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暗く先の見えないトンネルのような
イスラエルとパレスチナの関係を描いた
イスラエル発のグラフィックノベル『トンネル』を翻訳出版したい!

独日・英日翻訳者の鵜田良江さんから応援メッセージが届きました!

みなさまこんにちは! 独日・英日翻訳者の鵜田良江です。

突然ですが、ドイツというと、どんなイメージが思い浮かびますか? ゲーテやカントのような、詩人と思想家の国? ヒトラーに率いられた犯罪国家? それとも、戦争犯罪を真摯に反省する想起の国、でしょうか。どれもきっと、間違いではない……けれど。ドイツで暮らしている方々は、私たちと同じ、ふつうの人たちです。税金の無駄遣いをする国に向かって、いいかげんにしろ、なんて悪態をつきながら、日々の用事をこなし、子どもや親や、まわりの人たちのことに心を砕いて、生きている。そして、そんな中に、いろいろな考え方の人たちが、います。

 

ああそうか、イスラエルも同じなのかもしれない、と、感じたのは、今回のクラウドファンディングの発起人、バヴアのおふたりが書かれた、『だれも知らないイスラエル』(花伝社)を読んだときのことでした。日本から、はるか遠い場所から、ときどきニュースで目にするイスラエルは、パレスチナの人たちが暮らす地域のまわりに壁を築いたりする、すこし怖い国。申し訳ないのですが、それくらいしか、イメージはありませんでした。でも、イスラエルには、愛国心がすごく強かったり、アイデンティティとして強く宗教を信じている人もいれば、え? 宗教? あんまり興味ないかなぁ、という人もいるみたい。そして、若い世代の方々になると、なんだかよくわからないけれど、イスラエルに生まれちゃったんだよね、という方々もいたりするのだな。バヴアのおふたりの本を読んで、そう感じました。でもそれって、よく考えたら、すごくあたりまえなことですよね。

 

今回のクラウドファンディングで出版をめざしている『トンネル』では、そういう、ふつうの人たちのひとりが、主人公。父親は認知症で、子どもはスマホ依存症で、そのうえ自分のことだってなんとかしなきゃならない、シングルマザーのニリ。でも、でも、ふつうの人って、意外と、住んでいる国の政治状況に左右されていたりするものだと、私は思っています。それぞれの国の出来事が、ありのままに描かれているグラフィックノベルは、作家が意識するしないにかかわらず、ささいなエピソードや、背景などの、ほんのちいさなところに、お国事情があらわれたり、するものです。『トンネル』では、背景が細かく描きこまれているとお聞きして、ストーリーとともに、そのあたりもじっくり見てみたい、日本語で出版されたこの本を読むことができたら、と、願っています。

 

自己紹介が遅れましたが、私は、ドイツ語・英語のグラフィックノベルや小説の翻訳をしています。いちばん新しい訳書は『ベルリン 1928-1933―黄金の 20 年代か らナチス政権の誕生まで』(ジェイソン・リューツ著、パンローリング)という、592ページのグラフィックノベルです。22年かけて描かれた歴史大作! 時代の波に翻弄されるセクシュアルマイノリティの恋人たち、政府の欺瞞を正そうとするジャーナリスト、イデオロギーに切り裂かれた労働者の家族……当時の人々の姿をリアルに伝える群像劇です。その中に、有形無形の嫌がらせを受ける、ユダヤ人の家族も登場します。

 

鵜田さんが翻訳されたジェイソン・リューツ『ベルリン 1928-1933―黄金の20年代からナチス政権の誕生まで』(鵜田良江訳、パンローリング、2023年)。左からドイツ語版、原書の英語版、日本語版

 

第二次世界大戦中に、そして、戦争が終わってから、大勢のユダヤ系の人々がパレスチナの地へと移住していきました。そういう意味で、ドイツの歴史とイスラエルの歴史は交錯しています。そして、日本人として忘れてはならないと私が思っているのは、日本はドイツの同盟国だった、という事実です。だからといって、大上段にかまえて、謝らなくては、世界平和のためになにかをしなくては、ということではありません。けれど、まったく無関係とは言えない、すこし遠い国の、ふつうの人たちの暮らしを垣間見ることは、私たちの世界の見方をすこし変えてくれるのではないのかな、と思っています。それが、グラフィックノベルという芸術がはたす役割のうちの、ひとつなのではないかと。

 

そう! グラフィックノベルは芸術、アートなのです。海外マンガについて、読みにくい、と言われてしまうことがあります。私自身も漫画を読んで育ちましたから、日本の漫画と比べて読みにくいところがあるというのは、認めるしかないのかな、と思っています。最大の問題(?)は、日本の漫画が素晴らしすぎることです。シンプルなわかりやすさ、絵の美しさ、右上から左下への視線誘導の見事さ。ですから、日本の漫画との比較はいったんわきに置いて、海外マンガとは左から右に読むもので、見慣れない画風は個性なのだと、頭を切り替えて読んでいただけたら、と思っています。そうすれば、新しい世界がひらけてきます。ほんとですよ。

 

ところで、『トンネル』はすでに、さまざまな言語に訳されています。ドイツ語版も好評で、たくさんの層をなす歴史と、家族のことで悩むニリの姿が、ユーモラスに、たくみに描かれている。そう、ドイツの日刊紙ターゲスシュピーゲルの記事には書かれていました。イスラエルで暮らす、ふつうの人だけど、きっと、ぜんぜんふつうなんかじゃない、ニリの生活。そして、「契約の箱」を探す人たちの、インディ・ジョーンズみたいな大冒険。翻訳出版ってめっちゃ大変で、それを押していろいろな言語で出版されているからには、おもしろいに決まっています。日本語版も出すことができるように、ぜひ、みなさまの力をお貸しください。

 

私もいちおう中のほうの人なので、お金さえ集まれば出版できる、というステップまで進むためには、どれほどめんどくさい手続きが必要だったのか、なんとなく想像はつきます。ほんとうに、あと一息。応援のほど、どうかよろしくお願いたします!

 

鵜田良江

独日・英日翻訳者。1970年、宮崎県生まれ。九州大学大学院農学研究科修士課程修了。 元化粧品開発技術者。クエスチョニング。訳書は、『ベルリン 1928-1933―黄金の20年代からナチス政権の誕生まで』、『少女 が見た1945年のベルリン』(パンローリング)、宇宙英雄ローダン・シリーズ645巻『スリマヴォの冒険』、『スターリンの息子』(早川書房)など。

Twitter: @hexenkurs

 


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2023/06/16 17:19