日本に住む多くの人々は、イスラエルやパレスチナと聞いて、どのようなイメージを持つでしょうか。日本のメディアを通じて報じられるのは、紛争やデモといった衝突のことが大半を占め、そこに暮らす人々の日常生活というものはほとんど報じられません。でも、そこには、日本にいる私たちと同じように、朝起き、食事をし、仕事に行き、休みには友人や家族、恋人と過ごすという日々の営みを紡いでいる人たちがいるのです。
井川アティアス翔さんと戸澤典子さんが発足されたバヴアは、グラフィックノベルというポップカルチャーの観点から、イスラエルやパレスチナに暮らす人々の日々を紹介する活動を行われています。イスラエルやパレスチナに関する書籍はたくさんありますが、現地人によって描かれたグラフィックノベルを通じて双方を日本に紹介するということは、これまでになかなか見られなかった試みです。マンガに親しんだ日本の人々にとって、イスラエルやパレスチナについて書かれた学術書を手に取るよりも、よりアプローチしやすい形で、現地の人々の声を届けてくれているのです。
そして、今回バヴアが出版しようとしている書籍の『トンネル』は、主人公であるシングルマザーのニリが、認知症を患う父親の名誉回復のため、「契約の箱」という歴史的遺物を発掘しようとすることから展開していく物語です。ページを進めると、その根底には、家族への想いや、葛藤があることが伝わってきます。このような感情は、日本にいる私たちも経験し、抱くものです。しかし、そのような観点から、イスラエルやパレスチナを知ることができる機会は、日本ではあまりありません。『トンネル』は、日々を、日本にいる「私たちと同じように生きる人々」の視点から、イスラエルとパレスチナについて知ることのできる数少ないきっかけを与えてくれる本であると思います。
また、『トンネル』が日本語で出版され、大人に加えて日本の青少年少女の手にも届くことがあれば、それは、日本メディアからはあまり報道されない視点からイスラエルやパレスチナという遠く離れた国のことを知る契機となり、ひいては彼らの視野を広げることに繋がります。なぜなら、異国のことを知ることは、自国で日々接していることで当然のように享受しているものを感謝する起因となり、同時に、「ここはおかしいのではないか」と気づき、変えていこうとする原動力を与えるからです。
「未来」へと繋がる活動を行なっているバヴアのお二人を、私は心から応援しています。皆さんも、ぜひ一緒に応援してください。
◆発起人が語るイスラエル発のグラフィックノベル『トンネル』の魅力
日時:6月9日(金)19時30分~21時30分
出演:井川アティアス翔(『トンネル』翻訳出版プロジェクト発起人)
戸澤典子(『トンネル』翻訳出版プロジェクト発起人)
進行:原正人(サウザンコミックス編集主幹)
会場:Zoomによるオンライン開催
参加費:無料
お申し込み方法:参加ご希望の方は、
サウザンブックス( info@thousandsofbooks.jp )までメールにてお申し込みください。
多くの方からのご参加をお待ちしております!