その時、体は実はマインドに支配されているという事を思い知らされた。これが私が人生で初めて「メンタルフィットネス(精神状態を認識し柔軟に対応する力)」を知った瞬間だった。
やっとしっくりきた。バカでかい目標ができた。世界一のラグビー選手になる。達成するには今、ここで、もう少し頑張る事。もちろんその日から私にとってのトレーニングも変わった。この日以来、トレーニングの時間を「フィットネストレーニング大嫌い。どうせ下手だし、適当に体を動かせばいいや」という態度で臨まなくなった。私の中で何かが大きく変わったのが感じられた。どれだけ追い込めるか?突然自分の限界を知りたくなった。ベイカーは遠くから私の事を見ていて、きっとこいつバカだなと思っているに違いないが、彼女はこれが私のターニングポイントになった事をすでに知っていたのかもしれない。私は変わった。人生が変わった。
ここまで来るのにたくさんの事があった。そして今からとても長い道のりを行かなきゃいけない。この時は彼女と、それから自分のメンタルフィットネスを完全に信じられるか分からなかったけれど、彼女は正しかった。(訳:阿辻香子)
※翻訳作業中のもので、完成版では異なる可能性があります。ご了承ください。
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