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自分で決めたジェンダーで生きる
『ジェンダー・クィア』を翻訳出版したい!

一部先読みを公開しました

 『ジェンダー・クィア』は、アメリカで2019年に刊行されて以降、クィアとしての生き方や経験を描いた優れた著作として数々の賞を受賞し、スペイン語、ポーランド語、チェコ語、フランス語に翻訳されて世界中で読者を獲得しています。しかしその一方で、アメリカ国内で一部の保守層が人種差別、セクシュアリティ、ジェンダーアイデンティティに関連する書籍を「challenged books(問題視された図書)」として公立学校や図書館からの撤去を求める「禁書運動」を展開したために、いくつかの州の図書館・学校では「禁書」扱いを受けています。

 『ジェンダー・クィア』が「Challenged Book」として扱われる理由として、マイア・コベイブが、思春期の頃からが自らのジェンダーのあり方をどう表現すれば良いのか、どのように性的な感情や欲動が働くいてきたのかということを語るために、マスターベーションやマッチング・アプリを通して出会った人との行為も含めて描いている箇所に問題がある、と指摘されているからです。確かに、指摘された箇所はコベイブ自身の性的なファンタジーや経験を語る描写ではあるのですが、成長過程において自分の心身に向き合い、他者との関わり合い方を模索する過程を描く上で必須の要素であす。また、いわゆる性的なファンタジーを投影してセックス・性的な行為を扇情的に描くポルノグラフィ(いわゆるエロ漫画的なもの)とは性格を異にしていることは強調しておいて良いでしょう。

 今回は試し読みとして、マスターベーションに関する記述・描写のある箇所を紹介します。私個人としては、マスターベーションは、自分の体の感じ方を理解する上でも大事な行為だと思うので、成長期、思春期の中で描かれるのは有意義だと思います。

 


 

11歳か12歳の頃、自分にペニスがあると初めて空想した記憶がある。

大空の下、丘の斜面で服を着て横たわっていた。

脚の間で一掴みの草束を握りしめた。
想像上の体の一部として握りしめていた草束は、手を離せば散らばった草むらの中に散らばって消えてしまうから、発見されても大丈夫だと知っていたので安心していた。

 


長年にわたって、私がマスターベーションをするスタンダードな方法は、履いているズボンの前の部分にソックスを詰めて、すの膨らみを弄ることだった。
このやり方が発展して、直近で見たゲイの絡みのことを考えながら、腰を押しつけるようになった。

忘れないのは、車を運転している時に、ジーンズの前の部分擦って、フェラチオをしてもらっている想像をしてマスターベーションをして楽しんだことだ。

*約束しますが、私は安全運転を心がけている

 


アリソン・ベクダルは、漫画「ファン・ホーム」の中で、初潮が来たすぐ後にマスターベーションを発見した、と書いている。

その当時、私は机に向かって絵を描いている時に、椅子を前後にゆらすことで、妙に気持ちよくなるこの動きを言い表す言葉があるとは知らなかった(「ファン・ホーム」より)

私も同じような年齢の頃にマスタターベーションを発見した。その後、私が欲情をそそられる能力は、厳格な収穫逓減の法則によって支配されていると気づいた。

 

プラトンの「饗宴」に基づいた手の込んだファンタジー

私がマスターベーションをして外性器をさわならなければならなくなるほどに、どんなに性的な観点から満足の域に達することはできない。もっとも良いファンタジーは、物理的な身体接触を求めないものだった

 


訳:小林美香

翻訳作業中のもので、完成版では異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

 

 

 

2023/08/30 10:38